新センター長所信表明
[新しいスラブ研を目指して]

iwashita

岩下 明裕 (いわした あきひろ)

[専門]
ロシア外交、東北アジア地域研究
[ 略歴]
1962 年生まれ、 1987 年九州大学法学部卒、 1989 年北九州大学大学院法学研究科修士課程修了、 1992年九州大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学、1995 年法学博士。ブルッキングス研究所北東アジア研究センター客員研究員(2007年9月-2008年6月) 第6回大佛次郎論壇賞(2006年)及び第4回日本学術振興会賞(2007年)を受賞。


8月1日 付で、センター長を務めることになりました。10ヶ月の在外研究にご配慮い ただいたため、通例より数ヶ月遅れの就任となりましたが、帰国早々、様々な難題に 直面し、翻弄される日々です。前センター長の就任のあいさつによれば、「センター は現在、全国共同利用施設ですので、全国のスラブ・ユーラシア専門家へのサービス に努め、またスラブ・ユーラシア専門家のご支持を賜ることが、その存続の条件」な のですが、平成21年度にむけて、文科省の主導のもと、既存の全国共同利用施設の廃 止、及び新しい「共同利用・共同研究拠点」の認定が予定されています。スラブ研と してもこれまでの全国共同利用施設と同様の位置づけを獲得するためには、新しい制 度に応募しなければなりません。この位置づけを得られる保証はどこにもないという ことです。いわば、スラブ研はいま存亡の岐路にたたされているといっても過言では なく、全国のスラブ・ユーラシア研究の専門家のご支持をはじめ、内外の研究コミュ ニティからのご支援が火急に必要な状況に置かれています。

もうひと つのチャレンジは、21世紀COE後の対応です。平成15年度から始まった21世 紀COE事業は潤沢な予算をもたらし、スラブ研の活動を質的に飛躍させることに成功 し、関連する研究・教育コミュニティにその成果を還元できたと考えております。講 座や叢書、外国語出版物のSESシリーズなどは広い分野で高い評価を受けました。内 外での様々な研究活動の組織化や、若手研究者を含む助成なども多くの成果を得るこ とが出来ました。現在、21世紀COEの成果をどのように継承し、発展させるかとい う課題とともに、事業終了後に起こる財政的困難をどのように乗り切っていくかとい う難問が待ちかまえています。これまでのようにスラブ・ユーラシアに関わるほとん どの資料を無選別に購入し、次から次へと計画できるだけのシンポジウムやセミナー を内外で組織し、その成果を大量に刊行して配布するといった、「大量生産・大量消 費」のよき時代は終わりました。これからは限られたリソースでどのように効率よく スラブ研の組織を運営し、またどの領域の活動を重点的に発展させていくかがテーマ となります。

このよう な変わり目の時期にスラブ研を預かるセンター長(director)に必要なこと は、高みにたって指揮すること(direct)ではなく、同じ目線で組織をまとめ、これ まで以上に研究・教育・行政などのさまざまなコミュニティと息をあわせながら、お つきあいを深めていくこと(manage)だと思います。私たちは今後、センターの日常 生活や研究活動に新しいアイデアを導入し、実務上の工夫しながらも、これまでスラ ブ研を通じてみなさまに培っていただいた蓄積や実績をもとに、決して動ずることな く、また臆することなく、一丸となってこれらの困難に立ち向かっていきたいと考え ます。

夏休みと ともにスラブ研は耐震建物改修が入り、しばらくの間、みなさまのご利用に ご迷惑をおかけします。来年4月には新しいセンターの建物をご覧いただくことが出 来ますが、建物ばかりではなくその活動の中身もまた大きくチェンジしたと、スラブ 研が評されるよう努力いたします。どうぞ、これからも、皆様のご指導をよろしくお 願い申し上げます。

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