1997年点検評価報告書

はじめに
外部評価委員のプロフィール
第三者による評価
外部評価報告を読んで

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百瀬宏
I・T・ベレント
ノダリ・A・シモニア
エヴゲーニイ・アニーシ モフ
スティーヴン・コトキン
セルゲイ・A・アルチュ ウノフ

は じ め に

この報告書は、正確に言えば、将来の北海道大学スラブ研究センター外部評価のための試行作業をまとめたものといえます。外部評価委員会を設置し て、定め られた点検評価方法にしたがって行われた外部評価報告とはいえませんが、それでもセンターが抱えている問題点はこの中にも現れています。皆様のご批判やご 助言をあおぎながら、将来の外部評価につなげたいと考え、これを発表することにしました。

センターはこれ以前にも、外部評価に相当する作業を行っています。平成6年3月に『スラブ研究センターを研究する−北海道大学スラブ研究センター 点検評 価報告書』の第1号を、平成8年3月にはその第2号を発表しましたが、それぞれには「学外専門家による評価」が付されています。点検評価報告書の原稿がで きあがった段階で、スラブ地域研究を専門とする学外の研究者にそれを読んでいただき、批判や提言をまとめてもらいました。第1号では川端香男里(東京大学 文学部教授[当時]:ロシア文学専攻)と西村可明(一橋大学経済研究所教授:ロシア・東欧経済専攻)、第2号では宇多文雄(上智大学外国語学部:ロシア政 治専攻)と木村崇(京都大学総合人間学部教授:ロシア文学専攻)の各氏にお願いすることができました。それぞれの専門分野の第一線で活躍する研究者で、か つ学会・研究会で指導的役割をはたしているこれらの学外専門家による批判は、きわめて貴重なものでありました。

センターでは、2年おきに点検評価報告書を作成することになっています。平成8年度はその作成年度ではありませんでしたが、点検評価の方法をめぐ る内部 での議論は続けました。センター内では、何らかの点検作業が必要なことでは一致していますが、点検評価についての評価は多様です。研究部11名、情報資料 部3名、事務部3名(正確には法学部の1事務掛が担当、図書事務担当を含む)という小さな所帯で、隔年に大がかりな点検評価を実施する必要があるのだろう か、という意見もあります。センターの予算や人事を決定する協議員会(学部の教授会に相当)には、センターの外から学内の文系4学部の教官が参加し、また 共同研究にかかわる事項について協議する運営委員会には、学内の他部局から2名、学外から5名が出席しています。私たちセンターの活動は十分にこうした 「外からの眼」にさらされています。しかも、2回にわたるこれまでの点検では、研究部の教官2名が、多忙な事務官の協力を得ながら資料を集め、それをワー プロに打ち込み、自己点検評価文書を作成し、草稿を外部評価委員に送付し、すべての校正を終えて点検評価報告書が完成するまでの作業を行いましたが、それ には2ヶ月以上も要し、その間は自分たちの研究活動を二の次にせざるを得ませんでした。点検評価の効率について点検をする必要があるという声も聞こえてき そうです。

とはいえ、こうした点検評価、とくに外部評価の必要性はますます強調されるようになっていますし、その点は私たちも認めるところです。昨年度末に 北大の 点検評価規定が改正され、それにともなってセンターの点検評価内規も改正されました。その結果、これまでのようにあらかじめ決められた事項を一律に点検評 価報告書の対象とする必要はなくなり、センターが独自の判断で報告書の様式を決めることができるようになりました。平成9年度は点検評価を行う年度にあた ります。今、新しい点検評価の方法について議論しているところですが、その報告書の形式や内容はそれまでのものとはかなり異なるものとなりそうです。
平成8年度に、私たちは外部評価のあり方をめぐる議論を行い、その中から出てきたいくつかの提案を実際に試行してみることにし、合計で6名の専門 家に点 検評価文書の作成を依頼しました。

ひとりは、平成7・8年度に客員教授を委嘱した百瀬宏氏(津田塾大学学芸学部教授)です。百瀬氏は北欧史を専門としていますが、東欧やソ連ないし ロシア を視野に入れた国際関係史や国際関係論という領域で多くの業績を持つ、日本を代表する研究者のひとりといえます。また、同氏はセンターがまだ法学部附属の 研究施設であった時代に専任研究員として在職(昭和39〜48年)し、施設長(昭和44〜46年)も経験されています。この2年間は客員教授として再度、 合計で35日間ほどセンターに滞在され、4回の定例シンポジウムのすべてに報告者、討論者もしくは司会者として参加し、さらにセンターの図書資料を利用し てご自身の研究をしていただきました。札幌を離れた後、センターの活動をOBとして長い期間にわたって外から見守ってこられた研究者が、客員教授として内 部観察を行った上での評価は、他ではえがたい内容のものとなるはずです。

他の5名はすべて外国人です。ひとりは、長い間ハンガリー史学界で指導的な役割を果たし、現在は米国に活動拠点を移している世界的に著名な東欧史 家、 T・I・ベレンド氏(カリフォルニア大学ロサンゼルス校歴史学部教授、同大学ヨーロッパ・ロシア研究センター長)です。ベレンド氏にはセンター主催平成8 年度夏期国際シンポジウム(7月24-27日)に参加していただき、その上でシンポジウムの内容や運営を中心とする報告書を作成していただきました。同氏 は、シンポジウムで基調講演を行い、かつ他と並行して開かれた1部会を除くすべての部会に参加していただきました。また、シンポジウムに先立って、同氏は センターの蔵書を中心に施設を視察し、かつセンター専任研究員(林忠行センター長、皆川修吾教授、望月哲男教授、家田修教授)との面談(7月24日12: 00〜14:00)をされました。

残りの4名は、いずれも平成8年度に外国人研究員としてセンターに滞在した研究者です。ノダリ・A・シモニア氏はロシアでも有数の大規模研究所と して知 られるロシア科学アカデミー世界経済・国際関係研究所の副所長という地位にあります。エヴゲーニイ・アニーシモフ氏はロシア科学アカデミー歴史学研究所 (サンクトペテルブルグ)に所属し、最近のロシアにおける新しい研究潮流を代表する歴史家といえます。スティーヴン・コトキン氏は米国プリンストン大学歴 史学部助教授で、ロシア社会史研究で新進気鋭の注目株です。この3人は平成8年6月ないし7月から平成9年3月末までの9〜10ヶ月間、センターに滞在 し、それぞれの研究を行うと同時に、センターのシンポジウムやその他の研究会に参加しました。最後のひとりはセルゲイ・A・アルチュウノフ氏で、ロシア科 学アカデミー民族学研究所に所属する民族学者です。同氏は、文部省COE(卓越した研究拠点)プログラム経費による外国人研究員として、平成8年12月か ら4ヶ月間、センターに滞在しました。

この4人の外国人研究員は、いずれも日本以外の外国研究機関での滞在経験を持ち、またアニーシモフ氏を除く3人は、日本の他の研究機関で研究活動 を行っ たこともあります。さらに、コトキン氏とアルチュウノフ氏は流暢な日本語の使い手でもあります。

外部評価のために外国人研究者を招聘するのもひとつの方法ですが、なにもわざわざそうしなくても、現在のセンターには常時、かなりの数の外国人研究者が滞 在しているので、その人びとに評価報告を作成してもらうのは、費用対効果から見て最善の方法であろうと思われます。
この報告書は、平成8年度に何らかの形でセンターに滞在した人びとの滞在記録ということになります。日本人客員研究員、国際シンポジウム参加者、外国人研 究員のそれぞれは、センターの企画に参加し、またセンターの蔵書を実際に使ってそれぞれの研究を行った研究者ということになります。点検評価を目的とした 評価委員会を設置し、点検評価用資料を読んでもらい、かつ施設の視察とヒヤリングを行った上で、統一された項目について作成される報告書と比べると、この 方法は「外部性」や「客観性」という点では問題がありますが、センターの活動をより「内在的」に評価してもらえるという利点もあるように思えます。
今回の外部評価は試行段階にありますので、評価を依頼した各氏には自由な形式で、それぞれの視角から報告を書いてもらうことにしました。そのため、報告は 網羅的なものではなく、また統一性もありません。しかし、こうした方法をとったからこそ聞ける本音の批判も引き出せたように思えます。
報告書の内容は、たんにセンターの研究活動や施設に関するものにとどまらず、一方では地域研究という学問のあり方をめぐる議論におよび、他方ではセンター という範囲を超えて、北海道大学の施設や国立大学一般の会計制度などにもおよんでいます。通常の「外部点検評価」と比べるならば、かなり異例のものといえ るかもしれません。
また、評価報告とあわせて、それに対するセンターの事情説明や今後の対応等についてまとめた文章を作成してここに掲載することにしました。これ も、通常の 外部評価報告書から見ると異例かもしれません。しかし、外部評価を行う意味は、外から評価を行う者と、評価される者との対話にあります。そして、そうした 対話の長期にわたる積み重ねが、センターの将来を考える上でなによりも重要なのだと思われます。
なお、ベレンド氏の報告は平成8年8月に執筆されたものですが、その他の報告は平成9年3月、センターの対応についての文書は同年5月に作成されたもので す。

平成9年5月
北海道大学スラブ研究センター長
林 忠 行  
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