1999年度点検評価報告書 外部評価委員会報告

8. 研究活動

 センターはこれまで多彩で生産的な研究活動を繰り広げてきており、全体として、内外で高い評価を得てきたといえよう。
 「全体としてわが国ではトップクラスの研究水準を維持している」とした回答が46%にも及んだアンケート結果を見ても、そのことはいえるであろう。「全 体として国際的水準の高い研究業績をあげている」も、49%に達している。これら「水準」の点で「改善・努力の必要」を指摘した者は1%に止まった( 参考文献6 )。6部に分かれた研究部門の担当教官たちが進めている研究テーマは歴史的にも地理的にも相当広い範囲をカバーしている(参考文献4)。
 専任研究員セミナーが、こうした研究活動の核として1〜2カ月おきに開催されており、そこではどの報告も厳しく率直な批判にさらされている。
 研究業績を見ても、専任研究員の1996-98年の状況は、著書、編著書をはじめ、論文数点から中には数十点などと顕著なものである。これら研究業績の 公的な評価もきわめて高く、科学研究費当研究助成金の取得は1995〜98年の4年度間で、7638万円相当も採択されており、重点領域研究では95年度 から97年度にかけて、実に2億3631万円が採択されている。
 『スラヴ研究』 、"Acta Slavica Iaponica "が毎年度、定期的に発刊され、数年前からレフェリー制も取り入れられて一層の水準向上が見られる。
 さらに、近年では、『スラブの世界 』という講座もの(全8巻)が出されたり、重点領域研究の報告輯だけでも70点を超える膨大なものが刊行されるなど、実に顕著で活発な研究活動を誇ってい る。専任研究員の、学会等への参加も活発である。                       
 ただし、活発な研究活動は反面,支援的活動にかなりの労力を費やさざるをえない状況も作り出している。ヒアリングによれば、雑誌の刊行などは編集者に とって負担も相当大きいようである。例えば" Acta Slavica Iaponica "の方など海外からの欧文の投稿も増えているため校正に手間がかかり、日本人の投稿については外国語のチェックが大変だといったことも生じている。研究の 国際化が進めば進むほど、皮肉にも言葉の壁がますます大きくのしかかってくるという、わが国の学術交流に共通の深刻な問題がここにも現れている。
 しかし、このような困難があるにもかかわらず、センターの刊行する邦文および欧文紀要は、学会で高い評価を受けている。アンケート調査によれば、これら の紀要が国際的にも高い水準にあるとみる研究者は37.9%であり、国内との比較で高い水準にあると評価する者は42.2%であり、そう思わない者17% を大きく上廻っている( 参考文献6 )。
 以上のように、センターの研究活動は非常に充実していると評価できるであろう。むしろ、比較的少ない所員で膨大な研究活動を担ってきているだけに、所員 一人一人にかかる負荷は相当のものがあるであろう。