2001年度点検評価報告書


はじめに

わが国の地域研究の先駆けは戦前における植民地研究ですが、戦後、現地研究を基盤と する地域研究機関として、現在のスラブ研究センターの前身であるスラブ研究所が誕生し ました。1955年のことです。スラブ研究センターが飛躍的な発展を遂げるようになったの は1990年に全国共同利用施設になってからです。研究スタッフも増え、研究分野も多岐に わたるようになりました。専任研究員スタッフではカバーしきれない部分を外国人研究員 や国内の共同研究員を充実させることで補ってきました。

スラブ研究センターの活動ぶりは、1994年から1999年にかけて合計4回出版された点検 評価報告書「スラブ研究センターを研究する」に詳細に記載されています。これらの報告 書は、概して一般的な評価項目にそった内容になっています。

本報告書は従来の点検評価報告書とは異なり、当センターの専任研究員自身による評価 を中心にして、スラブ研究センター独特の専任研究員セミナーでの外部コメンテーターの コメントを加える形をとっています。言い換えれば、研究者自らが自分の研究をどう評価 し、研究成果に対して研究領域の近い研究者がどのように評価しているのかに的を絞って います。当センターは1991年から、自己の研究活動の点検評価の場として専任研究員セミ ナーを制度化しています。各専任研究員は年1回の学術論文の発表を義務付けられ、発表 予定日72時間前までにペーパーを提出しなくてはなりません。外部のコメンテーターと共 に専任研究員全員がコメントすることを求められています。

本来、点検評価は外部がどうみるかではなく、研究者自身の評価であり、研究者は自ら に厳しくあるべきだと思います。本報告書は、この点で研究者個人の姿がかなり浮き彫り にされています。

今後の課題は、点検評価をどのように生かしていくかです。組織ではなく研究者個人に 投げかけられた問題点を積極的に改善させていくことによって、研究の質を高めることが 可能になるのです。改善がみられない場合にはしかるべき措置も考えられるべきでしょう。 しっかりした評価基準、誰しもが納得できる評価手続き、評価を受ける側の意見表明の場 などを設けることは当然のことです。

点検評価ばやりの昨今、見栄えの良い点検評価報告書をつくれば終わりというのでは、 研究活動には反映できません。自らのことは自らが一番良く知っているわけですから、個 人研究の評価を重視した本報告書を契機に点検評価のあり方を一考いただければ幸いです。

2002年3月


北海道大学スラブ研究センター
センター長 村上隆