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博士論文では、ソ連の国家建設期に行われた結核対策に照準を定め、社会主義国家の建設と連動する形で引き起こ
された身体観の動態を跡付ける試みを行った。当時のロシアで生み出された医療に関する言説では、本来ならば診察や雇用の対象として受動的な立場に立つ人々
(労働者=患者)に、治療や生産のような創造的な行為に従事する主体として能動性を見出すという反転が行われている。しかし、実際に行われる医療や労働の
現場では、それぞれの身体をモノとして客体化する作業が行われる。
では、主体化と客体化のはざ間に立たされた人々は、実際にどのようにしてそのズレに対処していたったのか。こ
の問いについて具体的な事例に当たりながら探求していくことが、今後の研究課題となる。
まず手始めとして、1930年代以降ソ連で盛んに書かれるようになった工場史を読み解き、歴史の記述がもつ特
性について考察をまとめたいと考えている。その上で、実地での聞き取りを通して、「労働者」たちが自らの身体の周辺に形作られるリアリティをどのように受
け止め、実践的な行為につなげていたのかということに着目する。
そしてさらに、体制が変わってソ連時代とは権力のあり方が大きく変化した現在のロシアにおいて、医療や労働へ
の人々の取り組みがどのように変化したか/しなかったかを見ることによって、日常的に生み出されるリアリティと人々の行為との関係について考察を深めてい
きたい。
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