スラブ研究センターニュース 季刊 2006 年春号 No.105


学界短信


◆第18回西日本ロシア東欧史研究者集会◆

 3月4日に第18回西日本ロシア東欧史研究者集会が福井県民会館を会場に開催されました。浅野優氏(岡山大学・院)が「1990年代のポーランド外交: ドイツ、チェコなど隣国との外交交渉の展開」、神原ゆうこ氏(九州大学・院)が「開かれた国境が地域社会に与えた影響:スロヴァキア村落部の流動と停 滞」、生田美智子氏(大阪外国語大学)が「ハルビンにおけるロシア人社会について」という題で報告をおこない、それをめぐって活発な討論がおこなわれまし た。研究会のあと、懇親会が開かれ、翌日は今回の世話人である福井県立大学の伊藤順二氏の案内で、越前海岸、東尋坊をめぐるエクスカーションがおこなわ れ、「北前船主の館・右近家」では、日露戦争で旅順港閉塞船として自沈した福井丸に関する資料などを見学しました。次回は中四国地区の担当で同じ時期に研 究会が開催される予定です。
[林]

◆学会カレンダー◆

2006年

6月10-11日
比較経 済体制学会第46回全国大会 於一橋大学
詳しい情報は http://wwwsoc.nii.ac.jp/jaces/index.html

7月5-7日
スラブ 研究センター夏期国際シンポジウム

9月28-10月1日
中央 ユーラシア学会(CESS) 於ミシガン大学

10月20-22日
2006 年度日本ロシア文学会全国大会 於京都大学総合人間学部

10月28日
比較経 済体制学会秋期大会 於神戸大学

11月16-19日
米国ス ラブ研究促進学会(AAASS)年次大会 於ワシントンDC

11月18-19日
ロシ ア・東欧学会年次大会 於青山学院大学

12月13-15日
スラブ 研究センター冬期国際シンポジウム
2007年

7月4-6日
スラブ 研究センター夏期国際シンポジウム
2010年

7月23-27日
ICCEES (中東欧研究国際評議会)第8回世界会議 於ストックホルム

センターのホームページ(裏表紙参照)にはこの他にも多くの海外情報が掲載されています。

[大須賀]


大学院だより

北大大学院文学研究科歴史地域文化学専攻スラブ社会文化論専修の今年度の新入生は、修士課程6名、博士課程3名でした。4月現在の在学生は以下の諸 君です。

[望月]
大学院文学研究科歴史地域文化学専攻スラブ社会文化論講座在籍者 (2006年度)
氏名
学年
研究テーマ
指導教 員(正/副)
天野尚樹
D3
北東アジア国際関係史:日本・中 国・ロシアの国境概念
岩下
ウルフ
倉田有佳
D3
在日亡命ロシア人
岩下
荒井
クリフツォフ ドミトリ
D3
日本・ロシア・中国の三角関係と米 国
岩下
山本健三
D3
ロシア政治思想史におけるドイツ 人・ポーランド人
松里
望月
水谷 剛
D3
テレキ・パール研究
家田

秋山徹
D3
帝政ロシア植民地時代の中央アジア
宇山
前田
須田将
D3
中央アジアにおける「市民社会」と その「建設」   
宇山
岩下
オイドフ バトバヤル
D3
モンゴルの独立とロシア・モンゴル 関係(1911年~1921年)
岩下
ウルフ
大武由紀子
D3
ソ連期プロパガンダ・ポスターにつ いて
望月
荒井
加藤美保子
D2
ロシアの安全保障とアジア太平洋の 地域主義
岩下

立花優 D2 アゼルバイジャンの現代政治 宇山 松里
井上岳彦 D2 帝政ロシアとカルムィク人 宇山 前田
武藤玲子 D2 モルドヴァ共和国における移行政治
松里
小野田悦子
D2
ロシアにおけるイエズス会の歴史
望月
松里
左近幸村
D2
帝政末期のロシア極東
松里
ウルフ
金野雄五
D2
ロシア経済と対外経済関係の自由化
田畑 山村
麻田雅文
D1
中東鉄道による満洲経営:1896 -1917年
ウルフ
岩下
封 安全 D1 日・中・露三国経済関係 田畑 荒井
高橋 沙奈美 D1 ロシア正教をめぐる記憶から見る、 ポスト・ソヴィエト社会の国民統合問題
望月 松里
平塚慈
M2
EUの東方拡大とロマ問題

家田
笹村久美子 M2 独立後ウクライナの国家建設:ロシ アとの比較において 松里
三浦賢二 M2 ハンガリー人をめぐる民族問題 家田
中村 由香理 M2 アルタイにおける宗教性:伝統信仰 と他宗教の相互関係
宇山 山村
藤原 一也 M2 ロシア・ソ連社会における情報伝達
望月 荒井
湊 剛将 M2 非承認国家連合加盟国の比較研究 松里 宇山
宮澤 謹次 M2 ミハイル・バフチンのドストエフス キー研究 望月 宇山
桜間 瑛
M2
タタール人の民族・宗教意識
宇山
松里
望月映子
M2
ロシアの対ヨーロッパ外交
岩下

竹村寧乃
M2
アゼルバイジャンの言語政策
前田
宇山
吉田真由美
M2
ロシアの学校における文学教育
望月
荒井
劉 旭
M2
ロシアのエネルギー戦略
荒井 田畑
玉木修
M1
クロアチア・イリリア期における教 育と学生
家田

牟田恭平
M1
近世ハンガリーにおける地方社会
家田

久岡加枝
M1
グルジア民俗音楽の変容
前田
宇山
望月康次
M1
ナゴールノ・カラバフ問題
松里
前田
ウセーロヴァ・カムシャト
M1
カザフスタンの農業・食料複合体に おける垂直的調整の発展プロセスの比較分析
山村
田畑
寺田厚
M1
チェコスロヴァキア共産党史

家田


図書室だより

◆ソ連共産党・国家文書の補充 合◆

1995年度以来、スラブ研究センターでは、Hoover InstitutionとРосархивの 共同事業として製作されChadwick-Healey社から販売される «Archives of the Soviet Communist Party and Soviet State»について、当時のCOEプロジェクト経費などを使用して逐次購入をしてきましたが、COEプロジェクトが廃止された後は、なかなかこれに手が 回らない状況が続いていました(センターニュース87号, 2001年10月を参照)。しかし、昨年度の終わり近くになって、若干の補充を果たすことができましたので、お知らせします。

昨年度の購入分は、ГАРФの収蔵する文書中、リール番号で3.2723-3.2949の全227リール です。これは、ピローゴフ通りにある旧ЦГАОР СССРに所在するフォンドr-393 内務人民委員部の文書の一部であり、年代的には1923-1925年のものです。なお、このフォンドは、相当膨大なもので、これまで約2600リールを購 入してきましたが、なお1000リール以上が残されています。

[兎内]

ウェブサイト情報

2006年1月から3月までの3ヵ月間における、センターのホームページへのアクセス数(但し、 gif・jpg等の画像形式ファイル を除く)を統計しました。


全アクセス数
(1日平均)
うち、
邦語表紙
アクセス数
(1日平均)
うち、
英語表紙
アクセス数
(1日平均)
国内からの
アクセス数(%)
国外からの
アクセス数(%)
不明(%)
1月 309,617
(9,988)
12,652
(408)
3,124
(101)
96,125
(31%)
190,724
(62%)
22,768
(7%)
2月 291,385
(10,406)
11,884
(424)
3,116
(111)
74,525
(26%)
179,053
(61%)
37,807
(13%)
3月 354,987
(11,451)
13,848
(447)
3,688
(119)
75,208
(21.2%)
242,734
(68.4%)
37,045
(10.4%)
[山下]


編集室だより


◆スラヴ研究◆

和文学術雑誌『スラヴ研究』第53号は間もなく刊行予定で、現在印刷作業を進めています。内容はニュース前号に掲載した通りです。

また、次の第54号(2007年春刊行予定)の原稿締め切りは8月末です。投稿希望者は、6月末頃までに大須賀までお申し込みください。投稿規程など(若 干改訂しました)はセンターのホームページに掲載されていますので、ご参照ください。

[宇山]



◆ACTA SLAVICA IAPONICA◆

センターの欧文学術雑誌 ACTA SLAVICA IAPONICA Tomus 23(2006)3月に発行されました。以下の論文等が掲載されています。また、次号Tomus 24の投稿が3月末に締め切られ、現在審査中です。

Articles
Лукоянов, Игорь
Последние русско-японские переговоры перед войной 1904-1905 гг. (взгляд из России)
Shnirelman, Victor
The Politics of a Name: Between Consolidation and Separation in the Northern Caucasus
Werth, Paul
Georgian Autocephaly and the Ethnic Fragmentation of Orthodoxy
Naganawa, Norihiro
Molding the Muslim Community through the Tsarist Administration: Maalla under the Jurisdiction of the Orenburg Mohammedan Spiritual Assembly after 1905
Комарова,  Галина
Человек и радиация: опыт исследования аспектов жизни людей в условиях повышенной радиации
Matsuzato,  Kimitaka &  Gudžinskas,  Liutauras 
An Eternally Unfinished Parliamentary Regime? Semipresidentialism as a Prism to View Lithuanian Politics
Discussion
Гринёв, Андрей
Российский политаризм как главная причина продажи Аляски
Vinkovetsky, Ilya
Why Did Russia Sell Alaska?
Гринёв, Андрей 
Повлиял ли политаризм на продажу Аляски? (Ответ на замечания И. Виньковецкого)
Sources
Wolff, David   
The KGB Reports from Lithuania
Research Note
Mitrasca, Marcel
Japan in Romanian Books before World War Two
[ウルフ/大須賀]




◆21世紀COE研究報告集12号の刊行◆

『プラトンとロシア』が21世紀COE研究報告集No. 12として発行されました。掲載論文は以下の通りです。

ロシ ア・プラトニズムとウラジーミル・ソロヴィヨフ
杉浦秀一
ドスト エフスキーの中のプラトン   
望月哲男
セルゲ イ・トゥルベツコーイのロゴス論について
根村亮
物とイ デア:ヴャチェスラフ・イワーノフの美学とプラトン主義
北見諭
パー ヴェル・フロレンスキイのプラトン論:身体、視覚、美とのかかわりをめぐって
貝澤哉
ローセ フとプラトン主義:『神話の弁証法』における概念構成をめぐって
大須賀史和
ポーラ ンド・メシアニズムにかんする覚書:ヘーネ=ヴロンスキの「絶対」の哲学
川名隆史
[編集部]



◆21世紀COE研究報告集13号の刊行◆

 『バルトとバルカンの地域認識の変容』が21世紀COE研究報告集No. 13として発行されました。掲載論文は以下の通りです。

地域空 間としての「バルト」の醸成と変容
志摩園子
バルカ ンにおける空間認識:19世紀バルカンにおける民族運動の連動性
菅原淳子
[編集部]



◆Slavic Eurasian Studies No.9 Beyond Sovereignty: From Status Law to Transnational Citizenship?

の刊行◆

SESシリーズ第9巻 Beyond Sovereignty: From Status Law to Transnational Citizenship?(国家主権を越えて:地位法から国を跨ぐ市民権へ?), B. Majtenyi, Z. Kantor, B. Vizi, I. Halasz, S. Deets & O. Ieda (editor in chief) eds. が刊行されました。

この巻は一昨年に刊行されたSESシリーズ第4巻 The Hungarian Status Law: Nation Building and/or Minority Protection(ハンガリー地位法:国民形成そして/あるいは少数民族保護)Z. Kantor et al. eds.を発展させたものです。基礎になっているのは2004年10月にブダペストで開催された国際シンポジウム「地位法症候群:共産主義崩壊後の国民形 成、それともポスト・モダンの市民権? The Status Law Syndrome: Post-Communist Nation-Building or Post-Modern Citizenship?」での報告論文です。前回の『ハンガリー地位法』では2001年制定のハンガリー地位法の政治的、法律的な分析が中心でしたが、 今回は東欧全域さらには西欧やCISにも分析対象が広げられ、分析視角も理論、国際社会、イデオロギー、そして国際比較をも含む多面的なものとなりまし た。合わせて20編が収録され、執筆者もハンガリー、ルーマニア、オーストリア、イギリス、アメリカ、ドイツ、インド、トルコ、オランダ、及び日本の 10ヵ国に及びます。今回の出版により、前回と合わせて、地位法に関する世界での先端的研究はほぼ網羅されたのではないかと思いますが、まだまだ論じ切れ ていない点も多々あると思います。皆様方からのご批判、ご高評をお願い申し上げます。掲載論文は以下の通りです。

Utilitarianism in Minority Protection? (Status Laws and International Organisations) Balázs Majtényi
Pulling Back from Neo-Medievalism: The Domestic and International Politics of the Hungarian Status Law
Stephen Deets
The Concept of Nation in the Central and East European ‘Status Laws’
Zoltán Kántor
Territory and the Hungarian Status Law: Time for New Assumptions?
Sherrill Stroschein
Kin Minority, Kin-state and Neighbourhood Policy in the Enlarged Europe
Judit Tóth
The Evaluation of the ‘Status Law’ in the European Union
Balázs Vizi
The Triadic Nexus: Lessons Learned from the Status Law
Walter Kemp
Role for the Kin-states?
Gábor Kardos
Transnational Minority Protection in Central and Eastern Europe and European Community Law
Helge Hornburg
From the Status Law "Dual Citizenship": Aspects of Domestic International Law
Herbert Küpper
Ideological Background of the Amendment Status Law Controversy in Hungary
Osamu Ieda
Hungary and the EU: the Status Law and After
George Schöpflin
The Innocence of Article Eighteen, Paragraph Two, Subsection E.
Nigel Swain
Minority Rights and Diaspora-claims: Collision, Interdependence and Loss of Orientation
András László Pap
Models of Kin Minority Protection in Central and Eastern Europe
Iván Halász
Virtual Nationalism in Comparative Context: How Unique Is the Hungarian Approach?
Zsuzsa Csergő − James M. Goldgeier
Hungarian Status Law: A Model for Minority Kin Protection?
Amitabh Singh
Dual Citizenship, Extraterritorial Elections and National Policies: Turkish Dual Citizens in the Bulgarian-Turkish Political Sphere
Nurcan Özgür-Baklacioglu
The ‘Triadic Nexus’ in Kazakhstan: A Comparative Study of Russians, Uighurs, and Koreans
Natsuko Oka
The Status of an Ethnic Minority in Eurasia: The Mennonites and Their Relation with the Netherlands, Germany and Russia
Tjeerd de Graaf
[家田]

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スラブ研究センター ニュース No.105 index