スラブ研究センターニュース 季刊 2006 年夏号 No.106


会 議(2006年5月−7月)

センター運営委員会

2006年度 第1回 7月7日
議  題 1. 2007 年度以降の共同研究員の選考基準について

2.特 定領域研究への応募について
 
3. 定員削減への対処、将来構想について

4. その他
報告事項
1. COEの活動報告と予定について

2. 2006年度科学研究費補助金について

3. 2006年度客員教授について

4. 2006年度特任教員(旧外国人研究員)着任状況について

5. 2007年度特任教員(旧外国人研究員)候補者について

6. 2006年度公開講座について

7. 2006年度鈴川基金奨励研究員の決定について

8. その他

センター協議員会

2006年度 第1回 6月23日
議  題 1.教 員の人事について

2.特 任教員(旧外国人研究員)候補者の選考について

3. 2005年度支出予算決算について

4. 2006年度支出予算配当(案)について

5.ロ シア科学アカデミー・スラブ学研究所との協定について

6.教 員の兼業について

7.そ の他
報告事項 1. 2006年度科学研究費補助金について

2.教 員の海外渡航について

3. 2006年度鈴川基金奨励研究員の決定について

4. 2006年度リサーチ・アシスタントの決定について

5.そ の他
2006年度 第2回 6月27日 (持ち回り)
議  題 1.北 海道大学スラブ研究センター中村研究奨励基金要項(案)について


みせらねあ

◆灰谷慶三先生を悼む◆

 望月恒子(北海道大学文学研究科)
haiya
20年前のお姿

去る7月6日、北海道大学名誉教授、灰谷慶三先生が、急性肺炎のため御逝去された。先生は長くスラブ研究センターの学内共同研究員を務められるとと もに、1986年から95年にかけては運営委員・協議員の任にもあたられ、センターと深い関わりを持ってこられた。ここに生前の灰谷先生を偲び、御足跡を たどり、哀悼の意を表したい。

灰谷先生は昭和11年(1936年)函館市に生まれ、札幌西高校から北大文学部に入学(昭和30年)、ロシア文学を専攻され、卒業後は早稲田大学大学院に 進学された。東京大学教養学部助手を経て、昭和45年(1970年)に母校の北大文学部に助教授として赴任されて以来、平成12年(2000年)3月の定 年退官まで、30年もの長きにわたって文学部・大学院文学研究科で教育研究に携わられた。

ロシアロマン主義文学、ゴーゴリの作品が、先生の主たる研究領域であった。日本のスラブ文献学の基礎を築いた恩師木村彰一先生を生涯深く敬愛され、木村先 生から受け継いだスラブ文献学の伝統と、御自身の関心が深かったロシアフォルマリズム理論を調和させて、厳密なテクスト解釈に基づく文学論を展開された。 ゴーゴリを中心とする論考や、ゴーゴリ、ゴンチャローフ、レーミゾフ(灰谷訳によって初めて日本に紹介された)、ヴャチェスラフ・イワーノフ等の訳業に は、テクスト読解に対するあくまで厳しい姿勢と、ロシア・東欧の文学、文化全般に寄せる先生の深い愛を読み取ることができる。

灰谷先生は、ロシア語解釈への真摯な姿勢を、御自身が受け継いだ形で学生に伝えるために、労を惜しまれなかった。一言一句まで正確な読みを要求する先生の 授業の厳しさは、北大露文では伝説となっている。年齢とともに少し優しくなられたようだが、私が平成6年に着任したときは、まだ厳しさをしっかり保ってお られた。院生のゼミの日にゼミ室の前を通りかかると、先生の高い声がびんびんと響いてきて、「きょうの犠牲者は誰だろう」と、思わず耳をそばだてたことを 思い出す。「テキストを緻密に、きちんと読む」「少数の例から大きな結論を出すことを嫌う」 - 灰谷先生が故福岡星児先生を評された言葉は(センターニュースNo.93)、そのまま御自身の学風を表すものであったと思う。

先生は平成6年4月から平成10年3月まで北海道大学評議員、平成8年4月から10年3月まで文学部長を務められ、北大および文学部の管理運営に力を尽く された。文学部の大学院重点化に向けての取り組み、古河講堂「旧標本庫」人骨問題など多くの難問への対処に身を捧げられた数年間であった。

在職中のこうした激務がお体をむしばんだのであったろう。先生は退職後まもない平成12年秋に、脳梗塞で倒れられた。ただ、この時のご病気は癒え、その後 の骨折も気丈に乗りこえられ、文学部同窓会長としてのお仕事や、院生たちの自主ゼミに、先生は気力衰えぬ姿を見せてくださっていた。したがって今年4月末 にまた骨折で入院なさった時も、私たちは再び先生の元気な姿を見られるものと信じていたのである。だが、先生は帰らぬ人となられた。退院の日取りさえ決 まっていた6月24日に急性肺炎に罹り、意識の戻らぬまま、7月6日に息を引き取られたことは、まことに無念である。享年69歳であった。ここに先生の御 功績を永く記憶し、心より御冥福をお祈り申し上げる。





◆センター元教授 長谷川毅氏 読売・吉野作造賞受賞◆

暗闘 センターに1984年から1991年まで8年間勤められた長谷川毅氏(カリフォルニア大学サンタバーバラ 校歴史学部教授)が、著書『暗闘 スターリン、トルーマンと日本降伏』(中央公論新社、2006年)により、このほど第7回読売・吉野作造賞を受賞されま した(『読売新聞』2006年6月9日)。同賞は、読売論壇賞と吉野作造賞を一本化して、2000年に創設されたものです。選考委員会座長の宮崎勇氏(大 和総研名誉顧問)は、「本書は戦争責任を検証する一つの重要資料にもなっている」という言葉で、選評を結んでいます。贈賞式は、7月13日に東京のパレス ホテルでおこなわれました。

なお、この本のもとになっている英語版の著書(Racing the Enemy: Stalin, Truman, and the Surrender of Japan, Harvard University Press, 2005)は、権威のある賞として知られているアメリカ外交史学会(SHAFR)のロバート・フェレル賞をこの4月に贈られたことも付記しておきます。同 書のさわりは、2004年7月のセンター夏期国際シンポジウム「21世紀のシベリア・極東:『アジア共同体』のパートナー」でも発表されました。

[田畑]



◆『コーカサスを知るための60章』の刊行◆

コーカサスを知るための60章 コーカサスと聞いて一般の日本人は何を連想するでしょうか。健康や長寿に関心の強い人ならヨーグルト?  「ムシキング」に夢中の子どもならコーカサスカブトムシ? コーカサスとは、黒海とカスピ海に挟まれた旧ソ連の一地域であることを正確に知っている人は意 外と少ないかも知れません。そんな中、本邦初のコーカサス全般についての概説書が刊行されました。北川誠一、前田弘毅、廣瀬陽子、吉村貴之編著『コーカサ スを知るための60章』(明石書店、2006年)です。内容は政治・経済・歴史から舞踊・映画、はたまた相撲界で活躍中のグルジア出身力士まで多岐に及 び、現時点での最新の情報を踏まえたものです。日本人のコーカサス理解にとって大いに役立つ一冊となるでしょう。
[編集部]

◆北海道スラブ研究会・総会◆

4月27日に「北海道スラブ研究会」の総会が、センター大会議室で開催され、今年度の役員について、以下のように決められました。

役員一覧
世 話役代 表: 松里公孝 (センター、新任)
世 話役: 大西郁夫(北大文学部、留任)、佐々木洋(札幌学院大、留任)、杉浦秀一(北大言語文化部、留任)、中村研一(公共政策学連携 研究部、留任)、所伸一(北大教育学部、留任)、松田潤(札幌大、留任)、山田久就(小樽商大、留任)、吉野悦雄(北大経済学部、留任)
会 計係: 大須賀み か(センター、留任)
会 計監 査: 吉田文和 (公共政策学連携研究部、留任)
連 絡係:
山村理人 (センター、留任)

また、4月27日の総会の後を含め、6月までに既に3回の北海道スラブ研究会主催の研究セミナーが開かれました(研究会活動参照)。

「北海道スラブ研究会」は、道内の研究者や市民とスラブ研究センターとの連携・交流を深める場であり、スラブ地域(旧ソ連・東欧地域)に関心を持つ人なら ば、誰でも会員になることができます。内外の専門家を招いて年に数回の研究会を開催するほか、会員には、スラブ研究センターが主催するシンポジウム、セミ ナーなどの情報を随時お知らせしています。入会希望の方は、担当者(大須賀みか:011-706-2385、 mika@slav.hokudai.ac.jp) にお知らせ下さい。

[山村]

◆コーカサス映画特別セミナー開かれる◆

6月30日、すすきののシアターキノにて、スラブ研究センター協力のもと、コーカサス映画特別セミナー『ピロスマニ』が開催されました。松里セン ター長の挨拶に続いて、前田がピロスマニの生涯や映画を製作したシェンゲライア(シェンゲラーヤ)監督ならびに脚本家アフヴレディアニ氏について解説を加 えました。その後、映画『ピロスマニ』が上映されました。セミナー司会を務めたシアターキノ館主中島洋氏の「日本に一本しかないフィルムです」との言葉も あり、観客は最後まで熱心に映画に見入っていたように思います。「ピロスマニを見ることはグルジアを信じることである」という言葉を強く実感する貴重な機 会となりました。この企画は、本年度公開講座受講者の要望により実現しました。単なる講義形式を超えた文化体験の発信地としての公開講座とセンターの役割 について改めて認識しました。セミナー実現に尽力された関係者全ての方に感謝します。

[前田]

◆人物往来◆

 ニュース105号以降のセンター訪問者(客員、道内を除く)は以下の通りです(敬称略)。

[松里/大須賀]

5月9日
黄壽永(Hwang, Su Young)(東国大、韓国)、金榮漢(Kim, Yong Han)(西江大、韓国)、鄭鎭弘(Chung, Chin Hong)(ソウル大、韓国)、呉昞南(Oh, Byung Nam)(ソウル大、韓国)、車柱環(Cha, Chu Whan)(ソウル大、韓国)、呂石基(Yoh, Suk Kee)(高麗大、韓国)、姜斗植(Kang, Tou Shik)(ソウル大、韓国)、鄭煥明(Jung, Myong Hwan)(韓国カトリック大)、金完鎭(Kim, Wan Jin)(ソウル大、韓国)、金ヒョンチャン(Kim, Hyun Chang)(ソウル大、韓国)、車河淳(Cha, Ha Soon)(西江大、韓国)、李成茂(Lee, Song Mu)(韓国精神文化研究院、韓国)、李基東(Lee, Ki Dong)(東国大、韓国)、金鐘源(Kim, Jhong Won)(成均館大、韓国)、車基璧(Cha, Ki Pyok)(成均館大、韓国)、金東基(Kim, Dong Ki)(高麗大、韓国)、朴光淳(Park, Kwang Soon)(久留米大)
5月11日
河斗洪(Ha, Doo Hong)(統一政策研究所、韓国)、権寧福(Kwon, Young Bok)(同)、曺英鐘(Cho, Young Jong)(同)、姜東勲(Kang, Dong Hun)(同)、孫ブグン(Son, Bu Geun)(同)
6月24日
薩摩秀登(明治大)    )
6月29日
チェレビッチ (Gojko Čelebić )(セルビア・モンテネグロ大使館公使)、田中一生(バルカン文化史家)
7月2日
木寺律子(大阪外国語大・院)
7月5-9日
馮紹雷(Feng, Shaolei)(華東師範大、中国)、河龍出(Ha, Yongchool)(ソウル大、韓国)、ジョシ(Nirmala Joshi)(インド・中央アジア基金、インド)、キャツ(Mark Katz)(ジョージ・メーソン大、米国)、高相斗(Ko, Sangtu)(延世大学、韓国)、ラリュエル(Marlene Laruelle)(フランス)、オルコット(Martha Brill Olcott)(カーネギー基金、米国)、ラフマーン(Fazal Rahman)(戦略研究所、パキスタン)、リャブシュキン(Dmitri Ryabushkin)(タヴリダ大、ウクライナ)、サイードヴァ(Lolahon Saiidova)(笹川平和財団)、シール(Jan 格r)(カレル大・院、チェコ)、孫壮志(Sun, Zhuangzhi)(ロシア東欧中央アジア研究所、中国)、トリポフ(Farkhod Tolipov)(ウズベキスタン国立大)、ヴラディ(Sergey Vradiy)(歴史考古民族学研究所、ロシア)、ウィトレー(Jonathan Wheatley)(英国)、ザカウルツェヴァ(Tatiana Zakaurtseva)(外交アカデミー、ロシア)、阿部健一(京都大)、鮎川和美(大阪外国語大・院)、飯塚正人(東京外国語大)、井桁貞義(早稲田 大)、石井明(東京大)、岩田賢司(広島大)、上垣彰(西南学院大)、宇多文雄(上智大)、大井敦司(首都大東京)、大川壮一郎(外務省)、大須賀史和 (神奈川大)、大津定美(大阪産業大)、岡奈津子(アジア経済研究所)、帯谷知可(京都大)、河東哲夫(早稲田大)、川端香男里(川村学園女子大)、金成 浩(琉球大)、木村崇(京都大)、木村汎(拓殖大)、窪田順平(総合地球環境学研究所)、窪田新一(笹川財団)、雲和広(一橋大)、黒岩幸子(岩手県立 大)、小松久男(東京大)、小森宏美(京都大)、小森田秋夫(東京大)、斎藤元秀(杏林大)、塩川伸明(東京大)、志摩園子(昭和女子大)、清水学、下斗 米伸夫(法政大)、杉山秀子(駒澤大)、鈴木博信(桃山学院大)、仙石学(西南学院大)、高木誠一郎(青山学院大)、高田和夫(九州大)、田中義具、田村 慶子(北九州市立大)、外川継男(上智大)、中澤達哉(福井大)、中島崇文(東京大・院)、中野潤三(鈴鹿国際大)、中野加菜(新潟大・院)、西村可明 (一橋大)、袴田茂樹(青山学院大)、橋本雅夫(国際貿易)、橋本伸也(広島大)、濱由樹子(津田塾大)、兵頭慎治(防衛研究所)、平田武(東北大)、廣 瀬陽子(東京外国語大)、樋渡雅人(東京大・院)、深谷強(時事通信社)、藤本和貴夫(大阪経済法科大)、堀江典生(富山大)、溝端佐登史(京都大)、皆 川修吾(愛知淑徳大)、湯浅剛(防衛研究所)、横手慎二(慶応義塾大)、吉田修(広島大)、吉村貴之(東京外国語大)、渡邊昭子(大阪教育大)
7月13日
団長・汪シャオシュウ(Wang, Xiaoshu)(上海国際問題研究所、中国)、呉寄南(Wu, Jinan) (同)、李秀石(Li, Xiushi)(同)、張耀(Zhang, Yao)(同)、張沛(Zhang, Pei)(同)、シャオ育群(Shao, Yuqun)(同)
7月15-17日
石川健(島根大)、上垣彰(西南学院大)、大津定美(大阪産業大)、久保庭真彰(一橋大)、雲和弘(一橋 大)、金野雄五(富士総合研究所)、斉藤久美子(和歌山大)、塩原俊彦(高知大)、志田仁完(一橋大・院)、杉本侃、栖原学(日本大)、中村靖(横浜国立 大)、長谷直哉(慶應義塾大・院)、服部倫卓(ロシア東欧貿易会)、廣瀬陽子(東京外国語大)、本村真澄(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)、吉井昌彦 (神戸大)
7月18日
長島大輔(東京大・院)、村上亮(関西学院大・院))


◆研究員消息◆


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