スラブ研究センターニュース 季刊 2006 年秋号 No.107


会 議(2006年8月−9月)

センター協議員会

2006年度 第3回 9月11日
議  題 1.教 員の人事について

2.教 員の兼業について

3. 研究生の研究継続について

4. その他
報告事項 1. 教員の海外渡航について

2.そ の他
2006年度 第4回 9月20日
議  題 1.教 員の人事について

2.そ の他
報告事項 1.そ の他


みせらねあ

◆後継者育成に関するアンケート調査集計結果◆

センターでは、『スラブ・ユーラシア研究者名簿』改訂のためのアンケートをおこなった際 に、日本ロシア・東欧研究連絡協議会(JCREES)からの委託により、後継者育成に関するア ンケート調査をおこないました(質問票は、この記事の最後に添付しました)。『名簿』改訂 のためのアンケート回答者1529 名のうち、「後継者育成に関する調査」には、その13.7%に 当る209 名の方から回答がありました。「大学院教育に携わっている方のみ回答下さい」とい うアンケートでしたので、スラブ・ユーラシア地域研究においては、全国でこのくらいの数 の方々が後継者育成に携わっていることになります。以下に、この集計結果を記します。 表1に示しましたように、回答者が指導教員となっている院生数は、全部で999 名でした(1)。 このうち、スラブ・ユーラシア地域研究をおこなっている院生数は、その40.3%に当る403 名でした。回答者は平均で1 人当り4.8 人の院生を指導し、そのうち、1.9 人がスラブ・ユー ラシア地域研究をおこなっている院生ということになります。さらに、そのうちの社会人と 留学生を除く院生数を尋ねたところ、287 名という結果が得られました(2)。博士後期課程以 上の者に限定すると、全国で249 名、社会人と留学生を除いて174 名が、スラブ・ユーラシ ア地域研究の後継者として育っていることになります。

表1.スラブ・ユーラシア地域研究の大学院生数


修 士課程
博 士後期課程
オー バードクター
合 計
指導教員となっている院生数
497
351
151
999
うち:スラブ・ユーラシア地域研究の院生数
154
170
79
403
うち:社会人と留学生を除く院生数
113
111
63
287


研究テーマについてのアンケート結果は表2のとおりです(3)。歴史が84 名でもっとも多く、 次いで、文学・思想(67 名)、言語学(56 名)、経済(44 名)、政治・社会・民族(43 名)な どが続いています(4)。また、地域別には、ロシアが圧倒的に多く、不明を除く363 名のうち、 その57.7%に当る198 名がロシアを研究対象とするということでした。ロシアは、文学、言 語学、国際関係などで他を引き離しているのですが、歴史や政治では東欧がもっとも多くなっ ています。歴史と政治ではロシアを除く旧ソ連も多くなっています。逆に、政治におけるロ シアの少なさが目立っています。

表2.研究テーマ


ロ シア
ロ シアを除く旧ソ連
東 欧
そ の他
合 計
文学・思想
66
0
1
0
67
言語学
29
3
2
22
56
文化・芸術・宗教
15
0
3
2
20
歴史
29
14
30
11
84
政治・社会・民族
9
14
19
1
43
国際関係
18
1
2
0
21
経済
16
3
7
18
44
環境
4
0
0
1
5
教育
3
1
2
0
6
人類学・民俗学
5
0
2
2
9
考古学
2
0
0
3
5
その他
2
1
0
0
3
不明




40
合計
198
37
68
60
401


最後に、所属学会についてのアンケート結果は表3のとおりです(5)。これについては、指 導教員が把握していないケースも多いようで、スラブ・ユーラシア地域研究の院生全体の4 分の1に当る101 名が「不明」となっています(6)。学会別に見ると、日本ロシア文学会が66 名で抜きん出ており、ロシア・東欧学会、比較経済体制学会、日本国際政治学会が続いてい ます(7)。研究テーマで歴史が多かったのと比べると、歴史関係の学会所属者が少ないのは意 外な感じですが、歴史関係はいくつかの学会に分かれているためかと思われます(8)。この調 査で把握されている院生(302 名)のうち、43.7%に当る132 名が学会に所属していないと いう回答でした。スラブ・ユーラシア地域研究の院生総数の38.2%が修士課程の院生ですか ら(表1)、学会には博士後期課程以降の院生が入会すると想定するならば、博士後期課程の 院生はほとんどがいずれかの学会に所属していることになります。この表3から計算すると、 学会に所属している院生は、平均で1人当り1.3 の学会に所属していることになります。

表3.所属学会

日本ロシア文学会
66
ロシア・東欧学会
29
比較経済体制学会
20
日本国際政治学会
15
ロシア史研究会
9
東欧史研究会
8
その他
79
無所属
132
以上で把 握されている院生総数
302
不明
101
合計
403


以上の調査結果が今後のスラブ・ユーラシア地域研究の後継者育成に何らかの形で役立て られることを期待しています。このアンケートに関するご質問がありましたら、田畑までお 寄せ下さい(shin@slav.hokudai.ac.jp)。


  1. 以下、「院生」は、修士課程、博士後期課程の院生とオーバードクターを含むものとします。ここでのオー バードクターの定義については、質問票の設問1の注*を参照下さい。
  2. 11 人の回答者については、質問票の設問3の院生数が設問2の院生数を上回っており、設問の意味を 誤解した(おそらく、指導教員となっている院生全体のなかでの社会人と留学生を除く院生数を回答 した)のではないかと思われますので、「社会人と留学生を除く院生数」の集計においては、この11 人の回答を除きました。したがって、実際には、「社会人と留学生を除く院生数」はこの表の数値よ り若干多い可能性があります。
  3. 「 不明」は、回答がなかった数、あるいは、複数の院生を指導している回答者が、テーマ別の人数を 正確に記載していないために、分類できなかった数です。これを除いた者については、できるだけ分 野別の「その他」に入れないように、それぞれの分野を広めに解釈して分類しました。また、対象地 域別の「東欧」は旧東欧の意味で、バルト3国は「ロシアを除く旧ソ連」に含まれます。対象地域別 の「その他」には、とくに地域を限定しないような研究テーマの者などが含まれています。
  4. 法学は、分野別の「その他」に分類しましたが、2名だけでした。
  5. 学会の定義は、厳密には難しいところがありますが、ここでは、研究会という名称のものを含めて、 回答されたものすべてを学会として数えました。
  6. 90 人の院生については、学会所属が「不明」という回答がありました。また、回答者が所属学会名を 挙げたものの、人数を回答しなかったので、指導する院生のうちの何名かを「不明」扱いとせざるを 得なかったケースが11 人分ありました。
  7. JCREES に加盟する団体のなかで、日本スラブ・東欧学会(JSSEES)という回答はゼロでした。
  8. 「 その他」のなかに入れたものとして、内陸アジア史学会(5名)、史学会(4名)などがありました。 ロシア史研究会と東欧史研究会が研究会という名称であるため、所属学会として記入されなかった可 能性もあります。

「後継者育成に関する調査」質問票
設問1.あなたが主たる指導教員となっている院生数を記入下さい。
 修士課程院生数_名  博士後期課程院生数_名  オーバードクター* 数_名
 *博士後期課程に籍はないが、常勤職に就いていない者。日本学術振興会PD、任期1~2年のポスド ク研究員などを含む。博士後期課程においてあなたが主たる指導教員となっていた院生で、現在オー バードクターとなっている者の数を記入下さい。

設問2.1のうち、スラブ・ユーラシア地域研究をおこなっている院生数を記入下さい。
 修士課程院生数_名  博士後期課程院生数_名  オーバードクター数_名
 これら院生の研究テーマを記入下さい。(例:ロシア文学、ロシア中世史)
 これら院生の所属学会を1人ずつ記入下さい。無所属の人数も記入下さい。(例:1人はロシア・東欧 学会とロシア文学会。もう1人はロシア・東欧学会のみ。無所属が2名)

設問3.2のうち、社会人と留学生を除く院生数を記入下さい。
 修士課程院生数_名  博士後期課程院生数_名  オーバードクター数_名
[田畑]




◆岩下明裕著《4000 километров проблем:российско-китайская граница》の刊行◆

岩下明裕

『中・ロ国境4000 キロ』(角川選書、2003 年)のロシア語版 4000 километров проблем: российско-китайская граница (Восток-Запад, 2006) が、日本語オリジナル出版後、およそ3年の歳月を経て刊行 されました。

出版社は中国研究文献の出版社として著名なボクトーク・ザーパ ド(前身はムラヴェイ)。翻訳は気鋭の日本学者グルフンケル・ミ ハイル氏(現モスクワ在住)が日本語版を底本に1年半をかけて 丁寧におこない、中国語の地名や人名の表記確認などは殷剣平氏 (黒龍江省社会科学院、ハルビン在住)が全面的にサポートしてく れました。また30 頁にも及ぶ力強い序文をアレクセイ・ヴォスク レセンスキー教授(モスクワ国際関係大学東洋学講座主任)が寄 せており、本書の刊行は、まさに中ロ日の密接な共同作業のたま ものであり、21 世紀COE プログラム「スラブ・ユーラシア学の構築」の精神から生み出さ れたと考えます。

なお、ヴォスクレセンスキー教授は、友情あふれるものの筆者の歴史認識に対して厳しい コメントを序文で展開していますが、これには改めて反論をしたいと考えています。残念な がら、スラブ研究センターには本書の在庫はありません。ご関心をお持ちの方は、モスクワ 出張の際に、ぜひ街中の書店で立ち読みでもしていただければ幸いです。

[岩下]

◆人物往来◆

 ニュース106号以降のセンター訪問者(客員、道内を除く)は以下の通りです(敬称略)。

[松里/大須賀]

7月22日
中根一貴(東北大・院)
7月24日
生田真澄(神戸大・院)
8月29日
ブーハク(Władysław Bułhak)(国立記憶センター、ポーランド)、クシヴィエツ(Grzegorz Krzywiec)(ポーランド科学アカデミー・院)
9月7日
角田耕治(早稲田大・院)
9月16日
大須賀史和(神奈川大)、坂庭淳史(専修大)、下里俊行(上越教育大)
9月21日
クラフチェンコ(Volodymyr Kravchenko)(ハリコフ大、ウクライナ)
9月23日
磯貝健一(立命館大)、近藤信彰(東京外国語大)、菅原睦(東京外国語大)、中西竜也(京都学園大)、 真下裕之(神戸大)、森本一夫(東京大)、矢島洋一(京都外国語大)、渡部良子(上智大)
9月26日
西村真( 三井物産戦略研究所)、ラム(Giri Ram)( 同)
10月4日
アクサートヴァ(Sada Aksartova)(日本学術振興会特別研究員)、シュラトフ(Iaroslav Shulatov)( 慶応義塾大・院)
10月16日
ラーリン(Victor Larin)(ロシア極東諸民族歴史・考古・民族学研究所、ロシア)


◆研究員消息◆


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