スラブ研究センターニュース 季刊 2008 年春号 No.113 index

研究の最前線


桜間瑛(北大文学研究科博士後期課程)

ロシアをフィールドに研究する者として、大学入学以降、専らロシア語の向上に取り組ん できたが、英語、特にその会話などに関しては、集中して取り組む機会を持つことはなかった。 そうした状況の中で、突然な企画だったこともあり、多少の不安を覚えながらのスタートで あった。

合宿中は、基本的に90 分の授業が1日5つ、その他の時間も基本的には英語のみでコミュ ニケーションをとる。札幌の中心部からは隔絶された環境で、国内にいながらにして、語学 留学にでも来たのか、と錯覚させるような環境が整えられた。3人の講師陣は、努めてフラ ンクにわれわれに接してくれたことで、授業以外の場面でも英語に接する機会を多く得るこ とができた。もちろん、授業においても体系的かつ実践的なものが提供され、徐々にそのペー スに慣れていくことができた。

特に力が入れられたプレゼンテーションのおこない方に関する講義は、とても新鮮なもの であった。普段は、とかく報告の内容に力を込めるものの、報告をおこなうこと自体の練習 などはほとんど関心を払ってこなかった。しかし、ここではプレゼンテーション自体にも、 周到な準備が必要なことが強調され、繰り返しそのポイントや練習がおこなわれてきた。英 語に限らずここで教わった報告の構成やジェスチャー、アクセントの置き方などは、日本語 の報告等にも十分応用できるものとして、貴重な経験であった。

報告に関して、プレゼンテーション自体は確かに十分な訓練、準備をおこなうことができ たものの、その後の議論の方法に関して十分な訓練を積むことができなかったことが悔やま れる。特に、ネイティヴからの「本格的」な質問があった場合の対応などを練習することが できなかった点は、とても残念であった。それと関連する問題として、講師陣がスラブ・ユー ラシア地域に関する専門家ではなかった点がある。3名とも、純粋に語学能力の向上という 点に関しては、非常にすばらしい授業を展開してくれたが、専門に関する文章の校正などを 任すには不安が残った。シンポ・デモ初日の、ソ連史家アンドリュース氏の講演・コメント が非常に有益であった点から分かるように、1人でも専門と関わる講師が参加していただけ れば、より実践的なアドヴァイス等を直接得ることができ、また専門の報告等に対して、本 番のシンポジウムさながらのコメントや質問をコンスタントに得ることができたのではない だろうか。


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