スラブ研究センターニュース 季刊 2008 年夏号 No.114 index

新センター長から


新しいスラブ研を目指して

岩下明裕
岩下明裕

8 月1 日付で、センター長を務めることに なりました。10 ヵ月の在外研究にご配慮いた だいたため、通例より数ヵ月遅れの就任とな りましたが、帰国早々、様々な難題に直面し、 翻弄される日々です。前センター長の就任の あいさつによれば、「センターは現在、全国 共同利用施設ですので、全国のスラブ・ユー ラシア専門家へのサービスに努め、またスラ ブ・ユーラシア専門家のご支持を賜ることが、 その存続の条件」なのですが、2009 年度にむ けて、文科省の主導のもと、既存の全国共同 利用施設の廃止、及び新しい「共同利用・共 同研究拠点」の認定が予定されています。セ ンターとしてもこれまでの全国共同利用施設 と同様の位置づけを獲得するためには、新し い制度に応募しなければなりません。この位置づけを得られる保証はどこにもないというこ とです。いわば、センターはいま存亡の岐路にたたされているといっても過言ではなく、全 国のスラブ・ユーラシア研究の専門家のご支持をはじめ、内外の研究コミュニティからのご 支援が火急に必要な状況に置かれています。

もうひとつのチャレンジは、21 世紀COE 後の対応です。2003 年度から始まった21 世紀 COE 事業は潤沢な予算をもたらし、センターの活動を質的に飛躍させることに成功し、関連 する研究・教育コミュニティにその成果を還元できたと考えております。講座や叢書、外国 語出版物のSES シリーズなどは広い分野で高い評価を受けました。内外での様々な研究活動 の組織化や、若手研究者を含む助成なども多くの成果を得ることが出来ました。現在、21 世 紀COE の成果をどのように継承し、発展させるかという課題とともに、事業終了後に起こる 財政的困難をどのように乗り切っていくかという難問が待ちかまえています。これまでのよ うにスラブ・ユーラシアに関わるほとんどの資料を無選別に購入し、次から次へと計画でき るだけのシンポジウムやセミナーを内外で組織し、その成果を大量に刊行して配布するといっ た、「大量生産・大量消費」のよき時代は終わりました。これからは限られたリソースでどの ように効率よくセンターの組織を運営し、またどの領域の活動を重点的に発展させていくか がテーマとなります。

このような変わり目の時期にスラブ研を預かるセンター長(director)に必要なことは、高 みにたって指揮すること(direct)ではなく、同じ目線で組織をまとめ、これまで以上に研究・ 教育・行政などのさまざまなコミュニティと息をあわせながら、おつきあいを深めていくこ と(manage)だと思います。私たちは今後、センターの日常生活や研究活動に新しいアイデ アを導入し、実務上の工夫をしながらも、これまでセンターを通じてみなさまに培っていた だいた蓄積や実績をもとに、決して動ずることなく、また臆することなく、一丸となってこ れらの困難に立ち向かっていきたいと考えます。

夏休みとともにセンターは耐震建物改修が入り、しばらくの間、みなさまのご利用にご迷 惑をおかけします。来年4 月には新しいセンターの建物をご覧いただくことが出来ますが、 建物ばかりではなくその活動の中身もまた大きくチェンジしたと、センターが評されるよう 努力いたします。どうぞ、これからも、皆様のご指導をよろしくお願い申し上げます。

[岩下]

→続きを読む
スラブ研究センターニュース No.114 index