スラブ研究センターニュース 季刊 2009 年春号 No.118 index

図書室だより


帝政ロシア地図帳デジタル版の公開

本年5月より、ウェブサイト(http://srcmaterials-hokudai.jp/) を立ち上げ、本センターの所蔵する、帝政ロシア末期に作成された2冊の地図帳の画像を公開しています。

そのひとつは、『マルクス版世界地図帳』(ペテルブルク, 1905年)、もうひとつは、土地整理・農業総局移民局が同じマルクス社から刊行した3巻本『アジア・ロシア』(ペテルブルク, 1914年)の付録地図帳です。前者は、世界地図ですので、ロシア帝国だけでなく、日露戦争直前の世界がロシアの地図にどのように表現されたかを見ること ができます。なお、残念ながら、「バルカン」の図幅が欠けています。後者は、シベリア、極東、および中央アジアを把握するために作成された地図帳で、地形 や行政区分の他、気候、土壌、民族、宗教、通信、農業、予算など、さまざまな角度から当該地域を図化しています。

いずれも、大判で、劣化もあり、資料にかかる負荷を考えるとコピーの提供が難しかったのですが、京都大学の田中耕司氏を代表とした科研費「アフロ・アジア の多元的情報資源の共有化を通じた新たな展開」(基盤研究A, H18-20)において、400dpiカラースキャナーでデ ジタル画像を採取し、さらに、公開用のソフトウェアを開発することができました。次いで、 昨年から開始された新学術領域研究「ユーラシア地域大国の比較研究」の中で、サーバーの 設定と運用に要する経費をまかない、今回の公開に漕ぎつけた次第です。

また、両地図帳の収録地図のうち、ロシア・極東部とその周辺について、対比できる図を設け、 その中の主要地名について、日・露・英・中の4つの言語で検索し、表示し、センターの所 蔵する関連写真を表示できるようにしました。また、ウラジオストクのロシア国立極東歴史 文書館の所蔵フォンドについてのデータを、日ロ両語で検索できるようにしています。

このような、ウェブサイトを通じた情報発信について、今後の展開が決まっているわけで はありませんが、担当者としては、機会を捉えて推進していきたいと考えています。

[兎内]

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