スラブ研究センターニュース 季刊 2010 年冬号 No.120 index

研究の最前線


アムール・オホーツクコンソーシアムの設立

11 月7 ~ 8 日に、北海道大学「サ ステナビリティ・ウィーク2009」 の一環として、国際シンポジウム 「オホーツク海の環境保全に向けた 日中露の取り組みにむけて」が開 催されました。このシンポジウム は、北海道大学低温科学研究所環 オホーツク観測研究センターを中 心に、スラブ研究センターなど、 いくつかの機関の協力によって組 織されたものです(注1)。オホーツ クの環境保全に関する国際会議は、 2006 年頃から日ロ、日中などの枠 組みで様々な形で開かれてきました(注2)。今回は、ロシアと中国から多くの研究者が参加し て、真に3 ヵ国の国際シンポになったことが最大の特徴でした。そして、このシンポジウム での議論を受けて、シンポジウムの最後に出された共同声明(注3)により、将来のアムール・ オホーツク地域の持続可能性をより深く議論するための国際的な科学者ネットワークとして、 「アムール・オホーツクコンソーシアム」が設立されたことが最大の収穫でした。 

会場の前に参加者集合
会場の前に参加者集合

シンポジウムでは、これまでの低温科学研究所、総合地球環境学研究所などでおこなわれ た研究成果に基づき、漁業の生産性を考えると、オホーツク海が太平洋にとって心臓の役割 を果たしていることが示され、さらに、そのオホーツク海にとってアムール川からの流入が 極めて重要な機能を果たしていることが示されました。オホーツク海とアムール川の関係は 「巨大魚付林」と呼ぶべきものであり、1 つのシステムとして守られるべきものであることが いくつかの報告で強調されました。

シンポジウムでは、このような研究や調査が日ロ、中ロ、日中の間で近年著しく進展して いること、とくに、冷戦が終結し、中ロの国境問題が解決したことが契機となっていること なども示されました。上記のコンソーシアムの設立もこのような国際関係の改善に負うとこ ろが大きいと言えます。

採択された「オホーツク海とその周辺地域の環境保全にむけた研究者による共同声明」には、 コンソーシアムの会合を2 年に一度開催し、意見交換をおこなうこと、今回の会合を第1 回 の会合と位置づけ、第2 回の会合を2011 年に札幌で開催することが盛り込まれました。また、 暫定的な事務局を低温科学研究所環オホーツク観測センターに置き、暫定的な参加国幹事を 江淵直人氏(低温科学研究センター)、ピョートル・バクラノフ氏(ロシア科学アカデミー極 東支部太平洋地理学研究所)、笪志剛氏(黒龍江省社会科学院東北アジア研究所)とすること も盛り込まれました。環オホーツクの環境保全に関する研究の進展において歴史的な意義を 有する国際会議になったと思われます。

注1)このほかの主催者は、総合地球環境学研究所、北見工業大学未利用エネルギー研究センター、国 土交通省北海道開発局、国際科学技術センター、北海道大学「持続可能な開発」国際戦略本部。共催は 文部科学省。
注2)これまでにおこなわれた環オホーツク海国際シンポジウムは次のとおり。第1 回「豊かな漁業資 源を有するオホーツク海をまもる国際連携のあり方」(2006 年2 月27 日)。第2 回「氷海域を囲む周辺地 域の持続可能な開発に向けて」(2007 年1 月23 日)。第3 回「北海道とロシア極東地域との経済および環 境面における交流の拡大に向けて」(2008 年1 月30 日)。特別編「北海道とロシア極東地域の持続可能な 開発に向けた環境フォーラム(北海道洞爺湖サミット記念環境総合展)(2008 年6 月19 日)。第4 回「環 境と水産資源の持続可能性:中国と北海道の研究協力に向けて」(2009 年3 月24 日)。
注3)共同声明の全文は下記サイトにあります。
http://src-h.slav.hokudai.ac.jp/center/essay/20091116tabata_j.html
[田畑]

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