スラブ研究センターニュース 季刊 2010 年春号 No.121 index

図書室だより


ニコライ・ラッセル、および日露戦争捕虜関係史料を見いだす

最近、少しずつではありますが、マイクロ資料の遡及入力を進めております。2000 年のは じめに購入した、社会革命党関係文書のフィルム146 巻も、そうして最近、遡及入力したも ののひとつです。

マイクロ資料には、内訳の概要を示すガイドブックが付属し、どこが何の部分かわかるよ うに、各ファイルの要所には目印となるものを写してあるのがふつうですが、実はこの資料 にはそういうものがほとんどありません。書店を通じてガイドブックを請求したものの、な しのつぶてで、購入したものの内容をよく把握できないまま過ごしていました。しかし、い つまでもこれでいい筈がありません。原資料を持つオランダの国際社会史研究所のワーキン グ・ペーパーとしてInventory が出版されていることはわかっていましたので、この際、持っ ているところから借用させていただこう、とILL を申し込みましたところ、不明本のため提 供できないとのことです。

ならばとりあえず、書誌レコードだけでも登録しましょう、参考までにOCLC データを見 ると、最終巻にInventory を収録する旨、注記がありました!実際、その通りです。なんの ことはない。捜しものは、実はすぐそばにあったのです。

このInventory は、ごく簡略なつくりです。個々の文書のレベルではなく、ファイルのレ ベルで、簡単な記述が与えられているだけです。おそらく、文書の内容が、たいへん雑多で あるため、これ以上詳細なものを作成するのは難しかったのでしょう。

これを通覧していくうちに、1917 年以前の党文書中、日本の項目があることが目にとまり ました。ここには14 のファイルが列挙されて、次のように記述されています。

Japan

フィルムを開けてみますと、ニコライ・ラッセル(1850-1930) と静岡収容所のブルガーコフ 大尉とのやりとりなどの書簡類に加えて、浜寺収容所で発行された捕虜向け新聞«Друг»、姫 路収容所で発行された«Пленник»、ラッセルが神戸で発行した«В плену»、長崎で発行した «Воля» の85 号から95 号まで、1907 年6 月にラッセルたちを「人民解放救援同盟」から除 名することを説明するパンフレットなどが、次々と出てきます。

ニコライ・ラッセルについては、和田春樹氏が1973 年に2 巻本の評伝を書かれた他、檜山 真一氏にも論文があります。また、ソ連解体後のロシアでは、1996 年から2001 年にかけて、 ロススペン社から4 巻本の社会革命党史料集が出ています。しかし、上記の文書については、 まだ利用された形跡がなく、社会革命党のロシア内外諸地域における活動を伝える史料とし て、そして日本に関してはラッセルやロシア人捕虜の活動を直接に伝える史料として、今後 の活用が期待されるように思われます。

[兎内]

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