スラブ研究センターニュース 季刊 2010 年夏号 No.122 index

新学術領域研究


SRC夏期国際シンポジウム開催される

7 月7 ~ 9 日、2010 年度センター夏期国際シンポジウム(新学術領域研究「ユーラシア地 域大国の比較研究」の第3 回国際シンポジウム)が予定通り開催されました。今回のシンポ ジウムは、上記新学術領域研究で ユーラシア地域大国の比較文化研 究「地域大国の文化的求心力と遠 心力」を遂行中のチーム(第6 班) を中心に組織されたものです(組 織委員長:望月哲男、事務局:越 野剛、後藤正憲、井上岳彦)。

会場のようす
会場のようす

シンポジウムの全体テーマは、 「Orient on Orient: Images of Asia in Eurasian Countries(ユーラシア 諸国におけるアジアの自己表象)」 とされ、「中国におけるサブカル チャー」、「アジアの表象I」、「アジ アの表象II」、「音楽における東と 西」、「宗教とイデオロギー」、「越境する作家たち」、「場所の精神」の7 セッションが設けら れました。報告者総数は21 名(うち外国人研究者14 名)で、パネリスト総数36 名という、 2 日半の催しとしては欲張りな企画でしたが、日本、中国、ロシア、インド、アメリカ、イ ギリス、ドイツ、スウェーデンなど、いろいろな国や地域でユーラシア文化研究をおこなっ ている専門家たちが研究対象地域、研究分野、方法論を越えて交流し、議論する中から、き わめて新鮮で刺激的な発見・知見を得ることができたように思います(総参加者116 名)。

とりわけ、1)ロシア・インド・中国というユーラシア地域大国における「アジア」意識の濃淡や、 「オリエンタリズム」概念への関心度の差、2)現代的なマイクロ・メディア環境における複製文 化・大衆文化の発達と呼応した文化の均質化、「アジア・イメージ」の商品化の問題、3)国民・ 民族表象とジェンダー表象や階層表象などとの複雑な相互関係、といった問題について、今回 の国際対話は有益な認識をもたらしてくれました。また、従来われわれの研究地図に入ってい なかった音楽のジャンルで、きわめて深いオリエンタリズム研究がなされていることも、新た な発見でした。

なお海外からのゲストを中心として、シンポジウムの後に京都と東京で関連プログラム「も うひとつのユーラシア」(7 月11 日同志社大学)、「FINDAS 研究会」(7 月14 日東京外語大本 郷サテライト)がそれぞれおこなわれました。

セッション3のようす
セッション3のようす

2010 年SRC 夏シンポジウム「ユーラシア諸国におけるアジアの自己表象」
日程:2010 年7 月7 日~ 9 日 場所:北海道大学スラブ研究センター大会議室(403 号室)
使用言語:英語

7 月7日(水)

プ レコンファレンス・セッション: 中 国におけるサブカルチャー
司会:
ディビッ ド・ ウルフ(スラブ研究センター)
1.
千野拓政 (早稲田大学)

「われわれはどこへ行くのか?―東アジ アの都市文化が共有する文化的変容、ならびに近代文化の誕生と終焉に ついて」
2.
雷啓立 (華東師範大学、中国)

「ミニメディア時代における文化=政治とポ スト80年代世代」
3.
 顧 錚 (復旦大学、中国)

「サブカルチャーから現代アートへ―中国のコ スプレ文化」
コメンテーター:
張英進 (カリフォルニア大学、サンディエゴ、アメリカ)

7 月8日(木)

オープニング

岩下明裕 (スラブ研究センター)

セッ ション1: ア ジアの表象Ⅰ
司会:
望月哲男(ス ラブ研究センター)
1.
S. V.シュリーニヴァース (バンガロール文化社会研究センター、インド)

「アジアを表象すること:インド 映画のブルース・リーから『チャンドニー・チョウク・トゥ・チャイナ』まで」
2.
 イ リーナ・メーリニコヴァ (同志社大学)

「ロシア映画におけるシベリ ア・極東の先住民のイメージ」
3.
張 英進 (カリフォルニア大学、サンディエゴ、アメリカ)

「中国、日本、ロシアの紛糾するイメー ジ―「パープル・サンセット」(2001)における風景と言語」
コメンテーター:
中村唯史 (山形大学)


セッ ション2 : ア ジアの表象Ⅱ
司会:
野町素己 (スラブ研究センター)
1.
 ア ンナ・フロルコフスカヤ (スリコフ芸術学院、ロシア芸術研究アカデミー)

「1960-1980年 代モスクワ反体制派芸術における東洋の精神」
2.
  応雄 (北海道大学)

「《アジア》の生成―中国の大 衆劇『白毛女』の翻案におけるプロパガンダ/誘惑、物語/踊り」
3.
 冨 澤かな (東京大学)

「共感と偏見―18世紀末イギリ ス「オリエンタリスト」のインド観とその多面性」
コメンテーター:
乗松亨平 (東京大学)


セッ ション3 : 音 楽における東と西
司会:
杉本良男 (国立民族博物館)
1.
  井上貴子 (大東文化大学)

「1800年頃の南インドにおける西洋 音楽の受容」
2.
ベネット・ ゾン (ダーラム大学、イギリス)

「19世紀イギリスにおける非西洋(アジ ア)音楽の表象」
3.
  梅津紀雄(工学院大学)

「ロシア音楽における東洋的要素と西 洋によるその受容」
コメンテーター:
 伊 東信宏 (大阪大学)

7 月9日(金)

セッ ション4 :
宗 教とイデオロギー
司会:
松里公孝 (スラブ研究センター)
1.
  リュドミーラ・ジューコヴァ (ロシア人文大学)

「現代ロシアにおける宗教とイデオ ロギー」
2.
エリック・ シッケタンツ (東京大学)

「明治大正期の日 本人仏教徒が見た中国の仏教」
3.
住家正芳 (スラブ研究センター)

「百年前の旅行者―梁啓超と新渡戸稲 造の社会進化論的な目線」
コメンテーター:
ヴァジム・ ジダーノフ (フリードリヒ・アレクサンダー大学、ドイツ)


セッ ション5 :
越 境する作家たち
司会:
越野剛 (スラブ研究センター)
1.
リサ=リョ ウコ・ワカミヤ (フロリダ州立大学、アメリカ)

「トランスナショナルな 観点から 見たロシア系アメリカ人の文学」2010.7.5 Revised
2.
小松久恵 (スラブ研究センター)

「'desi'について語る―現代 インド系英国人作家にみる帰属意識」
3.
杉山直子 (日本女子大)

「役に立つ過去・口に出せない秘 密――M.H.キングストンの女武者」
コメンテーター:
毛利公美 (一橋大学)


セッ ション6 : 場 所の精神
司会:
宇山智彦 (スラブ研究センター)
1.
エルザ=バ イル・グチノヴァ (ロシア科学アカデミー民族学人類学研究所)

「ソヴィエト後のエリスタ―ソ ヴィエト連邦から東洋へ」
2.
ツプルマ・ ダリエヴァ (筑波大学)

「場所を作る―東洋とヨーロッパの 間のバクー・プロムナード」
3.
マーク・ バッシン (セーデルテルン大学バルト東欧研究センター、スウェーデン)

「地理の不確定性―ロシア・ヨーロッ パ・アジアに関する四つの見解」
コメンテーター:
浜由樹子 (津田塾大学)
高橋沙奈美 (北海道大学)

[望月]

→続きを読む
スラブ研究センターニュース No.122 index