スラブ研究センターニュース 季刊 2010 年秋号 No.123 index

研究の最前線


専任研究員セミナー

ニュース前号以降、専任セミナーが以下のように開催されました。

10 月27 日:松里公孝「正教世界の一部としてのロシア正教会」
センター外コメンテータ:塚田力(北海道大学文学研究科)

松里研究員は研究の一つの柱として「宗教」を掲げていますが、センターでは長縄研究員 がロシアのイスラムを研究テーマにしています。世界的に見て宗教は重要な研究テーマです が、スラブ・ユーラシア研究でも宗教への関心が近年高まっています。長縄研究員も松里研 究員もその先頭を走っている集団の中にいます。松里研究員の今回の論文は、ロシア正教会 について一般に流布している観念「皇帝教皇主義」や「第三のローマ」説を批判的に吟味し、 これらがロシア正教会の教義としては根拠がないことを示しました。論文は更に進んで、民 族教会説に対しても、実体としては世俗国家やその国境と正教会の管轄地域が一致しないこ とを示しました。

セミナーでは教義上の問題と実践的な正教会の役割のずれ、あるいは正教会の民族を超え た帝国性がどこまで主張できるのかなどについて活発な議論がおこなわれました。今回の論 文はこれまで松里研究員が手掛けてきた欧文での雑誌論文スタイルで書かれたものではなく、 今後公刊が予定される日本語での啓蒙書の分担執筆分です。スラブ・ユーラシア地域の宗教 について新しい視点から描かれた概説書が店頭に並ぶのを期待しましょう。

[家田]

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