スラブ研究センターニュース 季刊 2011 年冬号No.124 index

グローバルCOE

GCOE・SRC 2010 年度冬期国際シンポジウム
地域を融かす境界研究:ユーラシアと「愉快」な仲間たち開催される

12 月4 日、GCOE 主催による第 2 回冬期国際シンポジウム「地域を 融かす境界研究:ユーラシアと『愉 快』な仲間たち」が開催されました。 シンポジウム自体は一日限りです が、前後に、若手ワークショップ(12 月3 日)と笹川平和財団助成セミ ナー「日本のボーダー・世界のま なざし~境界研究ネットワークの 立ち上げに向けて」 (12 月6 日、東 京)があり、GCOE イベント全体 としては長期的なものとなりまし た。

報告するD. ニューマン氏(ベン・グリオン大)
報告するD. ニューマン氏(ベン・グリオン大)

冬期シンポジウムの第1 セッショ ン「グローバル・コミュニティの 形成にむけて:中東・欧州・北米の経験」では、国際的な境界研究コミュニティの重鎮達に よる「境界」概念の理論的な報告がなされました。次に恒例となったランチオン・セミナー を挟み、第2 セッション「国際社会学との遭遇:難民・移民・マイノリティ」では、GCOE プログラム事業推進員である樽本英樹氏(北大、文学研究科)が組織したイギリス在住の研 究者達による移民問題に焦点をあてた報告がありました。移民問題は、境界研究の中でも最 も活発な分野の一つとなっています。第3 セッション「政治地理学の視座:バルカン・中央 アジア・沖縄」は我が国で軽視されてきた「政治地理学」から見た各境界地域に関するセッ ションです。特に中央アジアについての報告は、スラブ研究センターと馴染みあることもあり、 討論者の宇山智彦氏をはじめ会場から鋭いコメントが出され、白熱した議論が展開されまし た。なお、沖縄問題を論じた山﨑孝史氏(大阪市立大)は、日本の政治地理学の第一人者です。

シンポジウムの前日におこなわれたプレ・シンポでは、内外の若手境界研究者達による報 告が6 本並びました。テーマの広がりや手法の多彩さは、境界研究の長所でもあり短所でも あるのですが、シンポジウムに招待した重鎮達がコメントに立つことにより、短所の克服が ある程度なされたと考えています。いずれにせよ、個別テーマの報告と同時に理論的なセッ ションを並行しておこなうことが、今後も不可欠であると思われます。

「日本のボーダー・世界のまなざし~境界研究ネットワークの立ち上げに向けて」は第一部 では「国境フォーラム」に関連した日本の境界地域の問題について国内研究者および関連自 治体関係者による報告がなされ、第二部では、冬期シンポジウムで招待した研究者が、自分 の事例から境界をめぐる係争と管理を紹介しました。会場には、公館関係者やシンクタンク からの研究者が多く集まり、全般を通じて境界と国家安全保障とを関連付けた質問が多く出 されました。

なお、札幌の冬期シンポジウムと東京でのセミナーは、ともに日英同時通訳が設けられ、 一般にも広く開放されました。

[藤森]

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