スラブ研究センターニュース 季刊 2011 年夏号No.126 index

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「境界地域研究ネットワーク JAPAN 与那国・台湾セミナー」開催される

境界地域研究ネットワーク
境界地域研究ネット ワーク
JAPAN・台湾セミナーの模様
 2011年5月14日(金)に与那国町保健センターにおいて開催されました。これは北大グローバル COEプログラム「境界研究の拠点形成」が主催し、笹川平和財団の助成、与那国町・日本島嶼学会の共催を受けており、さまざまな境界地域に関わる錚々たる 参加者が、日本最西端の島・与那国島に集まりました。(以下・敬称略)
 完成したばかりの DVD「知られざる国境の島対馬/国境フォーラム IN 対馬 2010」の上映会のあと、「境界の現場から」と題する基調報告が拠点リーダー岩下明裕(スラブ研)の司会でおこなわれました。報告は財部能成(対馬市 長)・外間守吉(与那国町長)・石垣雅敏(根室市副市長)の順でおこなわれ、それぞれの境界地域が抱える課題と、それを克服するための対策が論じられまし た。
「与那国エトピリカ文庫」開設セレモニー
与 那国エトピリカ文庫」開設セレモニー
 続く第1部では 「国境地域法制の再検討」と題し、古川浩司(中京大学准教授)の司会で、境界地域の行政担当者が現場で感じる課題や法制のありかたが論じられました。根室 市、小笠原村、五島市、竹富町の行政実務者がそれぞれの地域の現状が、渡邊東(日本離島センター専務理事)・槌谷裕司(内閣府大臣官房審議官)の両氏から は行政側の視点から離島行政の展望が報告されました。
 第2部は「超広域経済圏の行方」と題し、引き続き古川准教授の司会により、国境を越えた経済交流の現状と課題が議論されました。加峯隆義(九州経済調査 協会調査研究部次 長)からは福岡・釜山における広域経済圏について、佐藤秀志(稚内市サハリン課)と今村光壹(稚内商工会議所)からは、稚内・サハリンにおける経済交流に ついて、小嶺長典(与那国町)からは与那国と台湾東部の交流の現状についてそれぞれ報告され、第1部に続いて槌谷氏が、沖縄の自由貿易地域制 度の現状と課題について、そのあらましを論じました。
与那国・花蓮チャーター便運行
与 那国・花蓮チャーター便運行
 質疑応答の席上では、与那国への自衛隊誘致の是非や防空識別圏の変更といった問題も俎上にのり、緊張 感の漂う瞬間もありました。続いて開催された懇親会では、与那国町職員さんの手料理の数々がふるまわれ、町民のみなさんの民謡と踊りが雰囲気を大いに盛り 上げてくれました。
 与那国においては、同時に「与那国エトピリカ文庫」の開設を祝うセレモニーも開催されました。エトピリカ文庫とは、『北方領土問題:4でも0でも2でも なく』(中公新書)により第 6回大佛次郎論壇賞(2006年:朝日新聞社)を受賞した岩下が、根室市におこなった寄付をもとに、2007年に北海道立北方四島交流センター「ニ・ホ・ ロ」に設置された文庫 です。与那国エトピリカ文庫は、根室・札幌・対馬に続く 4番目の文庫であり、与那国や沖縄の郷土研究資料なども多数含まれています。
 セミナーの参加者は、続いて台湾セミナーに参加するため、与那国から花蓮へとチャーター便で移動しました。このチャーター便は、沖縄本土復帰記念日にあ たる 5月15日に、与那国・台湾でのセミナー開催を記念して運行されました。台湾の復興航空による同便には、外間与那国町長に加え、中山石垣市長・川満竹富町 長が同乗しました。同便が与那国空港を飛び立つ前に式典が執りおこなわれ、チャーター便の運航を祝いました。
 花蓮に到着したセミナー参加者は、花蓮空港にて田智宣花蓮市長、花蓮市政府のみなさんの温かな歓迎を受けた後、花蓮でのセミナー会場である美侖大飯店に 移して「境界地域研究ネットワーク JAPAN・台湾セミナー」が開催されました。席上では、前日に続き外間・財部・石垣・今村各氏の報告があったほか、浅井利眞(与那国町・久部良小学校 長)と松田良孝(八重山毎日新聞記者)の両氏によって、教育と報道の視点からの報告がなされました。続く懇親会の席上でも、与那国町に続き、花蓮市政府の みなさんの心からの歓迎を受け、参加者一同はまたまた時間を忘れての歓談となりました。

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