スラブ研究センターニュース 季刊 2011 年秋号No.127 index

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岩下明裕編著『日本の国境・いかにこの「呪縛」を解くか』の受賞

受賞式で
 スラブ研究センター教授岩下明裕編著 の論文集『日本の国境・いかにこの「呪 縛」を解くか』(北大出版会、2010 年)が、 このたび第24 回地方出版文化功労賞を 受賞しました。 同書は岩下教授をリーダーとして進行中のグローバルCOE プログラム「境界研究の拠点形成」の最初の成果として出版されたものです。海洋国家日本の実像 を国境という観点から解明するというコンセプトで、北方領土、対馬、小笠原、与那国等々の「辺境」が提起する様々な問いを、国家の本質的な成り立ちの問題と捉えなおし、読者の発想の転換を促す ような内容になっています。 地方出版文化功労賞は、地方出版の意義をアピールするとともに、「本の国体」を目指す試みの一環とも位置づけられています。今回の賞は、2010 年10 月22 日から10 月27 日、鳥取 県立図書館で開かれた「ブックインとっとり2010」に出品展示された全国の地方出版物の中から選ばれたもので、「タイムリーなテーマだが、偏りや扇動を感じさせる本が多い中で冷静 に整理・提案されている」ことが授賞理由とされています(『北海道新聞』2011 年7 月15 日付)。今回の受賞は、グローバルCOE プログラムの目指す境界研究(ボーダースタディーズ)が 日本各地に浸透し始めているなによりの証ともいえ、執筆者の多くが「境界地域研究ネットワークJAPAN」の設立に向けて活動する主要メンバーであることを考えれば、今後の展開に 大きな励みとなるに違いありません。 なおこの受賞を記念して、10 月10 日には北大総合博物館で「日本の境界:危機と岐路」と題する催しがおこなわれ、グローバルCOE 研究の作成した「対馬」「八重山」に関する 授賞式でDVD 上映と、同書の共著者の方々(黒岩幸子(岩手県立大学)佐藤由紀(早稲田大学)長嶋俊介(鹿児島大学)原貴美恵(ウォータールー大学)古川浩司(中京大学)山上博信(日本 島嶼学会)山田吉彦(東海大学)ほか敬称略)によるシンポジウムがおこなわれました。[望月]

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サマースクール開かれる

講義の様子
スラブ研究センターにおいて、グローバルCOE プログラム「境界研究の拠点形成」が主催する「境界研究」サマースクールが8 月1 日(月)から8 月8 日(月)にわたり開講されました。昨年に引き続き開講された本教育プログラムは、大学院共通授業科目「境界研 究III・IV」を兼ねており、国内外から様々な地域や分野を研究する専門家を講師として招き、英語による講義を通じて境界研究の多様 な事象を紹介するというものです。今年度は、北東アジア、中央ユーラシア、中東欧、中東などの地域における境界問題と、それにまつわる民族、言語、出入国 管理、エネルギー、環境などの諸問題がテーマとして設定されました。30 名余りの履修者には、北大内の院生のみならず、海外(バングラディシュ、インド、中 国、フィンランド、カナダ、モザンビーク、スペイン、ドイツ、ロシア、エストニア、カザフスタン)国籍の若手研究者が含まれており、連日、講師との間で活発な質疑応 答が交わされました。
履修者・講師の集合写真
 また、若手研究者が自らの研究内容を英語でプレゼンテーションする機会も設けられました。特に、IBRU(ダーラム大学)、カレリア研究所(ヨエ ンスー大学)といった国際的な境界研究機関から来た研究者による報告は非常にレベルが高いものでした。 また、フィールドワークでは根室市、知床・羅臼町を訪問し、北方領土問題や「国境の街」根室、世界自然遺産についても理解を深めていただきました。 講義最終日には修了証書も授与され、学内履修者にとっては英語での講義と討論のスキルアップの機会に、そして海外から参加した若手研究者にとっては、日頃馴染みのない新たな 境界問題に触れ、日本の学生との交流を深めるまたとない機会になったようです。[花松]


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GCOE 冬期国際シンポジウム他の日程

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 11 月25 日(金)
若手ワークショップ(使用言語: 英語)
 会場:北海道大学スラブ研究センター大会議室  
主催:北海道大学グローバルCOE プログラム「境界研究の拠点形成」  
   <プログラム>
 13:30–15:00   Panel 1「東南アジアにおける水と境界」
    神頭成禎(佛教大)“The relationship between chronicles about Batara Indra and climate change in Indonesia- Consciousness to the blessing of the water by Balinese across time” 峯田史郎(早稲田大)“Politics of Scale in the Water Security: Impact from China in Greater Mekong Sub-region” 
15:15–16:45  Panel 2「ヨーロッパにおける跨境問題」
     土井康裕(名古屋大)“Case Study of Cross-Border
Labors: Tri-national Border Region: Oberrhein” Jussi Laine (Karelian Institute,
University of Eastern Finland)“Seeing Like a Border? Conceptualizing a
Cross-Border Space for Social Contracting through Civil Society Organizations”
17:00–18:30     GCOE DVD 上映会“ Indigenous Peoples and Borders” 解説:水谷裕佳(北大、アイヌ先住民研究センター)
11 月26 日(土)
国際シンポジウム「世界と日本のネットワークを紡ぐ」(日英同時通訳付)  
会場:北海道大学スラブ研究センター大会議室  
主催:北海道大学グローバルCOE プログラム「境界研究の拠点形成」     
境界地域研究ネットワークJAPAN 準備委員会
  <プログラム>
9:00–11:00    基調講演「国際コミュニティとの邂逅 パート3」
Tony Payan (University of Texas at El Paso) “North American Borders: The Legacy of the Past and the Burden of the Future” James Scott (University of Eastern Finland) “Observations on European Border Studies: The Concept of Bordering in Theoretical and Practical Terms” 討論者:Jussi Laine (Karelian Institute, University of Eastern Finland);川久保 文紀(中央学院大)
11:00–12:00    ミュージアム・ツアー 北大総合博物館 第6 期「越境するイメージ:中国」ほか
12:00–13:20    ランチオン・セミナー 石川登(京都大)“Between Frontiers: Nation and Identity in a Southeast Asian Borderland”
13:20-15:40     セッション1「東南アジア境界地域における開発問題」 Carl Middleton (Chulalongkorn University) “Conflict, Cooperation and the Transborder Commons: The Controversy of Mainstream Dams on the Mekong River” Duncan McDuie-Ra (University of New South Wales) “Beyond Greed and Grievance: the Northeast borderland in contemporary India” Sorin Sok (Cambodian Institute for Cooperation and Peace) “Cambodia’s Border with Neighboring Countries with Engagement from Power Countries” 討論者:石川登(京都大)
16:00–18:20    セッション2「境界化された空間:エルサレム、モスタル、アイルランド、沖縄」 Emily Makas (The University of North Carolina at Charlotte) “The Boulevard and the Central Zone: Divided Mostar’s Border Lines and Spaces” Stephen Royle (Queen’s University Belfast) “Divided islands: the case of Ireland” 屋良朝博( 沖縄タイムス)“Exploring Solutions to the U.S. Military-Base Issues in Okinawa” 討論者:仙石学(西南学院大)
19:00–    レセプション(札幌アスペンホテル)
11月27日(日)
境界地域研究ネットワーク JAPAN(JIBSN)設立大会
主催:スラブ研究センター;北海道大学グローバルCOE プログラム「境界研究の拠点形成」
<プログラム>  
9:00–13:00    実務会議:ネットワークについての最終調整 実務経験交流集会 会場:スラブ研究センター大会議室
14:00–16:15    JIBSN 設立特別企画「激論 北方領土問題 現場からの眼差し」(日英同時通訳) 会場:札幌エルプラザ
     北方領土問題が「危機」的な状況を迎えている。これまで様々な放送局が特番や討論番 組をプロデュースしているが、政府交渉の経緯を追ったおのが多く、現地の声や根室か らのイニシャティブを踏まえて制作されたものはあまりない。本企画では、札幌を始め とする北海道民にもまた知られていない、北方領土隣接地域(根室管内)や元島民らの 「闘い」の歴史を振り返るとともに、これらローカル・イニシャティブのあり方を検証す ることで討論を行う。なお討論の模様は後日Ustream などで配信予定。 司会:中村美彦(フリージャーナリスト、HBC 一筆啓上・無頼放談キャスター) 予定パネリスト:岩下明裕(北大スラブ研究センター・討論コーディネーター); 石垣雅敏(根室市副市長);本田良一(北海道新聞編集委員);本間浩昭(毎日 新聞報道部根室記者);金平茂紀(TBS)他
16:30–17:00     境界地域研究ネットワークJAPAN 設立セレモニー
18:00–     設立記念レセプション

 

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