スラブ研究センターニュース 季刊 2012 年冬号No.128 index

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◆ 冬期国際シンポジウムの開催 ◆

  11 月26 日、北大グローバルCOE プログラム「境界研究の拠点形成」は、スラブ研究センターと共同して冬期国際シンポジウムを 開催しました。
国際シンポジウム参加者: 北大総合博物館入口で
GCOE 主催としては3 回目となる本シンポジウムは、岩下拠点リーダーによる基調演説に続き、例年通り冒頭に理論セッ ションを置き、地域・テーマ別に「東南アジア地域の境界と開発」、「分断された空間」セッションという構成になりました。理論セッショ ンでは、北米から、トニー・パヤン氏、ヨーロッパからはジェームス・スコット氏という、世界の境界研究をリードする研究者をお招きしました。北米は米墨(合 衆国/ メキシコ)、米加(合衆国/ カナダ)という、境界研究が最も注目する国境を抱えており、またヨーロッパはEU 統合により、境界が新たに引き直されて いる地域です。両氏とも、個別の事例紹介にとどまっていて、理論や比較を考慮しない従来の「境界研究」を鋭く批判しました。続く「東 南アジアにおける境界と開発」セッションでは、英語圏の研究者によるメコン川のダム問題、インド北東部の人口移動問題の報告がおこ なわれました。いずれも詳細な現地調査に基づき、情報豊富な、現場の空気が伝わってくるような報告となりました。
「激論 北方領土問題」のもよう
 また、「分断された空間セッション」では、エルサレム、モスタル(ボスニア・ヘルツェゴビナ)、 アイルランド、沖縄についてそれぞれの専門家が報告をおこないました。エルサレムについては、報告者のヤコビ氏が家族の事情で不参加となり、今野泰三氏(大阪市立大学)が自ら の研究を元にして、エルサレム市内の分断の模様を報告しました。モスタルの報告では建築学の観点から、アイルランドは長い分断の歴史から、沖縄は近年の海兵隊基地移設問題 の観点から報告がなされました。一方で、討論者からは、世界中の同様の現象と比較するた めの拠り所や手法を考慮すべきではないか、とのコメントが出されました。こうした議論は、 比較政治学からの地域研究に対する批判と似ており、地域研究を生業とするスラブ研究セン ターにとっても意味あるものでした。シンポジウムでは日英同時通訳が提供され、一般市民 も境界研究の議論に聞き入っていました。 シンポジウムの翌27 日には、本GCOE 主催により、中村美彦氏(フリージャーナリスト) を司会に、金平茂紀氏(TBS キャスター)らをパネリストに据えた公開討論会「激論 北方 領土問題 現場からの眼差し」が札幌エルプラザ内ホールで開かれ、150 名余りの市民が、 ロシアと根室の事情に精通した専門家達による討論に耳を傾けました。 また、シンポジウム開催と併せて、25 日には若手研究者によるプレ・シンポジウムが、27 日には境界地域研究ネットワークJAPAN(JIBSN)設立のための実務者会議が開かれました。 [藤森]
 

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