スラブ研究センターニュース 季刊 2012年秋号No.131 index

図書室だより

◆ 『中国少数民族旧期刊行集成』の購入 ◆

 本叢書は、1949年以前の清末民初の中国において出版された、いわゆる少数民族関係の雑誌を収集、復刻したものです。 収録された雑誌は、モンゴルをはじめ、チベット、ウイグル、満州、そして苗などの雲南・貴州省の諸民族にいたる、当時中華民国勢力下にあった漢民族以外の民族に関するもので、 77種に及び、その内容は政治、経済、宗教、軍事、教育、地理等多岐に亘っています。 叢書全体は全100冊の構成となっていますが、北京、南京、広東、四川、新疆、内蒙古など、出版地別に22巻に分けられており、例えば北京巻は計24冊あり、 『蔵文白話報』や『回文白話報』など、21種の雑誌が収録されています。
言うまでもなく、これらの雑誌が発行されたのは中国の激動の時代であり、これらはその時代の様相をリアルに伝える資料として非常に価値の高いものだと思われます。 しかし、その時期の中国は、各地で戦闘が頻発するような時代状況であったことに加え、これらの資料の大部分は、発行部数が少なく、また発行期間も短かったのが事実です。 そのため、散逸したもの、所在不明のものも多く、現時点での利用、特に通時的な参照は、事実上不可能に近い場合が多々あります。第一巻冒頭の「出版説明」において、 出版者である中華書局の編輯部は、本叢書所収の資料の検索・収集作業に非常な困難があったと述べていますが、それはそのまま、当該期を対象とする、 現在の研究者の困難でもあると思われます。従ってこの点で、本叢書が近代の東アジア研究をはじめとする多様な分野に提供する便宜は、決して小さくないと言えるでしょう。
 例えば、第25冊所収の『西陲宣化使公署月刊』は、1935年5月に創刊され、1937年5月まで発行された、「西陲宣化使」事務局の機関誌です。 「西陲宣化使」は、民国政府が主にモンゴル地域の人心安定を図るため、チベット第二の活仏パンチェンラマの活用を意図して同ラマに与えた称号で、 「公署」すなわちその事務局は、民国政府行政院の管轄下におかれました。その活動については現在までほとんど知られておらず、同資料はその点で、 その詳細を具体的に見ることができる貴重な価値を持つものであると言えます。
 最後に、スラブ研究センターがこの春、本叢書を購入した際、新学術領域研究「ユーラシア地域大国の比較研究」第4班(帝国論)、 およびグローバルCOE「境界研究の拠点形成」の経費が使用されたことを付記いたします。
[高本]


◆ 『農業と林業Сельское хозяйство и лесоводство』の購入 ◆

 センター図書室は、昨年度末、帝政ロシアの国有財産省が1865年に発刊した上記月刊誌の創刊から1913年までをカバーするマイクロフィッシュ、約2000枚を購入しました。(なお、同省はその後、1894年に農業・国有財産省に、1905年には土地整理・農業総局に改組されましたが、雑誌は同じタイトルで継続して発行されました。)
内容を見ると、技術的な内容とともに経営や行政、農業教育等の問題がとりあげられ、文献紹介や外国の農業事情紹介にも相当の紙幅を割いています。
誌面には、ロシア帝国各地の多様な環境のもとで営まれた、さまざまな作物や家畜に関する記事が掲載されており、当時の農林業の実態に関する基本的な資料として活用されることが期待されます。
センターが今回購入したセットは、現在、附属図書館において整理待ちの状況ですが、必要な場合は、利用できるように対応します。
[兎内]


◆ サハリンの古地図画像の公開 ◆

 図書室では、センターの所蔵するロシアの地図帳2点を中心に、所蔵する画像資料およびウラジオストクの極東国立歴史文書館の所蔵資料情報を、 ウェブサイトにて公開していますが(センターニュース118号、2009年8月参照)、この9月に、サハリン関係の若干の地図画像をこれに追加し、 あわせてデザインをリニューアルすることができましたので、お知らせします。 追加された地図画像は、幕末に岡本監輔らが製作したサハリン全島図、日露戦争直後のコルサコフ(大泊)、および、 シベリア極東内戦期に日本が保障占領していた時期のアレクサンドロフスクの市街図で、 これらは画面上に表示させるだけでなく、データをダウンロードすることも可能です。 なお、このデジタル画像製作とウェブサイトへの組み込みにあたっては、本学メディア・コミュニケーション研究院のスヴェトラーナ・パイチャゼさんが代表を務める科研費プロジェクト (基盤研究B)「北海道多文化共生におけるサハリンからの移住者の役割」(2011-2013年度)の支援をいただきました。関係者のみなさまにお礼申し上げます。
[兎内]


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