スラブ研究センターニュース 季刊 2013年冬号No.132 index

図書室だより

◆『東洋学院紀要Известия Восточного института』◆
のマイクロフィッシュ購入

 帝政ロシアが1899 年にウラジオストクに設置した東洋学院Восточный институт は、当時の極東ロシアにおいて唯一の高等教育機関であり、中国学、日本学、朝鮮学、モンゴル学 等、東洋学研究の振興と研究者・実務家の養成に大きな貢献をしました。その後、1920年に極東総合大学Дальневосточный государственный университет に改組、1939 年には 一旦閉鎖されましたが、1956 年に再興され、2010 年には極東連邦大学Дальневосточный федеральный университет に改組されて現在に至っています。ロシア極東部では、最大かつ最高レベルの高等教育機関です。
 東洋学院は、創立当初の1899 年に紀要の刊行を開始し、1922 年までに66 巻が刊行されました。ここには、東洋学院の教授陣や学生の著作および東洋学院の活動報告が収められ、ロ シアのアジア研究を見るうえで欠かすことのできない資料と言えます。
 北海道大学には、この紀要の現物の一部、および米国議会図書館資料から作成したマイクロフィルムがありましたが、欠けている部分が多く、全体の把握は容易でありませんでした。 昨年度の末近くに購入したIDC 社製作のマイクロフィッシュは、一部に欠があるものの、創刊から61 巻(1916 年刊) までがほぼ揃っていて、北大にはいまさらという感もありますが、 今後の極東ロシア史研究の発展に貢献してくれるものと期待しています。
 なお、国内では、阪大外国語学図書館と東洋文庫にある程度まとまった量の原本があるほか、同じく阪大総合図書館、早大戸山図書館に、マイクロフィルムまたはマイクロフィッシュが あり、それぞれ1 巻から66 巻までをカバーしているもようです。
[兎内]

◆歴史評論Историческое обозрение』◆
のマイクロフィッシュ購入

 『歴史評論Историческое обозрение』誌は、ペテルブルク大学歴史協会の会誌として、1890 年から1916 年まで不定期で21 巻までが刊行された歴史学論集です。フランス革命史の 研究者として著名であり、前年の1889 年に設立されたペテルブルク大学歴史協会の会長だったニコライ・カレーエフ(1850-1931) が、創刊から終刊まで編集長を務めました。協会の性格 を反映してか、西欧史や歴史理論に関する論文の比重が大きいように思われます。
  なお、この資料を所蔵する機関は、国内には他に確認できません。
[兎内]

◆『帝室正教パレスチナ協会会報◆
Сообщения Императорского православного палестинского общества』 のマイクロフィッシュ購入

 帝室正教パレスチナ協会Императорское православное палестинское общество は、 1882 年に設立されました。その活動の中心は、ロシアからの聖地巡礼者を援助するとともに、現地の学術研究をおこなうことですが、その初代総裁にはセルゲイ・アレクサンドロヴィチ 大公(1857-1905)が就き、会の規約は、皇帝アレクサンドル三世に裁可されたことが示すよ うに、ロシア革命で帝政が倒れるまでは少なくとも、ロシア政府の後援を得て、パレスチナ にロシアのプレゼンスを示す組織でもありました(ロシア革命後は、政府の後ろ盾を失い、 分裂するなどのことがありましたが、それについては割愛いたします)。
  帝政ロシア時代の正教パレスチナ協会の出版する定期刊行物としては、『正教パレスチナ論 集Православный палестинский сборник』と、『帝室正教パレスチナ協会会報Сообщения Императорского православного палестинского общества』を挙げることができます。北 海道大学は、前者の多くの部分を現物で所蔵する他、別途マイクロフィッシュも購入してお り、1881 年の創刊から1914 年の第61 巻までが利用可能となっていますが、後者については 所蔵がなく、昨年になってようやく、1886 年の創刊から1926 年刊の第29 巻までのマイクロ フィッシュを購入することができました。これによって、19 世紀後半から20 世紀初頭にか けて、ロシアと中近東地域との関係について研究するさまざまな手掛かりが得られるものと 期待しています。この資料の、国内他機関の所蔵は、確認できていません。
 なお、この協会の活動については、А.А. ドミトリエフスキーが書いたその25 年史 Императорское Православное Палестинское общество и его деятельность за истекшую четверть века, 1882-1907 (СПб., 1907 年)があり、2008 年に再刊されている他、最近では、 昨年刊行された『正教パレスチナ論集』第108 号が、協会創立130 周年記念号として、協会 の歴史を振り返る内容であることを付記します。

 なお、今回紹介した3 点の資料は、いずれも、現在、附属図書館で整理待ちの状態ですが、必 要な場合には利用できるようにいたしますので、お手数ながら図書室までご連絡ください。
[兎内]

→続きを読む
スラブ研究センターニュース No.132 index