いち訪問者の印象


オレグ・ボゴモーロフ
(ロシア科学アカデミー国際経済・政治研究所/センターCOE外国人研究員として97年10から滞在中)

        私にとって、札幌での経験は、全く思いがけない新しい発見であった。札幌という都市でかつて冬季オリンピックが開かれたというのは知っていたが、この町がこんなに大きな都会で、しかも美しく、フレンドリーなところであるとは想像もしなかったのである。
ボゴモーロフ夫妻 藻岩山頂で札幌市街をバックに
北大スラブ研究センターで数カ月の研究滞在をする機会が与えられたおかげで、私はモスクワでのわずらわしい仕事、せわしい生活から解放され、素晴らしい条件の中で創造的な研究活動に専念することができるようになった。

研究や著作の仕事は、静かで、かつ刺激的な環境を必要とする。センターでの滞在は、こうした条件の全てを満たしてくれるものである。それだけでなく、一生忘れることのないような新しい印象、新しい友人、そして新しい知識を得ることができた。これも、私にとっては予想外のプレゼントであった。 札幌のとても素晴らしい秋の気候と美しく色づいた樹々は、ここを訪れた誰をも魅了する。札幌の秋は、モスクワでのように一瞬のうちに終わってしまわず、ここちよい日々をしばらくの間、楽しむことができる。札幌の公園や大通りが、美しく、かつ、清潔に保たれていることにも感銘した。 札幌が、わがモスクワと大きく違うもう一つの点は、自転車がとても多いことである。モスクワの街頭で自転車を見かけることは滅多にないが、日本では自転車があふれている。外を歩いている時、猛スピードで通り過ぎる自動車にびくびくすることはない(日本のドライバーは歩行者に対して十分敬意を払っている)のに、狭い歩道をわがもの顔で走り抜ける自転車には恐い思いをする。

どこで暮らしても、その土地に順応し、すっかり安心して生活できるようになるまでには一定の時間がかかるものである。私の場合も、たとえば、どうやってバスや地下鉄の切符を買っていいのか迷ったり、あるいは、店で必要な食料品を見つけるのに苦労することが何度となくあった。言葉や生活スタイルの違いに戸惑うのだ。しかし、周りに、私たちを助け、親切に対処してくれる人たちがいてくれるおかげで、札幌で暮らし始めてすぐに、生活の上で必要なことの多くを学ぶことができた。 ロシアの諺では、「時間は仕事にあてろ。楽しみごとは一時(いっとき)にしておけ。」というが、私もこのやり方で時間の配分をすることにしよう。スラブ研究センターでの私の滞在が、私自身にとっても、そしてホストであるセンターの人たちにとっても、有益なものになるように願っている。 (英語から山村理人訳)