◆ 1999年度外国人研究員候補決まる ◆

7月12日の協議員会において、2000年度の長期外国人研究員招聘に関する審議がおこなわれ、正候補3名、副候補1名が決まりました。正候補として選ば れたのは以下の方々です。

今年度の応募者は48名で、選考は非常に難航しました。結果的に、比較的若手の優秀な方々が選ばれたように思われます。

マゴメドフ氏は38才、ダゲスタン共和国の出身で、政治学を専攻しています。とりわけ、ロシア地方政治の研究では、いくつかの論文によって世界的に も極めて高い評価を受けている新進気鋭の学者です。センターでモスクワ以外から政治学者を招くのは初めてのことではないでしょうか。センターでは「パイプ ライン問題:カスピ海からノボロシイスクへの石油輸送をめぐるロシア地方エリートの政治的インセンティヴと行動」という研究をおこなう予定で、日本のロシ ア地方研究者に刺激を与えることが期待されます。

ルキッチ氏は48才、現在カナダで教鞭をとっていますが、クロアチア国籍の研究者です。専門は歴史学、国際関係論で、とくに、バルカン諸国をめぐる 研究において広く名を知られており、出版された3冊の著作(共著、編著を含む)はいずれも高い評価を受けています。センターでは今年度初めてブルガリアか ら研究者を招聘しましたが、来年度は初めてクロアチアから招聘することになります。センターでは「ヨーロッパのポスト共産主義の民族−連邦国家:ロシア連 邦とユーゴスラビア連邦共和国のケーススタディ」という研究をおこないます。

ラーニン氏は38才、アゼルバイジャンの出身で、モスクワ教育大学で博士号を取っていますが、専攻はロシア文学です。近代ロシア文学のなかでも、ア ンチ・ユートピア、亡命文学などのジャンルで活躍されており、最近では文学における女性のイメージという研究もおこなっています。センターでは、「20世 紀ロシア文学における皮肉と風刺」という研究をおこないます。来年度は文学を中心とする国際シンポジウム開催が予定されており、そこでの活躍も期待されま す。

センターでの滞在期間は、3氏ともに、来年6月から再来年の3月までの予定です。

なお、本誌前号でもお伝えしましたが、センターでは、来年度滞在されるCOE短期外国人研究員について、次の要領で公募をおこなっています。

滞在期間:2000年6月から2001年3月までの間の3カ月から5カ月の期間
応募締切:1999年9月30日
採用通知:1999年12月下旬(正式な通知は2000年3月中旬)

応募用紙の必要な方はご連絡下さい。応募要領は、センターのホームページでもご覧になれます。[田畑]

 

◆ 1999年度鈴川基金奨励研究員決定 ◆

選考の結果、次の方々が本年度の鈴川研究生として選ばれました。

氏 名 所 属 滞在期間 ホスト教官 研究テーマ
浅岡 善治 東北大・院博士課程 99.7.21〜8.4 松里公孝 後期ネップの農村政策における出版関連活動の位置と実状
小椋  彩 東大・院博士課程 99.7.19〜8.2 望月哲男 レーミゾフとアヴァクーム及び旧教徒の関わりについて。及び北方ロシアの民族学的資料収集
小野寺利行 明治大・院博士課程 99.7.21〜8.3 宇山智彦 中世ノヴゴロドの対ハンザ通商関係におけるイワン商人団の役割に関する一考察
栗山こずえ ブラッドフォード大博士課程 99.10.28〜11.4 林 忠行 ユーラシア大陸における民族・民俗文化の動向と今日のエスニックアイデンティティ
田中 良英 東大・院博士課程 99.7.19〜8.6 松里公孝 18世紀前半のロシア行政機構における意志決定過程の分析

今年は、例年にもまして激戦でした。低金利のため5名という枠は変えようがない反面、若手スラブ研究者の力量が年々上昇しつつあることが、選考をし だいに困難にしています。数年前までは、大学院の博士(後期)課程に所属していることがパスする条件でした。過去数年間は、この条件に加え、すでに論文を 発表していることが事実上の条件となりました。現在ではこの基準では候補を絞りこめず、文部省などの業績評価と同様に、論文の発表先が自分の大学の紀要な のか、レフェリーズジャーナルなのかを見なければならないようです。

ここで若手の研究者にお願いしたいことは、もし自分が優れた修士論文を書いたという自信がある場合は、ぜひ『スラヴ研究』に挑戦していただきたいと いうことです。レフェリーズジャーナルである以上、落ちるリスクは確かにありますが、指導教官の推薦さえあれば大学院生が書いたものを無批判に載せるよう な大学紀要とは、パスしたときの価値は全然違います。もちろん、『スラヴ研究』にパスすることは鈴川にパスすることよりもずっと難しいことですから、『ス ラヴ研究』に挑戦して万一落とされたとしても、それが鈴川の選考に否定的に影響することはありません(むしろ逆です)。

『スラヴ研究』編集側としても、優れた修士論文を素材とした論文を多数掲載することは、『スラヴ研究』が研究の最前線に立ち続けるために必要なだけ ではなく、雑誌としての若さ、センス、魅力を保つためにも必要です。[松里]

 

◆ 共同研究員一覧 ◆

センターではこの4月から、下記の136名の方々に共同研究員をお願いすることになりました(委嘱期間 1999年4月〜2001年3月)(敬称 略、五十音順)。[井上]

1.特別共同研究員
秋月孝子(元センター)、伊東孝之(早大)、岩田昌征(千葉大)、宇多文雄(上智大)、加藤九祚(国立民族学博物館名誉教授)、川端香男里(中部大)、木 戸蓊(神戸学院大)、木村崇(京都大)、木村汎(国際日本文化研究センター)、佐藤經明(横浜市立大名誉教授)、外川継男(上智大)、中村喜和(共立女子 大)、西村可明(一橋大)、長谷川毅(カリフォルニア大)、松田潤(札大)、南塚信吾(千葉大)、望月喜市(北大名誉教授)、百瀬宏(津田塾大)、安井亮 平(早大名誉教授)、和田春樹(東大名誉教授)

2.学内共同研究員
天野哲也(総合博物館)、安藤厚(文学部)、池田透(文学部)、煎本孝(文学部)、宇佐見森吉(言語文化部)、浦井康男(文学部)、 タチアーナ・ヴラーソヴァ(言語文化部)、大泰司紀之(大学院獣医学研究科)、大西郁夫(文学部)、小野有五(大学院地球環境科学研究科)、柿澤宏昭(大 学院農学研究科)、工藤正廣(言語文化部)、栗生澤猛夫(文学部)、杉浦秀一(言語文化部)、鈴木延夫(文学部)、高幣秀知(文学部)、田口晃(法学 部)、竹田正直(教育学部)、津曲敏郎(文学部)、所伸一(教育学部)、中村研一(法学部)、灰谷慶三(文学部)、橋本聡(言語文化部)、福田正己(低温 科学研究所)、藤家壮一(言語文化部)、望月恒子(文学部)、山田吉二郎(言語文化部)、吉田文和(経済学部)、吉野悦雄(経済学部)

3.学外共同研究員
秋月俊幸(元北大法学部)、荒井信雄(札幌国際大)、荒又重雄(釧路公立大)、井桁貞義(早大)、諌早勇一(同志社大)、石井規衛 (東大)、石川晃弘(中央大)、石川達夫(神戸大)、石田信一(跡見学園女子大)、石田紀郎(京大)、伊東一郎(早大)、岩下明裕(山口県立大)、岩田賢 司(広島大)、上垣彰(西南学院大)、上野俊彦(日本国際問題研究所)、浦雅春(東大)、大津定美(神戸大)、大庭千恵子(広島市立大)、荻原眞子(千葉 大)、小澤治子(新潟国際情報大)、小田福男(小樽商大)、貝澤哉(早大)、金子亨(千葉大名誉教授)、亀山郁夫(東京外大)、川口琢司(北海学園大)、 川原彰(中央大)、北川誠一(東北大)、久保一之(京大)、久保庭真彰(一橋大)、栗原成郎(創価大)、源河朝典(岡山大)、小松久男(東大)、小森田秋 夫(東大)、齋藤晨二(名古屋市立大)、坂井弘紀(千葉大)、左近毅(大阪市立大)、佐々木史郎(国立民族学博物館)、佐々木りつ子(旭川大)、佐藤雪野 (東北大)、澤田和彦(埼玉大)、塩川伸明(東大)、篠原琢(東京外大)、柴宜弘(東大)、柴崎嘉之(釧路公立大)、志摩園子(東京成徳大)、下斗米伸夫 (法政大)、庄司博史(国立民族学博物館)、新免康(東京外大)、菅原淳子(二松学舎大)、鈴木淳一(札大)、仙石学(西南学院大)、高倉浩樹(東京都 大)、高田和夫(九州大)、田畑理一(大阪市立大)、月村太郎(神戸大)、徳永彰作(札大)、富田武(成蹊大)、豊川浩一(明治大)、中井和夫(東大)、 中見立夫(東京外大)、中村裕(秋田大)、中山弘正(明治学院大)、長與進(早大)、西成彦(立命館大)、西中村浩(東大)、西山克典(静岡県立大)、沼 野充義(東大)、根村亮(新潟工大)、袴田茂樹(青山学院大)、畑中幸子(中部大)、坂内徳明(一橋大)、平井友義(広島市立大)、平田武(東北大)、廣 岡正久(京都産業大)、広瀬佳一(防衛大)、藤本和貴夫(大阪大)、アンドレイ・ベロフ(福井県立大)、松井憲明(釧路公立大)、松井康浩(香川大)、松 戸清裕(北海学園大)、三谷恵子(京大)、六鹿茂夫(静岡県立大)、百瀬響(道教育大)、森下敏男(神戸大)、横手慎二(慶應義塾大)、矢田部順二(広島 修道大)、吉田進(環日本海経済研究所)

 

◆  新規科研費プロジェクト ◆

「近現代ロシアにおける国家・教会・社会:ロシア正教会と宣教団」

科学研究費基盤研究(B)「近現代ロシアにおける国家・教会・社会:ロシア正教会と宣教団」がセンターの原を研究代表者として、今年度から3年計画 ではじまります。研究分担者には1995〜1997年におこなわれた重点領域研究「スラブ・ユーラシアの変動」のなかの計画研究「地域と地域統合の歴史認 識」を継続するメンバーでロシア史専攻の西山克典(静岡県立大)、豊川浩一(明治大)の両氏、そして新たにロシア宗教哲学専攻の谷寿美(慶應義塾大)、現 代ロシア政治専攻の廣岡正久(京都産業大)、19世紀ロシア文学専攻の中村健之介(東京大)の3氏が加わります。

各研究分担者の専攻分野からもおわかりのように、学際的な研究をめざすということが本研究の最大の特色です。ロシア極東近現代史を専攻する研究代表 者自身は、上記の研究課題で蓄積が乏しく、未知数のジャンルに手を広げることになりますが、あえてこのテーマで科学研究費補助金を申請した理由は、以下の 通りです。

広く知られているように、共産党支配終焉後のロシアでは正教会の復興が顕著であり、政権と教会の関係が現代ロシア政治の方向性を占う一つのポイント とさえなっているように見受けられます。ロシア近現代史を一貫した流れとして捉え直そうとするとき、この現実はどのように説明できるのでしょうか。一般論 としても、ロシアにおける国家と社会、集団と個人のあり方を追究するにはロシア正教会の研究が不可欠と思われますが、この点、日本のロシア史研究は十分な 目配りをしてきたでしょうか。荒っぽい言い方になりますが、ロシア中世史研究はともかくとして、近現代史研究では、ソビエト期のロシア本国の歴史学のあり 方に規定されて、この領域を不毛な空白域のままに放置してきたことに気づかされます。また、ロシア国家の威光を背景に、正教会によってロシアの東部および 東アジア諸国に派遣された宣教団の活動についての研究は正教会の特質の把握にとってだけでなく、シベリア史、日露関係史、露清関係史、ロシア東洋学史を振 り返る上でも基本的な分野をなしていますが、この分野の全体像はまったく不十分にしか認識しえていないと思われます。しかし、ロシア本国で近年この分野に 光があてられる状況が生まれつつあるなかで、日本の研究に国際的な期待がかけられているのも事実です。

そのようなわけで、本研究は日本のロシア正教会研究、宣教団研究の水準を高めるための基盤を形成しようという趣旨で開始されるものです。本研究に関 して、何かご意見やご要望がありましたら、お聞かせ下さい。[原]

 

◆ 科研費プロジェクト成果の出版 ◆

1998〜2000年度文部省科学研究費補助金(基盤研究(A)および(B))「ロシアの地域間の資金循環」(研究代表者 田畑伸一郎)の中間報告 が『スラブ研究センター研究報告シリーズ』No. 65として出版されました。収録されているのは、センター冬期シンポジウム(1999年1月27〜28日)で報告された2つの報告、田畑伸一郎・佐藤智 秋・石川健「地域における統計作成の実状―物価統計と就業統計を中心として―」、田畑理一・堀江典生「地域の産業構造と生活水準―ノヴォシビルスクとヴォ ロネジを中心として―」です。また、付録として、センターまたは上記の研究プロジェクトによって収集されたロシアの地域統計集の1999年4月現在のリス ト(Collections of Regional Statistical Handbooks of Russia)を付しました。ご関心のある方は、センターまでご連絡下さい。[田畑]

 

◆ 北海道スラブ研究会総会開催 ◆

北海道スラブ研究会1999年度総会は5月14日に開催されました。

総会では1998年度の活動報告と会計報告がなされ、出席者の了承を得ました。それに続き1999年度の新役員が、以下の通り選出されました(連絡 役が皆川修吾から宇山智彦に替わりました)。
世話役代表: 井上紘一(センター)
世 話 役: 大西郁夫(北大文学部)、杉浦秀一(北大言語文化部)、高岡健次郎(札幌学院大)、田口晃(北大法学 部)、徳永彰作(札幌大)、所伸一(北大教育学部)、匹田剛(小樽商大)、 吉野悦雄(北大経済学部)
会 計 係: 松田潤(札幌大)
会 計 監 査: 吉田文和(北大経済学部)
連 絡 係: 宇山智彦(センター)

総会に引き続き、最近著書を出された北大言語文化部の杉浦秀一氏が、「ロシア自由主義の国家論」と題する研究報告をおこないました。ロシア自由主義 に固有の「秩序化のコード」を分析するという視点から、カヴェーリンとチチェーリンの国家論の変化を跡づけるもので、質疑応答も活発におこなわれました。 報告の後には恒例のビア・パーティが催され、会員の和やかな歓談が続きました。

北海道スラブ研究会では活動をさらに活性化させたいと考えていますので、皆様の建設的な提案をお待ちしております。[宇山]

 

◆ 研究会活動 ◆

ニュース77号以降の北海道スラブ研究会とセンター特別研究会の活動は以下の通りです。[松里]
5月14日 杉浦秀一(北大言語文化部)「ロシア自由主義の国家論」(北海道スラブ研究会総会)
5月26日 K. フレーベルク(ハレ大学・中東欧農業発展研究所) “Impact of East Enlargement of the EU”
6月17日 長谷川毅(カリフォルニア大学サンタバーバラ校)「太平洋戦争末期における千島列島をめぐる米ソ関係」 (北海道スラブ研究会)
6月29日 L. ソン(カザフスタン、映画監督)「ソ連崩壊後の中央アジアの朝鮮人」(北海道スラブ研究会・スラブ研究センターセミナー)

 

◆ センター第14回公開講座 ◆

「北方ユーラシアの開発と環境」が終了

センターの公開講座は、 5月10日(月)から5月31日(月)までの毎週、月曜日と木曜日に、計7回にわたって開催されました。今回は北方ユーラシアの開発と環境という二律背反 の地域的な新しいテーマを掲げてみました。北海道に住む私たちは、北方ユーラシアの繊細で豊かな自然のなかに住んでいます。しかし、近年、シベリア・極東 では森林の破壊が進み、大気汚染も深刻になっています。新たな海洋汚染の懸念も高まってきています。というのは、今年7月からサハリン北東部海域で本格的 な石油開発が開始され、1週間に1度の頻度でオホーツク海を原油タンカーが航行するからです。石油・天然ガス開発はロシア極東のエネルギー需給の緩和に役 立ち、この地域の経済発展に貢献し、日本にとってもエネルギー供給源を多様化できます。その反面、さまざまな環境破壊の可能性も増大します。

受講者の身近な開発と環境問題を設定してみましたところ、評判は上々で、受講者の多くは各講師の専門的な立場からの北の環境破壊の現実を知らされ て、自然を意識的に守る必要性を痛感したようです。北大農学部の高橋邦秀教授にはシベリアの森林資源が危機にさらされている状況を、スライドを使って分か り易く解説していただきました。自然と共生しながらどのように北極海の航路を開設したらよいかという夢あふれる北川弘光・北大工学研究科教授の話から、ノ ルウェー、ロシアおよび日本を中心に、すでにさまざまな角度から詳細に検討されていることを知って驚かされました。紋別の北大流氷研究施設長の青田昌秋教 授によるオホーツクの流氷の講義は受講者を引き付けました。北海道は渡り鳥の世界でもシベリアと密接な関係をもっていますが、帯広畜産大の藤巻裕蔵教授は 渡り鳥の保護の重要性を強調されました。また、北海道沿岸にはトドがたくさん生息し、魚の網を壊す漁民泣かせの動物ですが、まだその生態が解っていないと いう野生生物保護学会会長の和田一雄氏の指摘は、今更ながら研究の重要性を痛感させられました。日ロ経済委員会事務局長の杉本侃氏は極東経済発展の問題点 と重要性を強調されていました。

総じて受講者の多くが環境問題に強い関心をもっているようで、自然科学系の講師の話はとりわけ新鮮に映ったようです。

なお、この講座の講義録(要約)は、月刊誌『しゃりばり』(北海道開発問題研究調査会)の9月号から連載される予定です。ご関心のある方はセンター 村上までお問い合わせ下さい。 [村上]

 

学界短信

◆ JCREES創設記念シンポ開催 ◆

昨年7月に発足した日本ロシア・東欧研究連絡協議会(The Japan Council of Russian and East European Studies, 略称JCREES)は、5月29日午後、東京四谷の上智大学において創設記念シンポジウムをおこなった。テーマは「日本におけるロシア・旧ソ連地域研究の 現状と国際交流の課題」。

第1パネル「日本におけるロシア・旧ソ連地域研究の現状と課題」では、JCREESを構成する5会員団体(日本国際政治学会ロシア・東欧分科会、日 本スラブ・東欧学会、ロシア史研究会、ロシア・東欧学会、ロシア文学会)の代表がそれぞれの「研究の現状と課題」を報告、ついで3関係研究機関(日本国際 問題研究所、一橋大学経済研究所、北大スラブ研究センター)からの発言があったのち、木村汎氏(ICCEES理事、JCREES幹事)による特別報告「国 際学会の状況と日本」で締めくくられた。木村報告では、International Council for Central and East European Studies(略称ICCEES)の活動、とりわけ来年7月29日から8月3日にかけて、フィンランドのタンペレで開催される第60回世界大会の準備状 況が伝えられ、日本からの出席予定者が少ないので、なるべく多くの方に参加して欲しいとの希望が表明された。

第2パネルでは、外務省、文部省、学術振興会、国際交流基金から報告者を迎えて、国際交流と若手研究者の留学をめぐる諸問題が討議された。 JCREESの発足により、このような公開討論の場が設けられるのは、意義深いことと思われる。ロシア大使館からはシェフチューク参事官が出席して、流暢 な日本語で意欲的に発言されたのが印象的であった。

このシンポジウムに関しては、藤本和貴夫氏(JCREES副代表幹事)の記事「新段階のロシア・東欧研究」(『毎日新聞』5月24日付朝刊所載、セ ンターのウェブサイトに開設のJCREESホームページに再録)もご参照されたい。[井上]

◆ 比較経済体制学会第39回全国大会 ◆

今年度の大会が6月3〜5日に横浜国立大学で予定通り開催された。今年度の共通論題は「国際経済・国際金融と移行経済」で、一般的なテーマが選ばれ ていたここ数年とは異なり、かなり専門的なテーマが共通論題とされたことが今年度の大会の特色であった。ただし、国際経済・国際金融というテーマを専門に 研究している研究者が本学会に少ないこと、また、これらのテーマの分析が極めて技術的、実務的な知識を必要とすることから、招待講演が3報告組まれること となった。黒坂昭一氏(東京三菱銀行)、本間勝氏(前OECD課長)、白鳥正喜氏(元世界銀行理事)による報告がそれである(本間氏は当日欠席)。会員4 人による共通論題報告と噛み合ったかどうかは別として、新しい試みとしては評価できるものであったように思われた。

なお、総会では役員の改選がおこなわれ、新幹事会において新しい代表幹事に西村可明会員(一橋大学)が選出された。これに伴い、学会事務局が北海道 大学スラブ研究センター田畑伸一郎研究室に置かれることとなった。また、総会では、日本ロシア・東欧研究連絡協議会(JCREES)に会員団体として正式 加盟するという方針が承認された。来年度の大会は、名古屋学院大学で開催の予定である。[田畑]

◆ 学会カレンダー ◆

7月21〜24日 スラブ研究センター1999年度夏期国際シンポジウム
10月9〜10日 ロシア史研究会大会 於明治大学リバティ・タワー
11月18〜21日 AAASS(米国スラブ研究促進学会)の第31回大会 於ミズーリ州セントルイス
2000年1月27日〜28日 スラブ研究センター1999年度冬期シンポジウム
7月13〜14日 スラブ研究センター2000年度夏期国際シンポジウム
7月29日〜8月3日 ICCEES(中・東欧研究世界学会)第6回大会 於タンペレ

 

図書室だより

◆ 貸出サービスの拡充 ◆

スラブ研究センター図書室では、この5月より次のように図書貸出に関する規定を改め、北大学生、大学院生、教職員の方に貸出を開始しました。

北大教職員、大学院生:10冊、1ヶ月まで
北大学部学生・研究生:3冊、1週間まで

図書室では、新規受入図書を附属図書館に管理換えできないでいるため、利用にご不便をおかけしておりますが、当面、この形でサービスをしてまいりま す。

なお、新聞・雑誌については、これまでと同じく閲覧とコピーによる利用となります。[兎内]

◆ シェヴェロフ・コレクションなどの整理状況 ◆

センターニュース73号(1998.5)でお伝えしました、ウクライナ言語学を核とする上記コレクションの、最初の部分の整理が完了しておりますの でお知らせします。なお、今年度中には、昨年初めに受入れた続きの部分についても整理を進行させる計画です。

最近では、他に、ユーゴスラビア自主管理社会主義、およびユーゴスラビア法を中心とした寄贈図書があり、昨年度に約900冊を受入れていましたが、 その整理が終わりに近づいています。セルビア・クロアチア語資料がほとんどのため、目録作業において、書誌をオリジナルで独自に作成するケースが多かった のは当然ですが、しばしば千葉大学が作成した目録データを使用することができたのはうれしい誤算といえます。[兎内]

 

編集室だより

◆ スラヴ研究 ◆

和文レフェリーズ・ジャーナル『スラヴ研究』第47号の執筆申し込みが締め切られました。今回も多数の申し込みがあり、嬉しい限りです。提出予定者 は、8月末までに原稿を送ってください。発行は来年3月を予定しています。[宇山]

◆ ACTA SLAVICA IAPONICA ◆

第17号は、レフェリー審査を終え、各投稿者に必要な書き直しをしていただいているところです。今秋発行を目指していますが、やや遅れるかもしれま せん。なお今後のお問い合わせは、松里宛にお願いします。

引き続き、2000年秋発行予定の第18号への投稿も受け付けています。執筆希望者はまず、Acta Slavica Iaponica編集部まで御一報ください。執筆計画提出期限は2000年1月末日、原稿提出期限は3月末日です。分量は、A4版用紙(1枚に30行程 度)25枚(書評の場合は3枚)を標準とします。

Acta Slavica Iaponica は、世界各地の主要研究機関・図書館・研究者に送られている、レフェリー制の雑誌です。積極的な投稿をお持ちしています。[宇山]

 

みせらねあ

◆ 人 物 往 来 ◆

ニュース77号以降のセンター訪問者(道内を除く)は以下の通りです。[井上]

5月26日 K. フレーベルク(Frohberg)氏(ハレ大学・中東欧農業発展研究所)
6月 7日 田春生氏(中国社会科学院世界経済政治研究所)
6月16日 布施吉之氏(会計検査院)
6月17日 長谷川毅氏(カリフォルニア大学サンタバーバラ校)
6月29日 L. ソン(Son)氏(カザフスタン、映画監督)

◆ 研究員消息 ◆

皆川修吾研究員は、5月31日〜10月31日の間「ロシアにおける政治システムの制度化に関する調査」のため、英国へ出張。

山村理人研究員は、6月13日〜7月4日の間「東欧農村構造変動に関する調査」のため、チェコ他へ出張。

家田修研究員は、6月3日〜9月4日の間「ロシア、ウクライナ、ハンガリー及びルーマニアにおける農村経済構造の変容に関する調査」のため、ロシア 他へ出張。

松里公孝研究員は、6月2日〜7月11日の間「ヴォルガ中流域民族共和国エリート及び脱共産主義国におけるリージョン/サブリージョン、政治に関す る調査」のため、ウクライナ他へ出張。[野村]


◆76、77、78の3号にわたり編集を代行させていただきましたが、次号からは本来の編集者であるOさん(産休中)が復帰いたします。慣れないも ので要領が悪く毎号本当に間に合うのだろうか?と不安に思っていましたが、どうにか3号とも無事に発行することができてホッとしています。◆去年の3月に スラ研を去ってからまたこうしてセンターニュースの編集の代行をすることになろうとは思ってもみませんでした。たまたまセンターに遊びに来た際に編集責任 者であるM氏にスカウト(?)され、これも何かの縁と思いうっかりと引き受けてしまったのです。思えば昨年の今頃も産休中のOさんに代わりニュースの編集 をしながらこんなに大変なら引き受けなければよかった、と後悔していたのにまたついうっかりと引き受けてしまいました。◆本号は編集責任者であるM氏の長 期海外出張による不在、センターの夏期シンポジウムの準備、などにより思うように編集作業がはかどらなく大変苦労しました。最終的には原稿に目を通してい ただくわけですが、書かれている内容をほとんど理解していない者が編集しているというのもおかしなものです。実際、たいていはそういうものなのかもしれま せんが・・・。しかし読者の方々には不満の声もあったのでは?と心配しております。◆次号からは「本来の質」を取り戻すことができると期待されますので読 者の方々の不満も解消されることでしょう。ニュースの発行に際しいろいろな方々に多大なるご迷惑をおかけしたことと思います。皆様のご協力に心より感謝い たします。


1999年7月19日発行
編集責任 松里公孝
発行者 井上紘一
発行所 北海道大学スラブ研究センター
060-0809 札幌市北区北9条西7丁目
TeL.011-706-3156、706-2388
Fax. 011-706-4952
インターネットホームページ:
http://src-h.slav.hokudai.ac.jp/