スラブ研究センター冬期シンポジウム

スラブ・ユーラシア諸国におけるリージョン:歴史と現在

2001年1月25〜26日(センター4階大会議室)


 前号でお知らせしましたように、恒例の冬期シンポジウムが、1月25日(木)、26日(金)の2日間にわたって開催されます。また、1月27日(土)にも関連セミナーが開かれます。皆様の積極的なご参加を歓迎いたします。なお、センターのホームページでプログラムなど最新の情報を見ることができる他、報告論文をダウンロードして読むことが出来るようになっています。但し論文閲覧にはパスワードが必要ですので、担当までご連絡下さい。[山村]


1月25日(木)


9:30-12:00 セッション1:ロシアの対外関係におけるサブナショナル・ファクター [英語・ロシア語使用]
 1)A.マゴメードフ(ウリヤノフスク国立工科大/ロシア)「パイプライン・ポーカー:カスピ海石油とテンギス=ノヴォロシースク・パイプライン地域の地方権力エリートの変化するインセンティヴ」(ロシア語使用・英語通訳つき)
 2)岩下明裕(山口県立大)「ロシアの対中国関係における地域のイニシアチブの効果:国境確定と地域協力関係」
 3)I.オルドベルグ&J.ヘデンスコグ(スウェーデン国防研究所)「ロシアの西部諸地域とヨーロッパ」
司会:袴田茂樹(青山学院大) 討論:柑本英雄(早稲田大・院)、I.オルドベルグ
13:15-15:15 セッション2:ロシアにおける地域間資金循環 [英語使用]
1)田畑伸一郎(センター)「石油ガスの輸出収入の地域間における配分」
2)上垣彰(西南学院大)「経済のグローバリゼーションのもとでのモスクワとロシア中央経済地区」
司会:西村可明(一橋大) 討論:塩原俊彦(高知大)、大津定美(神戸大)

15:30-17:30 セッション3:ロシアとバルカンにおける連邦制 [英語使用]
1)I.ブスィギナ(ロシア科学アカデミー欧州研究所)「ロシアの民主制移行の文脈における連邦制とプーチンの行政改革」
2)R.ルキッチ(ラヴァル大/カナダ)「ユーゴスラヴィア連邦共和国における連邦制の衰退:1998年から現在まで」
司会:木村汎(国際日本文化研究センター) 討論:樹神成(三重大)、月村太郎(神戸大)

18:00-20:00 懇親会

1月26日(金)


9:30-11:30 セッション4:日露関係の歴史から [ロシア語使用]
1)B.スラヴィンスキー(法政大客員教授)「ロシア極東における内戦と日露関係」
2)沢田和彦(埼玉大)「ロシア人亡命者の日本文化に与えた影響」
司会:和田春樹(東京大名誉教授) 討論:中村喜和(共立女子大)、原暉之(センター)
13:00-15:00 セッション5:ロシア極東における地域経済問題 [英語使用]
1)M.ブラドショー(レスター大/英国)「ロシアにおけるグローバリゼーション、経済変革、地域変動:サハリンのケース」
2)A.ベローフ(福井県立大)「ロシアにおける中央・地方間の資金フロー:ロシア極東のケース」
司会:村上隆(センター) 討論:V.イワノフ(環日本海経済研究所)、荒井信雄(札幌国際大)
15:15-17:15 セッション6:リージョン研究の新たな展開:ウクライナとクロアチアにおけるリージョンのアイデンティテイと政治 [英語使用]
1)松里公孝(センター)「ウクライナにおける知事層の更新と1999年の大統領選挙」
2)石田信一(跡見学園女子大)「イストリア:歴史的文脈でのその地域的アイデンティテイ」
司会:南塚信吾(千葉大) 討論:R.ルキッチ、末沢恵美(日本国際問題研究所)
1月27日(土)
10:00-16:30 特別セミナー(4階大会議室)
ポスト・コミュニスト諸国におけるリージョン/サブリージョン政治
[英語使用]


研究の最前線

 2001年度の鈴川基金奨励研究員募集(予告) ◆

 鈴川正久氏のご寄付により、1987年から10年以上続いています鈴川基金の奨励研究員募集を来年度も実施します。スラブ・ユーラシア関係の若手の研究者がこの制度を利用してセンターに滞在し、センター及び北大図書館所蔵の文献資料の利用、センターで開催されるシンポジウム・研究会への参加、センターのスタッフとの意見交換をおこない、毎年実りある成果を挙げています。本年度も数人の若手研究者を採用したいと考えていますので振るってご応募下さい。
 助成対象者は、原則として博士課程以上の大学院生です。助成期間は1週間以上3週間以内です。募集の開始は2月中旬頃、締切は4月末を予定しています。募集要項・応募用紙をご希望の方はセンターにお申し込み下さい。[松里] 


◆ 国際ワークショップ開催される ◆

 昨年度から始まった科研費国際学術研究「旧ソ連東欧地域における農業経済構造の変容」(代表:家田修)では、今年度を農業改革の現状に関する現地研究者との意見交換の年と位置付け、国際ワークショップを現地で開催しました。開催にあたってはチェコの農業研究所による全面的な協力がえられ、ロシア・東欧からの研究者6名、日本からの研究者4名による研究報告と討議がなされました。出席者と報告題目などは下に掲げた通りです。年度末には報告集が刊行される予定ですので、詳しい内容はそちらを御参照ください。
 会場となったのはチェコ南部の旧国営農場ですが、今では個人農場として経営されています。所有者は旧国営農場の長で、イジー・チェルマークさんです。恰幅の良い、いかにも農場長というタイプの方で、母方の祖先は地方名士の家柄だそうです。会議が終わった日の夜は、チェルマークさんをまじえて話が弾み、彼の経営者としての、あるいは地域名士としての貴重な話まで「調査する」ことができ、思わぬ収穫でした。チェルマークさんも秘蔵ワインコレクションから次々と自慢のボトルを会議参加者にふるまい、座は最高潮に達しました。


New Structure of Rural Economy in the Post-Communist Countries
開催日時:2000年11月26-29日
開催場所:Lomnice nad Luznici(チェコ共和国)
参加者と報告題目
Gejza Blaas (Research Institute of Agricultural Economics, Bratislava, Slovakia) "Agricultural Reform in Slovakia: Changing Institutions and Structures"
Tomas Doucha (Research Institute of Agricultural Economics, Prague, the Czech Republic) "Farm Transformation and Restructuring in the Czech Agriculture - After Ten Years"
Klaus Reinsberg (Institute for Agricultural Development in CEEC, Halle, Germany) "The Transition in Eastern German Agriculture, Lessons to Be Learned for the EU-Enlargement Process"
Diana Kopeva (Research Institute of Market Economy, Sofia, Bulgaria) "Aspects of Land Consolidation After the Land Reform in Bulgaria"
Stanislaw Hejbowicz (Vilnius College of Agriculture, Vilnius, Lithuania) "New Structure of Rural Economy in Lithuania"
Gely Shmelev (Institute of Economy, Russian Academy of Sciences, Moscow, Russia) "General Processes and Specificities of Agrarian Reform in the Central and Eastern Europe and CIS"
Etsuo Yoshino (Hokkaido University, Sapporo, Japan) "Polarization Process of Polish Agriculture in the Latter Half of 1990s: Hobby Farmer, Week-End-Farmer, Euro-Farmer or Euthanasia"
Tadayuki Hayashi (SRC, Hokkaido University, Sapporo, Japan) "Politics of the Agricultural Transformation in Czechoslovakia: 1990-1991"
Rihito Yamamura (SRC, Hokkaido University, Sapporo, Japan) "Socio-Economic Aspects of the Post-Socialist Farming Structures"
Osamu Ieda (SRC, Hokkaido University, Sapporo, Japan) "Rural Cooperatives and Members' Liability in a Historical Perspective: Hungarian Case"

以上の他にPal Juhasz氏(Budapest University of Economic Sciences, Budapest, Hungary) が所用で欠席しましたが、"The End of Agricultural Miracle and the Property-Reform in Hungary"と題する報告論文を提出しました。[家田] 


◆ 専任研究員セミナー ◆

 昨年11月から12月にかけて4つの専任研究員セミナーがおこなわれました。
11月7日 松里公孝 "The Issue of Zemstvos in Right Bank Ukraine 1864-1906: The Polish Nobility, the Governor-Generals, and the Imperial Government"「論者:竹中浩(大阪大)
11月19日 田畑伸一郎 "Distribution of Oil and Gas Earnings among Russian Regions" 討論者:中村靖(横浜国立大)
12月26日 村上隆「石油流出に関する危機管理体制の国際比較」討論者:畠山武道(北大法学部)
12月26日 皆川修吾「ロシア連邦議会の制度化:制度化の検証」討論者:上野俊彦(上智大)

松里報告では同研究員のかねてよりの研究主題である帝政期のゼムストヴォ問題に焦点が当てられ、ゼムストヴォの導入が見送られたポーランド系貴族領地域の分析が行われました。今回の報告は同研究員が今後の研究の主力を民族関係史に移してゆく前兆となるかもしれません。田畑報告では石油と天然ガス生産の収益がどの程度地方へ引き渡されているのか、中央統計からこれを読みとく試みがなされました。このテーマは現在のロシアにおける中央-地方関係を考える上で極めて重要な争点ですが、田畑報告の予備的結論では、量的に特定することは困難とのこと。田畑研究員は今後、このテーマで研究を掘り下げていくそうですので、その成果に期待ができそうです。村上報告はサハリン油田開発をめぐる問題を扱った共同研究の締めくくりとして執筆されたもので、原油流出問題に関連した各国の制度を比較検討しています。日本やロシアにおける行政と市民意識のあり方にもメスが入れられました。皆川報告は同研究員が永年にわたって構築してきたロシア議会の制度化に関する膨大な独自資料を基礎にまとめあげられたもので、A4で100頁近くに達する大論文でした。独自の制度化理論と議会関連資料をどう有機的に結び付けるか、早く単行本にまとめあげられてほしいものです。[家田] 


◆ ジュヌソヴァ氏の滞在 

 ジャヌルジャン・ジュヌソヴァ(Zhanylzhan Dzhunusova)氏(カザフスタン外務省外交アカデミー教授)が、日本学術振興会外国人招へい研究者(短期)として、2000年10月21日から12月19日までセンターに滞在しました。専門は政治学で、研究テーマは、「中央アジアにおける国家と市民社会:カザフスタンの例」でした。センターのほか、東京大学と国立民族学博物館でも研究報告をおこない、盛んな議論を呼び起こしました。[宇山]


◆ ローン氏、タクサミ氏の滞在 ◆


 ロシアから二人の民族学者が来訪されます。一人はタクサミ(Chuner M. Taksami)氏(サンクト・ペテルブルグ、人類学民族学博物館々長)、いま一人はローン(Tatiana P. Roon)氏(ユジノ・サハリンスク、サハリン州郷土博物館副館長)で、いずれも国際交流基金の招へいで来日します。滞在日程は、タクサミ氏が2月4日〜3月6日、ローン氏は1月22日〜4月23日の予定です。[井上]  


◆ 研究会活動 ◆


 ニュース83号以降の北海道スラブ研究会およびセンター研究会の活動は以下の通りです。[大須賀]
11月 10日 Z. ジュヌソヴァ(カザフスタン共和国外務省外交アカデミー)"Democratization in Kazakhstan: Challenges and Prospects"(センター研究会)

学界短信  

◆ ロシア・東欧学会第29回大会開催される ◆


 ロシア・東欧学会第29回大会が10月20-22日、神奈川大学横浜キャンパスで開催された。今大会では共通論題「プーチン政権を解剖する」、公開討論会「新『千年』を迎えての日ロ関係の展望」のほか、多くの自由論題報告があり、センターからも松里公孝、アルバハン・マゴメードフ(外国人研究員)らがリージョン政治について報告した。当大会の総会では新理事の承認があり、センター専任研究員である村上隆、林忠行それに皆川修吾が加えられた。総会ではまた下記の新役員が承認された。[皆川]
学会代表理事・宇多文雄(上智大)  学会事務局長・上野俊彦(上智大)
年報編集委員長・松井弘明(大東文化大) 


◆ AAASS年次大会 ◆


 AAASS(米国スラブ研究促進学会)の第32回年次大会が2000年11月9〜12日にコロラド州デンバー市中心部のホテルで開かれた。大会のテーマは、"Russia, Central Europe, and the West at the Millennium: Prospects for Democratization and for the Region's Foreign Policies"とされていたようであるが、実際には、例年通り多種多様なパネルが開かれていた。経済関係では、私が組織して、上垣彰(西南学院大)、Vladimir Popovらが登壇したパネルや、久保庭真彰(一橋大)が組織して、Evgeny Gavrilenkovらが登壇したパネルがあり、日本人も相応に活躍した。Gregory Grossman、Vladimir Treml、Joseph Berliner、John Hardtといった大御所たちが揃い踏みしたパネルがあったのには驚かされた。いつの大会でも多くの聴衆を集めるPost-Soviet Affairs誌主催のラウンドテーブルは "Nine Years after the Collapse of the USSR"と題して今回もおこなわれ、Archie Brown、Timothy Colton、Peter Reddawayらが興味深い議論を展開していた。日本からは、以上に挙げたほか、長砂實(関西大)、望月哲男(北大)らが参加した(以上、敬称略)。
 来年の第33回大会は、2001年11月15〜18日にヴァージニア州アーリントン(首都ワシントンのナショナル空港のあるところ)で開かれる。次回の大会のテーマは、"The Variety of Post-Communist Regimes and the Challenges for U.S. Foreign Policy"とされている。[田畑]
 

◆ 学会カレンダー ◆


2001年1月25〜26日 スラブ研究センター2000年度冬期シンポジウム
5月31日〜6月2日 比較経済体制学会第41回全国大会 於北海道大学(スラブ研究センター)
6月11日〜8月3日 サマー・リサーチ・ラボラトリー 於イリノイ大学ロシア・東欧センター 詳細はwww.uiuc.edu/unit/reec/srl.htm
7月10〜13日 スラブ研究センター2001年度夏期国際シンポジウム "Diversification of Rural Societies in Eastern Europe and Russia"担当:家田修ieda@slav.hokudai.ac.jp
11月15日〜18日 AAASS(米国スラブ研究促進学会)第33回全国大会 於ヴァージニア州アーリントン
2002年6月5〜8日 コンファレンス"The Baltic States in the Era of Globalization"於ジョンズ・ホプキンズ大学/バルチモア ペーパー締め切りは2001年10月19日 問い合わせはSteven Young (young@umbc.edu)
センターのホームページ(裏表紙参照)の学会カレンダーにはこの他にも多くの海外情報が掲載されています。[大須賀] 

 

図書室だより

 帝政ロシア県知事報告書 ◆


 ロシア国家歴史文書館の所蔵するロシア各県の県知事が皇帝あてに提出した年次報告書は、19世紀ロシアの諸地域の状況を知るための基本資料といわれている。センター図書室は、Norman Ross社がその一部について製作したマイクロフィッシュをこのほど購入することができた。
収録範囲は、次の12県の、それぞれ1855-1864年の分である。アルハンゲリスク県、エカテリノスラフ県、カザン県、サラトフ県、トボリスク県、ニジェゴロト県、ノヴゴロト県、ペテルブルク県、ペルミ県、ボロネシ県、モスクワ県、ヤロスラヴリ県。いくつかの報告書をリーダーにかけてみたところでは、報告書は書記官が手書きで作成したものと見られる。大きな字で丁寧に書かれているが、タイプ打ちの文書と違って多少の慣れが必要であろう。
なお、最近、この資料について書かれた次の論文を目にしたことを付記する。


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