編集室だより

◆ スラヴ研究 ◆

『スラヴ研究』第48号には、レフェリー審査の結果以下の原稿が掲載されることが決まり、印刷作業を進めています(掲載順は未定)。
<論文>
飯尾唯紀 「近世ハンガリー王国における『信教の自由』:1608年法令第1条の解釈をめぐって」
岩崎一郎 「カザフスタンにおける産業組織と企業統治構造の進化と多様性:市場経済移行期の政府-企業間関係」
菅野開史朗 「ラトビア語の伝聞法をめぐって」
齋藤厚 「『ボスニア語』の形成」
斉藤毅 「O.マンデリシタームの創造における『形象』の概念について:評論『言葉と文化』、および2つの『つばめ詩篇』の読解」
向山珠代 「17世紀後半〜18世紀前半のロシア語における形動詞・副動詞構文」
吉岡潤 「ポーランド共産政権支配確立過程におけるウクライナ人問題」

 審査にご協力下さったレフェリーの皆様には、この場を借りて深くお礼申し上げます。当初は「論文」の扱いにするか「研究ノート」の扱いにするか迷う投稿もありましたが、レフェリーや編集委員の意見をもとに執筆者たちが大幅に書き改めた結果、粒ぞろいの論文となりました。残念ながら不採用となった方も、次回以降ぜひ再挑戦して下さい。[宇山] 


◆ ACTA SLAVICA IAPONICA ◆


 ACTA SLAVICA IAPONICA第18号は、まもなく発行されます。次の諸労作が掲載される予定です(掲載順は未定)。[松里]
Articles
"National and Regional Consciousness in Western Slavic Essay-Writing during the Anti-Communist Movement"
Yasuhiro Matsui
"Youth Attitudes Towards Stalin's Revolution and the Stalinist Regime, 1929-41"
Tetsuya Sahara "Balkan Nationalism after 1989"
Igor R. Saveliev,
Yuri S. Pestushko "Dangerous Rapprochement Russia and Japan in the First World War, 1914-1916"
Isabel Tirado
"Peasants into Soviets: Reconstructing Komsomol Identity in the Russian Countryside of the 1920s"
Cynthia Hyla Whittaker
"Chosen by 'All the Russian People': The Idea of an Elected Monarch in Eighteenth-Century Russia"
Kuili Liu

Yasuhiko Kyuno Sources
Liudmila M. Ermakova
Reserch Note
Salavat M.Iskhakov
Review Essay
Geffery Jukes "A Novelist and His Hero "
Review
Yasuhiro Matsui "Technocrats and Revolutionary Power: A History of Technological Policy in the Soviet Union,1917-1929, by Takeshi Nakashima" 

◆ スラブ・東欧研究者名簿第6版の発行 ◆


 3年毎に改訂されているスラブ・東欧研究者名簿の第6版が11月に発行されました。担当者にとっては名簿データを引き継ぎ後、はじめての発行でしたが、予想以上に手間がかかり、また個人データを扱うことの緊張感が伴なう仕事でした。この名簿がスラブ・東欧研究の活性化の一助となれば幸いです。次回はよりよい名簿を発行すべく工夫を重ねたいと思っております。[大須賀]

みせらねあ  

◆ スラブ研究センター主催市民講座 ◆
  「稚内2000:タンカー油流出事故にどう備えるか」を開催

 センターは、「サハリン大陸棚石油・天然ガスの開発と環境」(文部省科学研究費、代表者村上隆)の活動の一環として稚内市で市民講座を開催しました。サハリン沖のオホーツク海では昨年7月から石油開発が始まり、解氷期の6ヶ月間、10万t級のタンカーが10日に1度の頻度で宗谷海峡を通過しています。ナホトカ号事故の経験から、万が一タンカー事故によって原油が流出すれば、わずか42kmの幅しかない海峡の北海道側を汚染させる可能性があります。しかし、これまでのところ地元ではほとんど危機管理体制が進んでいません。そこで、市民に実情を理解してもらい、市民自らが防災のことを考えていただくために企画したわけです。
 参加者は130名にものぼり、このことは地元の関心の深さを物語っています。とくに、海上保安庁、気象庁、自衛隊等の国の出先機関、北海道の出先機関、稚内市、漁業関係者、自治会からの参加が目立ちました。稚内はサハリンと至近距離にあり、経済交流も活発で、サハリン沖の石油・天然ガス開発による後方支援基地としての経済的な利益に期待しています。当初、環境面を強調しすぎると、開発に影響を及ぼし、地元にマイナスになるのではないかという懸念がありました。しかし、漁業や観光はオホーツク沿岸地域にとって最も重要な産業であり、そのことが地域住民の関心を呼んだものと思われます。「地域の自然は地域住民の手で守る」という市民意識が醸成されれば、大学と地域住民とのインタラクションも深まることでしょう。後援をいただきました稚内海上保安部、宗谷支庁、稚内市、稚内北星学園大学にお礼申し上げます。[村上] 


◆ 専任研究員OBによる日露関連欧文出版 ◆


 木村汎氏(現、国際日本文化研究センター)が長年の研究を集大成した二巻本の著作 "Japanese-Russian Relations under Brezhnev and Andropov""Japanese-Russian Relations under Gorbachev and Yeltsin"(M.E. Sharpe, NY, 2000)を上梓されました。一昨年には長谷川毅氏(現、カリフォルニア大学サンタ・バーバラ校)のやはり二巻本の日露関係史が英文で出版され、大平賞を送られています。スラ研OBの活躍を範として、後に続きましょう。[家田] 


◆ 人物往来 ◆


 ニュース83号以降のセンター訪問者(道内を除く)は以下の通りです(敬称略)。[村上]
11月 10日 ピータネン(Jukka Viitanen)(フィンランド大使館フィンランドセンター所長)
11月 19日 クレム(Ralph S. Clem)(フロリダ国際大学移行・比較研究センター所長/米国) 


◆ 研究員消息 ◆


 山村理人研究員は2000年10月24日〜11月2日の間、科学研究費研究「旧ソ連東欧諸国における農村経済構造の変容」の研究会出席及び調査のためチェコに出張。
 田畑伸一郎研究員は11月8日〜15日の間、科学研究費研究「ロシアの地域間資金循環の分析」の成果発表(米国スラブ促進研究学会)及び資料収集のため、米国に出張。
 松里公孝研究員は12月4日〜28日の間、ウクライナ現代地方政治の現地調査のため、ウクライナに出張。[野村] 


 センターのクリスマス 

 

 昨年暮れの12月18日にクリスマス会が行われました。今年は、2ケ月間センターに滞在され、ご帰国を翌日に控えたジャヌルジャン・ジュヌソバさんのお別れ会、そして、つい4日前に到着されたばかりのイリーナ・ブスイギナさんの歓迎会も兼ねて開かれました。たくさんの方々が集まり、英語・ロシア語・日本語が飛び交う中、ボリス・ラーニンさんがご自身書かれた小説をユーモアたっぷりに朗読して下さったり、ジュヌソバさんがお国カザフスタンの美しい歌をご披露してくださったり、と外国人研究員の方々が大いに場を盛り上げてくださいました。その他にも、ビンゴゲーム、○×ゲームなどなど、盛り沢山の企画で、あっというまに札幌の長い夜は更けていったのでした。

[塚崎]

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イベントを盛り上げるのも非常勤研究員の仕事の一つ



スラブ研究センターニュース No84 目次