村上: 質問が寄せられております。前もって寄せられた質問に 答えないというのは大変失 礼にあたりますので、専門家の方々に発言していただくことにします。その前に、先程紹 介しました研究チームでここにいらっしゃっている方に、若干コメントなり、或は他の事 でも結構ですが、お話いただければ、2、3分でお願い出来ればと思っております。政治 を担当しております皆川さんにお願いします。

皆川: 皆川です。私共はかねがね、市民社会への研究成果の還元ということを考えていた わけですが、初めて、スラブ研究センターがこういう機会を設けたということで、どうや っていいのか良く解らないということもありますけれども、一所懸命やらせていただきた いと思っております。
 私は政治学者でありまして、全く環境問題について知識がございません。ただ、村上教 授のこの班の一員にさせていただいて、昨年から海外、特に北海油田の開発での石油汚染 に対する緊急防災計画について実地検証をしてまいりました。特に、ノルウェーの、オホ ーツク21報告書を参考に現地に行かせていただきました。備えあれば憂えなし、というこ となのですが、そういう石油流出汚染の前と後で、組織ががっちり出来ているのには、そ れなりの理由が過去にあったわけです。大変な石油流出事故がございまして、そういう備 えが出来たわけです。ノルウェーの場合、1969年に石油が産出されて僅か30年の間に、 ただ単なる組織面だけでなくて、インフラストラクチャー、流出に対しての防災機材を造 る産業の充実など、それは素晴しいものでした。30年前は全て、100%アメリカのものだ ったということですが、現在ではもう100%ノルウェー産です。それ位、産業面での波及 効果が大きいということです。当初は財源の問題がありました。二番目には事故などの後 の市民の意識、認識の問題です。流出事故に対する認識と組織化する能力。国レベルでも そうですが、民間レベルでここまで出来るとしても、取りあえず私達が一番問題にするの は、石油流出があれば、ロシア側のテリトリーを通るということです。大陸棚にしても、 領海にしても、ロシアの領海内で起きる可能性があるということ。これを如何に日本、特 に北海道、地方自治体が備えるかということが最大の問題ではないかと思います。政治的 に見て、二国間協定なり、地域間協定なり、或は、地域的な国際協定が必要です。ヨーロ ッパの場合ですと、幾多の地域間協定がございまして、そこでの法的な枠組があって、い ろいろな規程がございます。それに従って契約などがなされていて、石油流出の際には適 用される、ことこまかな規程がございます。そういう枠組を作れるかどうか。作らなけれ ばいけないのですけれど、どういう形で国も自治体もそれに向って進んでいくか、まずそ こから始めなければならないのではないかと思います。

村上: ありがとうございます。畠山先生、なにかございますか。法律を担当しております。

畠山: 畠山と申します。未だロシアの環境法を十分に勉強しているわけではありません。 確かに開発と環境は両方とも大事なものなのですから、きちっと法律で要件を決めて、法 律を執行する体制が備わってくるのが理想だと思います。ロシアには非常に多くの環境法 規があります。法律を沢山制定してきたという事実があるんですけれども、実は次のよう な問題があるということで、簡単にお話します。
 一つは法律の規定が非常に曖昧というのか、漠然としていること。例えば、油田を掘る ときの操業基準、操作基準なども未だ草案しか出来ていない。まだ見ていないということ もありますが、草案しか出来ていないような段階であります。それから事故処理の基準で すが、非常に漠然としていて、一般的なことしか書いていない、というふうに言われてお ります。それから、保険などにも入らなければいけない、と言っているのですけれども、 どうやら保険を引受ける会社がないだろう、ということも言われております。
 二番目の問題として、法律は沢山あるけれども、実はそれが執行されていない、という ロシアの現状でございます。人、組織、資金、そういうものが非常に不足しているので、 法律が執行されていない、それから罰則なども適用されていない、というのが現状です。 それから三番目が、これは非常に大事ですけれども、モニタリング、追跡調査が非常に手 薄だというふうに言われています。これもお金不足ということですけれども、こういうモ ニタリングの不足がロシアの環境保護の一番大きな課題だろうと思います。ロシアは最近、 規制よりは経済的な規制をやっています。今、環境税が盛んに言われているのですけれど も、実はロシアには沢山の環境税があって、いろいろな製品に税を掛ける。そうなると、 今度は逆に税をとるために生産を認めなければならない、といったこともあって、その点 でうまくいかないわけです。結局のところ、お解りのように、生産する人と規制するする 人が一緒なものですから、規制がうまくいっていないのだろうと思います。

村上: ありがとうございました。私の手元に質問が一杯ありますので、これから発言され たいという方がどの程度いらっしゃるか把握しておきたいと思います。これから質問なり、 発言なりをしたいと思われる方、挙手をお願いします。

質問(佐藤): 佐藤と申します。会社をやっています。休憩前、ずいぶん盛りだくさんの お話をいただきました。既に情報を得ている部分と、新たになるほどと感心させられた部 分とございます。結論を先に申しあげておいた方がよいかと思いますが、私はこのサハリ ン油田の開発に関しては、賛成の立場をとっております。そこをふまえて申しあげたいの ですが、杉本さんのお話はどうも納得しかねると考えております。それは何故かと言うと、 杉本さんがおっしゃっていることはよくわかります。私も同感です。ただし、それを優先 し、安全問題をさしおいて先へ突っ走るというのは、この地域に住む者として当然納得し がたいものがあります。
 私もこの問題をきちんと押えておりませんので、一般的であって、なおかつ、疑問を持 っていることを何点か挙げてみたいと思います。7月から出荷されるという状況になって いるにもかかわらず、いざという時が来ても、紋別空港、女満別空港は夜間使えないので す。折角、空港がありながら、事故に対して役に立たない空港です。きちっと整備してい って、サハリンで問題が起きたときには、即二十四時間体勢で航空機が使える、なおかつ、 ロシアとの提携によって即国境を越えられる、そういうものがもう既になければならない、 というのが私の持論です。もう一つは船舶にしてもそうです。先程、コルサコフその他に 油回収船があるとか、オイル・フェンスが用意されているといった類の説明がありました けれども、万が一、オホーツク沿岸にオイル・フェンスや油回収船が用意されたと仮定し て、今のところ、日本の船舶が国境を越えて油回収に向うだとか、日本のオイル・フェン スを持ってロシア領海に入っていって、オイル・フェンスを敷設出来るという保証はない わけです。これは、一昨年1月2日の、日本海のナホトカ号の事故を見て、当然日本の体 制がどうなっているかということを、我々は経験しているわけです。そういった初歩の初 歩の対策も打たれていないままに、7月出荷ですよということのみが突っ走っているので すから、オホーツク沿岸に住む者として、現状が納得出来ない情況にあると言わざるを得 ません。
 特に北大の先生方に私のアイディアとして申しあげたい事があります。私がこの油田開 発で最も問題だと思うのは、サハリン沖大陸棚開発、或はサハリン沖油田という呼び方で す。それは何故かと言うとですね、これは非常に貴重な資源ですし、開発はしていかなけ ればならないですけれど、冒頭に御指摘がありましたように、このオホーツクの圈域のな かで起る現象なわけですから、是非とも、オホーツク全体で、日本もロシアも含めた中で、 相互に情報公開しながら、オホーツク圈をどうするのかという議論をきちんとやりながら、 進めて行きたいわけです。こう申しあげて私の意見とさせていただきたいと思います。あ りがとうございました。

村上: ありがとうございます。地元からの指摘。大変貴重な意見だと思います。杉本さん はコスト負担のコンセンサスが必要となることを強調されています。今、佐藤さんは、安 全問題をさしおいて開発を進めるのは如何なものか、との御意見でした。どうぞ。

杉本: 御指摘ありがとうございます。ナホトカ号の原油流出事故があった時、実は私も大 変驚きました。私は石油開発の専門家ではありませんけれど、長年携っていて、まさか日 本海で国として油回収船を持っていないということは本当だったのか、と驚いたのです。 正直に言いまして、このサハリン開発でもそうですけれども、私はやはり国として、きち んとした対応を何故図らないのか疑問に思います。今日こういう重要な問題が議論されて いる。市民公開講座ということで、市民の方がお集りになる。これはこれでいいんですが、 パネリストの中に行政の方がどなたもいらっしゃらない。私は今日の主催者の方を非難す るつもりは全くありません。今日のパネリストの方々は非常に立派な方であります。ただ、 行政の方がどういうような立場をとっておられるのか、国政レベルとして、或は地方行政 レベルとして、その辺、私は非常に重要だと思っています。ただ、それでは行政の動きを 待っていていいのか。それはそれで早急にやっていただきたいと正直言って思っています が、それを待っていて経済開発が出来るのだろうか。これはまた別の問題です。現状は否 定出来ません。今の佐藤さんの御指摘。私はもっと真面目に政策レベルにあげて、おそら く、今村上さんが代表でやっておられる研究チームの成果は、そういうものにも反映され ていくんだろうと思いますけれども、それをなるべく早い内にやっていただきたいと思っ ております。
 それともう一つ。日本のいわゆる安全を守るという観点から言いますと、オホーツク圈 ということに限定しないで、先程申し上げましたけれども、アジアにおいて主導権を握る のはどこなのか、責務をもっているのはどこなのか。私は日本なのだろうと思います。従 って、海に限りませんけれども、アジアでの国際的な枠組をなるべく早く作りあげないと、 ここで皆さんが心配しておられるような事が起きた時に、取返しがつかないという事にな ります。私は知らなかったのですが、先程のお話でも、石油がかなりの汚染源になる可能 性があるそうです。特に漁業の問題もありますから、このままの状態でよいのか、という 問題が非常に大きいと思います。従って、私が申し上げたいのは、環境を守る、自然を後 世に残すということは我々の責務だということです。しかし、経済開発もこれが止った時 に、我々がどうなるのかという側面も注視をしていかなければならない。そういう観点で、 今、経済開発を止めるというわけにはいきませんし、7月から生産されてこれが北海道の 周辺を通って、日本に行くのか、何処に行くのか未だ決っていないようですけれども、や はりタンカーで輸送されるのは事実でありますので、その問題は重要ですが、開発は日本 の経済安全保障に繋がっていくのだと思っています。

村上: 今のお話でパネリストに行政の人が入らないのはどうしてか、という質問がござい ました。実は私も考えないではなかったですし、青田さんからは行政の人を入れろという お話もありました。しかし、行政の人を入れるとなると、まず地方自治体と道、海上保安 庁辺りに是非出席してもらわなければいけない。そうしますと、このプロジェクトを仕掛 けたのは何処か。私共が仕掛けているわけです。環境と開発という問題を真面目に考えよ うではないか、という提言をしているわけです。しかし、道庁は今の所非常に引けていま す。これをなんとか表舞台に出すためにはどうしたらよいだろうかということで行政の方 にも参加を呼びかけて、札幌では既に5回も個別の研究会を行ってきました。この研究会 には道庁の人も、あまり出席率はよくないのですけれども、出てきてくれています。一番 熱心なのは海上保安庁の方々です。非常に熱心にいろいろな人の報告を聴いていただいて おります。次の段階として、こういう行政の人に出てきていただいて、ディスカッション する必要があるのであって、今の段階ではもう少し市民の側の方を引っ張り出しておこう かな、という意図がありました。
 それから、今通訳をされております荒井さん。通訳をされておりますので、邪魔をして はいけないということで紹介を後にのばしておきましたが、本人からメモが廻って来まし たので、我々の強力な研究分担者であります荒井さんを紹介したいと思います。

荒井: 荒井でございます。私はこのプロジェクトの中では、主にサハリンの漁業が開発を どういうふうに受けとめているのか、ということを勉強したいと考えています。非常に大 きな問題が実はサハリン側にもあるということが解って参りました。それは何かと言うと、 仮に何らかの形で水産資源へ影響が及ぶような事が大陸棚開発の中で起きた時に、例えば、 これが石油生産者の責任で起きたとします。その場合に、その損害を補償する責任は石油 会社にあるわけですけれども、この補償を誰が受け取るのか。ロシアの現在の法律では、 水産資源は領海内であろうが、経済水域内であろうが、全て連邦政府の排他的な財産です。 従いまして、サハリンではいわゆる水産業界というか、漁業会社だとか、水産資源の利用 者は、全く損害賠償の対象にならないのです。そういう法律になっていないのです。例え ば、エクソンであれ、シェルであれ、仮にタンカーであればその所有者だとか、石油を買 った人達が補償をするとしても、ロシアの水産資源に対する賠償は連邦政府が受け取る。 こうした問題が未解決のまま動き出します。つまり、先程、日本でも未解決の問題がある まま開発が進んでいいのかという御指摘がありましたけれども、ある意味では、これは杉 本さんが御指摘になった通りですけれども、ロシアの主権の及ぶ所で、ロシア政府と契約 を結んで開発権を手に入れた人達に対して、私達の所では対策が進んでいないから開発を 止めなさい、と我々が言うことが出来る法的根拠がないということは、はっきりしている わけです。その問題を解決しないといけないと思います。
 ところが、ロシアの中にも、もっと深刻な問題がある。つまり、ロシアのサハリンの漁 業者にしてみれば、自分たちの経営とか生活に影響が及ぶような事故が起きても、その損 害賠償は、連邦政府の収入になるという法律のままで事態が進んでいいのか。やはり誰か が共同研究の中で問題をクローズアップして欲しい。ですから、極端な事をいいますと、 北海道の漁業者が損害賠償を請求している一方で、サハリンの漁業者は何の損害賠償請求 権もない、という状態が存在した時に、北海道とサハリンの間の水産協力そのものに影響 が及んでくる可能性がございます。こういう問題が次々出てきています。これは、どう解 決したらよいか、という気の利いたレベルまで研究を行っていません。こういった未解決 の問題がどれだけあるのかという発掘を、未だこれからしなければいけない、という所に 大きな問題があろうかと思います。

村上: どうもありがとうございます。大変重要な指摘で、我々もそういうことを考えてい かなければいけません。一言で大陸棚の開発と言っても、これの周辺の問題というのは、 非常に大きな問題がいろいろあるわけです。佐藤さんが先ほど問題を指摘されました。「黒 い流氷」という言葉が新聞紙上で取り沙汰されておりますが、紋別でこの問題に対して、 我々はどうする、という事をお話になったことはあるのでしょうか。一般に聞きたいので すが、まあ、佐藤さんに限らず、もし佐藤さんが答えられるのであればどうぞ。

佐藤: 私は、実は紋別ではなくて網走なので、網走の現状を申しあげます。私がこの問題 でちょっと声を大きくしたのが昨年の春ですけれど、その時点で、お前、何とぼけた事を 言っているんだ、どこからそんなガサネタ仕入れてきたんだ、という声が多かったのが一 つです。それと、10人か15人位でこの問題をちょっと考えてみましょう、というかたち で声を掛けましたところ、15人までは集ってくれました。新聞社がとりあげてくれまして、 記事にしてくれたのですが、私の予想通り15人しか集らなかったということは、新聞をご 覧になって顔を出された方はほとんどいなかったことになります。現在もそれほど変った 意識はないと思います。これには何が原因しているかと申しますと、ほとんど、何も情報 が入って来ない。行政も積極的にこの問題をとりあげたという経験がございません。それ で、情報がないから問題意識が生れないというのが現状だと私は考えております。

村上: ありがとうございます。どなたか紋別の方でこの問題についてお答えいただけませ んか。

質問: 先程、質問の手を挙げましたが、荒井さんの話を聴きまして、質問することがいや になってしまいました。今話し合われているにもかかわらず、学問に裏付けされた安全と いうものよりも、経済的なことが先に行って、安全が軽んじられているような感じが致し ます。それをどうのこうの言っても仕様のないことなのでしょうが、発言している方々か ら提言がありました、指摘がありました。学問は学問のためにあるのではなくて、それら を武器にして行政を動かすという迫力を皆さんに持っていただきたい、ということが要望 でございます。
 それから、紋別で行われている国際シンポジウムで、アメリカの先生が言っておりまし たけれども、このオホーツク海は世界の中でもここしかない位に水産資源の豊かな海であ る、と。これを守っていくのが我々の仕事なんだということを言っておりました。それも そうだと致しますと、これから人口が増えて参りますし、オホーツク海を守っていかなけ ればなりません。先程、サンクトペテルブルグの先生もおっしゃっていますが、これから こういうような安全対策をとらなければならないのだという研究成果を提言して、これが なければサハリン〜Uはやってはいけないのだ、という位の迫力を持ってやっていただき たいと思います。杉本先生がこの辺のことをなにか贅沢であると言っておりましたけれど も、日本はある程度贅沢でなければ、今の文化レベルを守っていかなければ日本ではない わけです。他の国と比較はそう出来ないと思います。日本が日本であるためには、豊かな ものを保っていかなければなりません。それが少しでもレベルが下がって来ると、世界恐 慌にも繋がるし、日本の責任もとっていけないと思うわけです。そんな関係で、是非とも、 オホーツクを守るためのことをよろしくお願いしたいと思います。紋別は海がなくなれば 沈むわけです。市民生活もなにもかもなくなるし、漁業者もなくなってまいります。それ だけに必死になって海を守ろうとしているわけです。漁業者は、サハリン〜Uがスタート したらどんなことになるのか、万が一、石油事故が起きたらこの海は、ちょっとでも臭い がつけば紋別の漁業は駄目になるのだ、ということを本当に心配しておりますので、どう ぞよろしくお願いします。

村上: ありがとうございました。

鴨下: 今の皆様方のお気持は良く解ります。ただ、私は皆さん方自らが、例えば先程ちょ っと国際標準規格の話を申しあげましたけれども、現実に行っているお仕事或は自分が住 んでいる環境の中で、自分達がまず国際的に最低限必要な姿勢を示さないと相手方はなか なか納得出来ません。今まさに地球がそれだけ狭くなってきています。ですから、そうい う一方方向の姿勢を要求するのではなくて、自分自身のまわりでこうやっているんですよ、 ということをまず自らやらないと、なかなか国際的に認めてもらえない。現実に北海道の 中でISO基準のそういう概念を企業スタンスとして持っているのは、たった40社しかあり ません。そういうことを皆さん方にもう少し認識してもらう必要があります。例えば、汚 染ということになると、通常、工業が汚染するよりも、生活している人達の汚染の方がず っと比重が高いのです。60数%は個人の汚染によるものです。従いまして、そういう認識 をきちんとしたスタンスの中で持ち得ないと、相手に対してそういうことを要求すること は、国際的な目線から言ったら、片手落ちの議論になってしまいます。まず自分のまわり からそういう姿勢を正すということが問われているとの認識を是非とも持っていただきた いです。

村上: ありがとうございました。今の紋別の方のお話の中に、学問が行政を動かしてほし いというようなお話がありました。

塚崎: 網走支庁から来ました塚崎といいます。行政に属しているものでございます。この 地域の市町村、それから私共の支庁でも、この油問題、環境問題については極めて重大な 問題意識を実は持っております。行政としては、現在、地域としても道としてもこの問題 は重要なので、国に対して是非確たる対応策を確立してくれ、或は情報をくれと要請をし ています。ただし、これは全般的な中でお願いをしているというのが実情です。もっとこ ういうことが足りないからこういうことをやって欲しいんだとの中身を詰めていかねばな らないと思っています。
 そこで、大変初歩的な質問で恐縮ですが、先生方の今までの研究の中で、もしお解りに なっていれば教えていただきたいことが三つございます。一つは、サハリン〜Uの開発会 社は石油流出事故に対する防災計画というものを作っているのかどうか。それから、二つ 目は、ロシアもしくはサハリン州は、このサハリン〜Uの開発会社の計画の提出を受けて、 国或は州としての対応策というものを作っているかどうか、三つ目は、事故発生時に日本 への情報ルートは確立されているのかどうかです。

村上: 私から答えられる範囲でお答します。まず第一の、サハリン〜Uが対応計画を作っ ているかどうかという御質問に対しては、作っていると言えると思います。ただし、それ が十分であるか、例えば西側の他の類似している場所と比べて、しっかりしたものである かどうかの評価は今のところ出来ません。何故出来ないかと言うと、緊急防災計画そのも のが手に入っていないからです。ただ、この夏にサハリン〜Uの開発がスタートします。 これを実施するには西側の公的金融機関からお金を借りなければなりません。EBRD(欧州 復興開発銀行)が環境アセスメントを担当して、条件をクリアした時にお金を貸すという ことになっているわけです。開発側にはそのレポートを提出する義務があります。それか ら、同時にサハリン州側に対しても、或は国家環境委員会に対してもそういうハードルが あって、クリアすべきものはそれなりにクリアしているはずです。ただ、残念ながら、我々 が必死になっていろいろ情報を相手方に求めていてもブロックされている部分が未だ残っ ていて、素直に出てきません。これを越えていかなければいけないという問題があります。 それから、われわれが普段この情報を手に入れるにはどうしたらよいか。一番簡単なのは、 インターネットで、サハリン・エナジー・インベストメントという開発側の統一会社のホ ームページを見れば、ある程度の情報を入手出来ます。ひとつにまとまった会社ですから、 インターネット上で引っぱり出すことが出来ます。問題は、それを更に深めた情報をどう やって手に入れるかです。これはロシア側との協力の中で、つまり共同研究の中で引き出 すしか方法が見あたりません。
 それから、日本への情報アクセスが確立されているのだろうか、という点では二国間、 或は道とサハリン州レベルでそういうパイプを作らなければいけません。昨年、堀知事が サハリンに行かれた時に環境の問題も出まして、三者間、アラスカ、サハリン、北海道で 環境協定を作りましょうという話が出ました。その後、いろいろもめましたが、今のとこ ろ、石油が出始める7月頃までにはなんとか環境協定を結びたいとのことです。ただ、具 体的にどういう中身の環境協定を結ぶのかということについては、今のところ協議の段階 ですので明らかにはされておりません。 皆川:今、座長が説明したことの補足ですが、開発会社とロシア政府との協定について、 作業環境、安全性の問題について協定には入っていますが、それを監督する機関が未だ整 備されていません。それを充実させるということで、現在、アメリカとノルウェーとロシ アの間で、三者協議が行われています。そして、大体のところ、ノルウェーの監督機構が そのままロシアに導入される方向で詰めを行っておりまして、その費用は欧州開発復興銀 行が担当する方向で行っております。ただ、既に協定を結んでいるところの監督もカバー するのかどうかということは解りません。国際的な支援はこういった形で行っているので すけれども、これだけでは十分ではないと私は言いたいのです。先程杉本さんが言ったよ うに、日本がリードして行くという、この地域の協定が必要です。その他、石油が流出し た時にはどうするか、ということで、実はノルウェーとムルマンスク州とモスクワ連邦政 府のエネルギー省との間で協定が結ばれております。これは、どういう形で財源をどこか ら持ってくるか、これも一揃えノルウェーから学んでいるものです。というのは、ノルウ ェーのスタット・オイルという国営の石油会社が、現在、ムルマンスクの北の石油開発で 投資を始めています。もし石油が流出した場合はロシアの方向に流れて行きます。ノルウ ェーの方には来ないといっております。ですから、ロシア側もものすごく熱心なのです。 このような二国間協定の経験を学び、ロシア側と同じような協定を結んだらよいのではな いかという提言をしたいと思っております。

村上: ありがとうございます。それでは、前もって出ております質問にそってお答えした いと思います。それぞれ専門の分野でお答え願います。
 まず第一は、原油流出事故の原因として、パイプラインの破損、タンカー事故が考えら れますが、それ以外の要因による原油流出事故として、どのようなものが考えられますか、 という御質問です。
 二番目に、海底に敷設するパイプラインがもし結氷期に流氷や他の要因などで破損し、 原油が流出した場合、修復にかなりの時間が必要だと思いますが、その修復方法にはどん なものが考えられますか。

佐伯: 二つの方法があります。一つはパイプラインを出来るだけ海面まで持ち上げて、そ こで破れた所を補修する。その前に管のなかの油を抜く作業が必要です。管は繋がってお りますから、持ち上げるのはものすごく大変です。長い延長を掘って、持ち上げることに なります。もう少し簡単な方法は、破れた場所をまず見つけて、パイプ中の油を抜きまし て、そこに密閉型のものを管にくっつけ、その中で作業をする。この二通の方法がありま す。
 実は昭和60年代に、我国の石油関係の海洋構造物に対してどのような技術を開発したら よいのか、という議論がされた中、補修方法が課題となっております。その後、世界的に もっと進んだパイプラインの補修方法は今のところ無いという事でございます。 村上:その次の質問ですが、新鮮な魚介類という表看板がオホーツクの特色ですが、どの 程度の原油流出事故で、魚介類、中層と下層の部分で実質的な影響があるのか、という魚 に対する影響の問題が、三つ四つ、同じような内容で寄せられています。先程、エゾバフ ンウニについて説明しておられましたが、併せてお願いします。

中尾: 一年貝ホタテ幼貝への影響ですけれども、界面活性剤ノニルフェノールの各濃度の 海水に、48時間、36時間、24時間浸して、50%が死ぬ濃度がこれです(図−6)。せいぜ い1.5から0.4ppmで非常に低い濃度です。原油流出があった場合、どんな種の界面活性剤 がどの程度使われたか、その拡散はどのようになるか別にきちっと調べなければなりませ ん。ただホタテ貝が50%死亡する濃度は生死への影響ですが、死亡しないまでも例えば摂 餌能力への影響はこの濃度よりさらに低いと思われます。50%死亡濃度の十分の一の濃度 で既にホタテ貝のろ水力(摂餌力)は落ちてきます。三日間、五日間の浸し時間の両方で同 じように落ちてきます(図−7)。つまり、生死ではなくてそれの十分の一の濃度でろ水量 が落ちてきますから、ホタテ貝の摂餌量が落ちて、段々と痩せてくることになります。生 死で界面活性剤の影響を考えるのは非常に危険なことです。もっと低濃度で、ここでは十 分の一のレベルですけれども、ホタテ貝に影響が出て来ます。このような低濃度でも常に ホタテ貝に影響がでるということを頭に入れておかなければいけないと思います。

村上: 次の問題ですが、原油流出事故で一番影響を受けるのは水鳥です。日本ではオホー ツク海の沖合の海鳥についてのデータは全くありません。この点をどう思われますか。又、 事故に備えての対策協議会に鳥の専門家がどうして入っていないのでしょうか、という質 問です。このなかのメンバーにはいませんが、野鳥の会のメンバーとして、荒井さん、如 何ですか。私はこれを機にまともに取組んで行かなければならないという認識は持ってい ます。

荒井: メンバーの中にいないのは何故か、それは非常に簡単なことだと思います。三年間 のプロジェクトで野生生物の調査をやれと言っても無理です。十年、二十年のデータの蓄 積がなければ出来ることではありませんから、メンバーに入ってもしょうがない。しかし、 研究していないかというと、いろいろな人達が行っているわけです。長いスパンで研究さ れている方々と、どういう形で協力をしていったらよいのかということについて、考え方 が見つかれば良いと思うのです。サハリンについて具体的に言いますと、海鳥調査はサハ リンにあります。漁業・海洋学研究所には研究者がいます。ですから、こういうところに、 今までどの位のスパンのデータの蓄積があるかということを我々が調べて行って、そうい うデータを如何にして、これから協力出来るのか。例えば、道の環境科学センターが同じ 様な勉強をされているでしょうから、おそらく色々なことが出来るのでしょう。ですから、 この3年間の研究の中では、長期的なモニタリングが誰によって、どの程度行われている のかという事だけは見つけて行きたいと思います。

村上: 具体的には環境アトラスで生かされて行くことになるでしょう。例えば、英国では 100年以上に亘る野鳥の会の伝統があります。危機管理計画を作るにあたって、このよう な組織がデータを提供し、環境アトラスに織り込んでいます。
 次の問題ですが、開発現場の大規模油流出事故及び事故タンカーの油流出の防除体制の 現状を知りたい、ということですが、私が説明した以上のことでなにかございますか。

北川: 国際会議としてオイル・スピルの会議が二つありまして、一つは全体的な国際会議、 もう一つは極域のオイル・スピルの会議で、これが営々と続いております。そこには色々 な防除体制のプレゼンテーションがございまして、私の調べでは6%位が実用化されてお ります。あとの94%はアイディア止まりという状態です。これは、スピルのスケールによ って様々な手当がありまして、それをお話しすると長くなりますが、沢山の方がアイディ アを出されておりますので、私共のオホーツク海に一番適した防除体制をこれから考えて 行かなければならないと思います。佐伯先生が一所懸命研究されていますので、私共は大 変期待しております。 村上:タンカーが航行した時、環境への影響はどうなのか。荒廃はどうなのか。大変大き な問題なのですが。

北川: 質問がやや莫としておりまして、一体どうお答したらよいのかわかりません。ただ、 タンカー事故がもたらす海洋汚染については、先程の資料の通りでして、大変大きなもの があるということがわかっております。国際海事機構(IMO)という組織がありますが、そ こでのいろいろな要求、仕様が段々と厳しくなっておりまして、それに則って船が設計さ れ、運航されていれば、さほど危惧すべき問題はないと思います。例えば、船内のいろい ろな廃棄物の処理にしましても、数年前とは全く違う厳しさになっております。そういう ことでは、さほどの問題ではございません。ただ、私共は北極海航路を通って、ノルウェ ーの方から日本の海域まで船を航行させる計画を研究しているわけですが、そこでは、か なりの数の船舶の運航が海洋環境にどういう影響を及すのか、という研究がされておりま す。いずれ機会がありましたらそれを御報告したいと思いますが、例えば、船のプロペラ 騒音や、氷の中に開水面が出来たことによる海洋固有の生態系への影響が検討され、繁殖 地への影響も議論されました。このような研究成果はいずれサハリン周辺の問題にも参考 になるのではと思います。

村上: 次の質問は海象の問題です。サハリン・プロジェクトの関連施設建設で、大きく沿 岸などの海流、潮流、それから気温、海水温度などに変化が起きるのかどうか、起きたと するとその影響は、オホーツクの海域の温暖化、或は流氷の到来に変化が生じるのでしょ うか。

青田: 非常に難しい問題です。どの位の油がどの程度海面をカバーしたのか、ということ を決めれば、私自身ではなくとも、油の膜が表面を覆った為に海面からの蒸発がどの位抑 制され、それがオホーツク海域の気温にどれほど影響し、ひいてはこの海の循環や気候変 動に影響するか、ある程度想定出来ると思います。現実の掘削規模では、地球規模の海洋 循環、大気循環への影響、地球温暖化まで考える必要はないと思います。それよりは海洋 生物、水産資源などへの被害が問題となるでしょう。石油が流出し続けたら、それは起っ た現象の規模によります、と言うより他ないと思います。

村上: ありがとうございました。次は防災対策についてです。流氷を利用した沿岸の被害 を最小限にする方策、或は、寒冷時期の低温を利用しての有効な油の回収方法といった研 究の余地はないのでしょうか。

佐伯: サハリン〜Uでは1999年7月から生産が始まりますが、冬場には生産しないとい うことですから、当面は流氷期の事故はあまりないのではないかなと考えております。た だ、原油を冷しますと、蒸発量とかはあまり変わりません。先程、中尾先生のお話にあり ました通り、原油の毒性の強いのは揮発性の部分です。それが2日位で気温に関係なく蒸 発してしまう。そういう意味では、もし北海道近海に来るとすれば、蒸発成分がなくなっ た状態で来るということになります。
 それから、もう一つは、波浪の作用により水を含んでムース状になる。ムース状になっ たものは、温度が低くなると堅くなるのです。逆に言えば、普通の漁船の網で補足出来る 状態になります。もし寒いときに流出があった場合、かなり堅いものになりまして、堅さ から言うと、棒状にしても曲らない位堅いものになります。大きめの網でとれるような状 態になりますから、そういう意味では回収しやすくなると言えます。ただ、実際には、も し流氷の下に潜り込んだら、冷たいですから油層下面の海水も凍結し、流氷は更に成長す るわけです。原油が揮発成分を含んだままのサンドイッチ状になって流れて行く。これは、 流氷が溶けるまで回収されない。要するに、回収しようとすると、氷ごととってしまわな いと、海中に流れて非常に厄介なことになります。ですから、もし、生産地で事故が流氷 時期に起ったとすれば、出来るだけ早く回収しないと、事実上回収不能になってしまう。 春には流氷の中に入っていた原油が流れ出してくる。先程青田先生の話の最初にあったよ うに、襟裳岬などで氷の中に詰った原油が流れ出ることも起こりうる。そういう意味では、 寒冷地では冷えることによってプラスの面もありますが、原油が氷の中に入ってしまいま すと、氷の中に入ってままになって、回収不能になってしまうということでは非常に厄介 なことです。冷たいことが良い場合もありますが、悪い場合もあります。

村上: 今のお答に関係してこういう質問が来ています。廃油ボールの話ですけれども、数 十年の原油生産活動に伴い、廃油ボールの沿岸漂着が懸念されないでしょうか。これを監 視、調査するとすれば、どの辺りを監視、調査地点にするのが適切でしょうか、というこ とです。

佐伯: 実は皆様御存知の様に、中東から日本へと、タンカーの廃油ボールが出てくるとい うことで、今、北海道は環境問題にナーバスになっています。我々日本にやって来るタン カーは中東から延々とやって来た。国内でもそうですね。 
 流出油は最初のうちは浮いていますが、そのうち沈んで行きます。比重が海水に非常に 近いものですから、場合によっては沿岸に流れて行く。ですから、水中にあるのは見つけ られませんけれども、浅い、沿岸などに上がってきた時に初めてわかります。南洋の島、 日本の島でも、沖縄でもそうですが、砂の上にボールが打上げられることになります。

村上: 今の問題の延長線上に、海底地質や水産動物、植物などの調査の必要はないのでし ょうか、という質問、さらに汚染海域の活性化対策にどんなものがあるか、という質問も あります。水産資源に与える影響の面で、汚染された海洋をきれいにする方法はどんなも のがありますか。

佐伯: 物理的な方法で初期の段階に出来る限り回収するということです。なるべく早いう ちに、短期間のうちに回収する、これが大事なことです。その後はいろいろ方法がありま す。例えば、海中に油を分解するバクテリアを入れるとか、バクテリアを活性化するよう に栄養を与えてやる、というような方法がやられておりますが、一つの油の事故が起って いる所では、そういうバクテリアの量が多いのです。ところが、寒い地方では、寒くなる と活性能力が落ちますし、バクテリアの数も少ない、というのが現実ですから、そういう 意味では、なかなか結果が期待出来ないのではないかと言えます。

北川: これはエクソンバルディーズ号事故後蒐めた資料の一つです(図−8)。この写真で は同じ年の1月から9月の間に、これほど植生は回復しています。ただ、植生は回復して いますが、中尾先生が言われるように、水産資源として商品になる産物を提供出来るよう になったかということになると、それは別だと考えております。いろいろな化学物質を 撒くことについては、ノルウェーは、イギリスと違って、駄目だという見解をもっていま す。これはやはり海産物の国だからです。私共が外国に習うのであれば、やはりアメリカ とかイギリスではなくて、沿岸海産物で生命をつないでいる国から学ぶべきであろうと考 えます。

村上: ありがとうございます。時間が過ぎていますが、もう一つだけ質問にお答えいただ きたいと思います。観光資源として流氷を一定期間プールして置くことは技術的に可能で しょうか。防波堤、アイス・プールの逆発想。紋別市の広域構想の一つで考えたいのです が、ということですが。

青田:原 理的には一時流氷を保持しておくことは出来るでしょうけれども、そういうこと は止めた方がいいのではないかと思います。自然ですから。より自然を求めて観光客が来 る、失われた自然を求めて人々が来るようにしたほうがよいと思います。

村上: 極めて明解な答でした。十分程過ぎましたが、最後に、フロアーからどうしても発 言したいという方がいらっしゃいましたら、挙手を願います。

大館: 大館と申します。先程、鳥の問題でとんちんかんな質問をした方があると思ってい ます。私が言いたかったのは、データがない、というのが一つ。日本に於いて、オホーツ ク沿岸の海鳥のデータは全くありません。日本では、この件に関して発表されている論文 は皆無に等しいと思います。海氷期に於けるロシア側の論文も、僕が読んでいるのはさほ ど詳しいものはないようで、航空機からやったものしか無いようです。危機管理の部分で、 もしタンカーが紋別沖で座礁した場合、当然、そこから油の流出があるだろう。そこで一 番最初にその影響を受けるのは海洋生物だろうと思います。一番目に見えて影響を受ける のは野鳥です。このあいだ、ナホトカ号の流出事故の時に回収されたのは2千羽に満たな かったのですけれども、実際にはその20倍は被害を受けているとみられます。千何羽回収 されて、その内もとに戻ったのは約2割ですが、それがはたして100%生存したかどうか は、又、別の問題です。危機管理の部分で、事故が起きた場合に、鳥の専門家がいないで、 どうやって対処するのか。去年、紋別ででも、対策協議会が、確か一回だったかやられた と思うのですけれども、その中に環境の専門家が誰も入っていないのです。あれだけ野鳥 の被害が大きかったというのが大々的にニュースになって、延々と語られていて、おまけ に去年は、野鳥に対する油汚染の救護マニュアルなどという本まで出版されています。そ ういうものがありながら、地元の行政にはそれの危機管理が全くない。そこに私は危機感 を抱いております。これから当然、10年、20年と鳥などを研究して行かなければならない けれども、その辺のデータ採りを今年からでも始めてもらう。そのようなことをやってい ただきたい、というのが私の要望です。

村上: 質問の要旨がよくわかりました。そろそろ時間ですので、これで終了したいと思い ますが、まとめると時間が掛りますので、感想を述べさせていただきたいと思います。  
 紋別に出かけて来て、こういうセミナーをやってよかったな、と思います。生の市民の 声が、そんなに多くを聞く時間がありませんでしたが、こういう真剣な方々がいらっしゃ るということに感激致しました。我々研究者に突きつけられている課題は、大変大きくて、 私がここで、はいわかりました、やりましょう、とは言えません。どれ一つとってみても、 非常に長いことかけて研究しないと成果が出ないものであります。しかし、一方では、開 発というのは着実に進められている。そのなかで、油が漏れないようにするにはどうした ら良いのだろうか、漏れたらどうすれば良いのだろうか、ということを考えて、対策をと っていかなければいけないわけです。実際にそういうプランをつくるのには、行政が先に 立ってやっていかなければいけないわけですけれども、少しでも我々の研究していること が生かされるような方向でもっていければいいな、と思っています。
 それから、これで一回こっきりではなく、別の機会を設けたいと思いますし、札幌では 時々、スラブ研究センターをベースにして研究会も行っております。私共も、案内のチャ ンネルが出来たような気がしますので、是非皆さんと一緒にこの問題を考えて行きたいと 思います。本日はありがとうございました。


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