Eurasia Unit for Border Research (Japan)

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What's New Archives

2016.02.01

人間文化研究機構「北東アジア地域研究推進事業」キックオフ・シンポジウム

人間文化研究機構「北東アジア地域研究推進事業」キックオフ・シンポジウム

 2016年1月23日~24日、大阪の国立民族学博物館にて「東北アジアの再発見」というテーマでキックオフ・シンポジウムが開催された。このシンポジウムは、人間文化研究機構(NIHU)の「北東アジア地域研究推進事業」の一環として、とりわけ「北東アジアにおける地域構造の変容:越境から考察する共生への道」という研究テーマを中心に、国立民族学博物館、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター、東北大学東北アジア研究センター、富山大学極東地域研究センター、そして島根県立大学北東アジア地域研究センターがネットワークを形成してプロジェクトを推進している。

 本シンポジウムの第一セッションは、岩下明裕(北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター/UBRJユニットリーダー)が組織し、河龍出(ワシントン大学、アメリカ)、セルゲイ・セヴァスチヤノフ(極東連邦大学、ロシア)、楊成(華東師範大学、中国)、三村光弘(環日本海経済研究所)、デイビッド・ウルフ(北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター)、を招き、「なぜ東北アジアでは国境を越えた協力構想を構築できなかったか」というテーマの下にてパネル・ディスカッションを企画・運営した。このセッションでは、東北アジアの協力構想という命題について、歴史、経済、安全保障、地政学、国内政治、文化とナショナリズムという切り口でその成果と課題について発表があった。この30年間ある程度成果もあったが、東北アジアにおける地域統合にはほど遠いのが現状であり、また近年南シナ海や東シナ海における衝突などによって緊張は益々高まる一方である。しかし、この地域において、優先されるべきは安全保障の仕組みと信頼醸成であることはいうまでもなく、今後東北アジアの地域協力ないし地域統合のためには、お互い共通の利益を推進し、また直面している共通の危機を打破するため、さらなる協力が必要となることを確認した。

 質疑応答では、いままである程度成功した枠組みなどをより有効活用できないかという問題や、また伝統的な安全保障だけでなく、人間の安全保障における協力体制の可能性などについて議論が活発に行われた。

(文責 池 直美)

20160123NIHU_North-East Asia.png 第一セッションの様子(左から岩下明裕、河龍出、セルゲイ・セヴァスチヤノフ、楊成、三村光弘、デイビッド・ウルフ)

2016.01.08

地域研究コンソーシアム(JCAS)次世代ワークショップ(ボーダースタディーズ枠)開催報告

地域研究コンソーシアム(JCAS)次世代ワークショップ(ボーダースタディーズ枠)開催報告

JCAS_Sudan.jpg 2015年12月18日(金)、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所にて、本年度のJCAS次世代ワークショップ(ボーダースタディーズ枠)が開催されました。モハメド・オマル・アブディン(東京外国語大学)と橋本栄莉(九州大学)の両氏が企画責任者として組織した「領土の再編と地域研究:南スーダン独立後「スーダン地域」再考の試み」について、開催報告が寄せられましたので掲載いたします。今回のワークショップでは、「様々な分野を専門とする若手のスーダン地域研究者が、領土・境界・集団という問題系を共通のテーマとした最新の研究成果」を報告し、2011年に南北に分断されたスーダンを一つの地域として再考する試みがなされたとのことです。政治学・人類学・言語学・難民研究といった多様なディシプリンの若手スーダン地域研究者が集い、学際的で意欲的な議論が展開されたようです。研究成果の今後の『境界研究』誌や『Eurasian Border Review』誌などへの投稿が望まれます。開催報告はこちらからダウンロードしてご一読ください(上の画像はワークショップ概要で、クリックで拡大します)。

2015.12.24

岩下明裕ユニットリーダーが国境観光のこれまでの取り組みについて講演

岩下明裕ユニットリーダーが国境観光のこれまでの取り組みについて講演

 2015年12月18日(金)、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター公開講演会が行われ、UBRJユニットリーダーの岩下明裕教授が「地域を変えるボーダーツーリズム 対馬・サハリン・オホーツク」と題する講演を行いました。日本学術振興会実社会対応プログラム「国境観光:地域を創るボーダースタディーズ」をベースに、UBRJが重点的に取り組んできた国境観光(ボーダーツーリズム)のこれまでの取り組みについての講演でした。岩下ユニットリーダーが花松泰倫(九州大学持続可能な社会のための決断科学センター)、島田龍(九州経済調査協会)、高田喜博(北海道国際交流・協力総合センター)、浜桜子(エムオーツーリストCIS・ロシアセンター)らとの協働の下で築いてきた実際の国境観光ツアーは、日本の国境地域を国家のデッドロックとして捉えるのではなく、国境の先へのゲートウェイとして捉え直すことを、国境自治体と密接に協力しつつ実地で行うことを目的としてきました。このような国境概念のパラダイムシフトを促す国境観光は、日本のマスメディアから大きな反響を呼び、2013年12月に行われた「対馬・釜山「国境観光」モニターツアー」から2015年10月の「道東ボーダーツーリズム「オホーツク・ゲートウエイ」」に至るまで新聞やテレビ媒体で取り上げられております。また、『現代用語の基礎知識2016』の「時代・流行」コーナーでも用語解説がなされました。今回の公開講演会では、一般社会の中で「ボーダーツーリズム」が概念としても実態としても定着してきたそのプロセスを総括するものとなりました。岩下は、日本における国境観光のあり方を「クロス(異なる空間を移動し連関・比較する)」、「トランス(複数空間を連結、ルートの多角化)」、「境界地域(ボーダーランズ)」という三つの概念からまとめております。稚内=サハリン航路の廃止というニュースは非常に残念なものではありますが、八重山・台湾ツアーや新潟発の中ロ国境ツアーなど新たな企画も走っております。今後の国境観光のさらなる発展と、知的刺激が豊かなアカデミック・ツアーとしての国境観光ツアーへの参加の呼びかけがなされ、講演会は締めくくられました。
 本セミナーは、師走の金曜日の晩という時間帯にもかかわらず39名の方にご参加いただきました。学部学生が多く参加し、しかも鋭い質問を投げかけるなど、ボーダースタディーズの裾野が確実に広がっていることを印象付ける場となりました。公開講演会にご参加いただきました皆様、ありがとうございました。

(文責:地田 徹朗)

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2015.11.30

境界研究日本部会が暫定発足し、池直美・北海道大学講師が代表に就任

境界研究日本部会が暫定発足し、池直美・北海道大学講師が代表に就任

 2015年11月23日(月祝)、九州大学韓国研究センターにて境界研究日本部会の設立準備会合が開かれ、暫定発足が決まりました。境界研究日本部会は、現在16名の正会員と3名の準会員から構成され、代表にUBRJメンバーでもある池直美(北海道大学公共政策大学院)が、役員に川久保文紀(中央学院大学)、花松泰範(九州大学持続可能な社会のための決断科学センター)、テッド・ボイル(九州大学アジア太平洋未来研究センター)が選出されました。事務局は九州大学アジア太平洋未来研究センターに設置され、ウェブサイトの開設も予定されています。境界研究日本部会は、将来的にはAssociation for Borderlands Studies(ABS)との連携を目指し、日本での境界研究を先導し、アジア各国のボーダースタディーズの専門家およびコミュニティとの協働を行うためのフレームワークとして機能していく予定です。UBRJも継続的に支援をしていきます。皆さまの境界研究日本部会へのご支援をどうぞよろしくお願いいたします。

2015.11.26

ボーダースタディーズ福岡シンポジウム「領土という「呪い」を考える」(11/23)参加記

ボーダースタディーズ福岡シンポジウム「領土という「呪い」を考える」(11/23)参加記

 11月23日(月祝)、九州大学箱崎キャンパス国際ホールにて、ボーダースタディーズ福岡シンポジウム「領土という「呪い」を考える」が開催されました。九州大学アジア太平洋未来研究センター(CAFS)と北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター境界研究ユニット(UBRJ)が主催し、本年度の我が国でのボーダースタディーズのメインイベントとなる行事でした。これまでのUBRJ主催行事の中でもっとも「地理学的」な方向性が強く出た会議だったと思います。

 シンポジウムは3部構成で、冒頭で九大関係者のご挨拶をいただいた後、政治地理学の国際的権威であるジョン・アグニュー(カリフォルニア大学ロスアンゼルス校)による基調講演が行われました。講演のタイトルは「グローバル化の時代の地政学」。グローバル化というと、ボーダーを越えた流動性やネットワーク性に焦点が当てられがちだが、現実には国家間のヒエラルキーは克服されず、グローバル化されている地域とそうでない地域の差異があるなど、空間的視点から世界を捉える地政学の役割は未だに大きい。その上で、アグニュー氏は、グローバル化そのものの地政学、開発の地政学(geopolitics of development)、(グローバル化と時として逆行する)規制の地政学(geopolitics of regulation)という三つの視点からクリアーカットに今日の世界の地政学的状況について論じました。これに対し、コメンテーターの山﨑孝史(大阪市立大学)は、経済のグローバル化がそれに対応できない「失敗国家(failed states)」を生み出してしまっている今日の世界の中で、経済的な分極化がテロリズムの脅威などにも結び付いていることに鑑みれば、グローバル化した世界の中での平和の地政学(geopolitics of peace)を構築する必要があるのではないかと応答しました。

 第二セッション「主権への挑戦:対立する領域を超えて」では、岩下明裕(北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター/UBRJユニットリーダー)がまず登壇し、根室(北方領土)と沖縄(米軍基地)を取り上げ、政府が主権を有していると主張していても現地の住民が入れない(つまり、実効支配をしていない)地域の問題について論じました。主権そのものを潰したりすることは無理である以上、重要なことは境界の現場に住む人々に対していかに良い方向性を示すことができるのか、これは実務との協働の下でのボーダースタディーズの一つの大きな役割であり、国境観光振興もその一つの要素だと紹介がなされました。次いで、シム・サンジン(京畿大学校、韓国)による、1998年から2008年まで機能していた北朝鮮での金剛山観光プロジェクトに関する報告が行われました。現代と総裁と金正日が1989年に協定を結んでから動きだし、10年の時を経てようやく実現したプロジェクト。北朝鮮の境界地域の経済的弱者を観光という手段で救済する、南北に分断された親族の面談機会を提供する、南北朝鮮の市民の融和を図るなどの意図があったとのことです。国境観光が平和に資することを実態として示している報告でした。

 第三セッション「ボーダーをアートする」では、美学的な対象としてのボーダーについてや既存のボーダーをを批判的に検討する手段としてのアートやアーティストの役割について、アンヌ-ローヌ・アミルハト-スザリ(グルノーブル・アルプス大学、仏)と、シリア出身のアーティストであるアブダッラー・オマリーによる報告が行われました。当初参加予定だった、イラン出身でニューヨーク在住のキュレーターであるマフサ・マーゲンターラー-シャムサイー女史は都合で来日できず、彼女のビデオ映像が上映されました。各報告では、アーティストは単にボーダーを通過するだけでなく、ボーダーそのものにもメタファー以上の美学的価値を見出し、ボーダーでの実態を批判的に描写する主体であると同時に、アートそのものにボーダーや文化を越え普遍的な価値があるという点が強調されました。これに対し、コメンテーターのシンシア・ボーゲル(九州大学)は、消費物であるアートの市場や流通という側面からアートとボーダーの関係をどう捉えるのかという指摘がなされました。

 シンポジウムでは、基調講演の司会をポール・リチャードソン(マンチェスター大学、英)、第二セッションの司会を池直美(北海道大学)が、同コメンテーターをジェイ・ジェイ・ジャン(香港大学)、第三セッションの司会をテッド・ボイル(CAFS)が務め、総括報告にはユッシ・レーン(東フィンランド大学/ABS事務局長)が登壇しました。彼らは全員、グローバルCOEプログラム「境界研究の拠点形成」時代の境界研究サマースクールの参加者であり、懇親会も含めて同窓会のような和気藹々とした雰囲気だったのがとても印象的でした。

 最後に、午前中の打ち合わせからシンポ本体、夜の懇親会まで、準備とロジに奮闘していただいた、CAFSの皆様に感謝申し上げます。

(文責: 地田 徹朗)

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2015.11.20

ラジャ・モハン氏をお招きしてUBRJセミナーを開催(11/19)

ラジャ・モハン氏をお招きしてUBRJセミナーを開催(11/19)

 2015年11月19日(木)、インドのオブザーバー・リサーチ財団のラジャ・モハン(Raja Mohan)氏をお招きして、UBRJセミナーを開催しました。モハン氏は外務省による招聘で来日中で、東京では数多くの面談と意見交換をこなされた後での来札でした。「アジアのバランス・オブ・パワーとインド」というタイトルの報告でしたが、中国によるインドの周辺各国への経済進出が顕著になる中でのインドと日本と米国のパワーバランスにおける役割について力説していた点が印象的でした。質疑応答も含めると、話題はアジア・太平洋地域から欧州・中央アジア・ロシアにまでおよび、今日のユーラシアにおける地政学的状況を考える上で格好の機会となりました。インドでのオピニオンリーダーの一人であり、インドからの留学生が多くセミナーに参加していた点が印象的でした。

(文責:地田 徹朗)

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2015.11.13

ABSニューズレター"La Frontera"最新号の刊行

ABSニュースレター"La Frontera"最新号の刊行

 岩下明裕・UBRJユニットリーダーが会長を務めるAssociation for Borderlands Studies (ABS)のニューズレター"La Frontera"の最新号がABSホームページにアップされております。ニューズレターの冒頭、岩下会長による挨拶文が掲載され、アジアの境界研究を束ねる境界研究日本部会の試行についてアナウンスされました。16~17頁には、3月に行われた九州大学アジア太平洋未来研究センターとの共催シンポジウム「アジア太平洋のボーダースタディーズをつくる」の様子や11月23日に行われる境界研究の世界的権威であるJohn Agnew氏を招いての国際シンポジウムの告知について、テッド・ボイルの筆による記事も掲載されています。こちらのページよりダウンロードしてご覧ください。

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2015.11.11

日本国際政治学会 公募部会「国際秩序と領域性の変容―圏域・境界・統治」参加記

日本国際政治学会 公募部会「国際秩序と領域性の変容―圏域・境界・統治」参加記

 去る10月30日から11月1日まで、仙台国際センターにおいて、日本国際政治学会2015年度研究大会が開催された。日本の安全保障をめぐる共通論題部会をはじめとして、16の部会と33の分科会が設定されたが、その中のひとつとして、公募部会「国際秩序と領域性の変容―圏域・境界・統治」が企画された。岩下明裕北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター境界研究ユニット代表が司会を務めた。近代以降の国際秩序の重要な構成原理の一つである「領域性」の変容について、高橋良輔(青山学院大学)が圏域の理念を形成した古典地政学の思想とその現代的展開、川久保文紀(中央学院大学)が国境の機能変容を考察するボーダースタディーズ、内田智(早稲田大学)が統治の正統性を問い直すデモクラシー論という三つの分析視角から検討を行った。

 第一報告は、高橋良輔による「ポスト冷戦秩序の融解と古典地政学への回帰」と題するものであったが、その中で、高橋は、まずポスト冷戦秩序とは、アメリカによる圧倒的なパワーに基礎をおくリベラルな国際秩序と論じた。そして、その「融解」プロセスが古典的な地政学の復権(H.マッキンダー、N.マハン、A.スパイクマン)をもたらしているという時代の回帰性について、アメリカの覇権衰退によるグローバルな空間性の崩壊、および「不安定の弧」などを代表とするユーラシア圏域構想の形成という観点から検討を行った。「地政学の逆襲」(R.D. カプラン)が前景化している現在の状況は、アフガニスタン、イラク、対テロというゼロ年代の3つの戦争を遂行する中で、アメリカの覇権をめぐる言説が変容している証左であることも論じられた。

 次に、川久保文紀による「9・11テロ以後の領域性と国境の揺れ動き―IRとボーダースタディーズからの示唆」と題する報告が続いた。まず、川久保は、90年代以降に出現してきた「フラットな世界」(T.フリードマン)や「地理の終焉」(R.オブライエン)などの主張は、グローバル化による「脱領域化」が領域国家システムの溶融に帰結するというものであったが、ポスト9・11の世界においては、とりわけ欧米を中心として、国境の機能的強化を試みる政策的兆候が顕在化しており、グローバル化による「脱領域化」と地政学的な「再領域化」が並存し得るという両義的な解釈を提示した。その上で、J.アグニューの所説に依りながら伝統的なIRの国境概念のもつ認識論的・存在論的前提を批判的に考察し、ボーダースタディーズにおける「国境の透過性」や領域性のリスケーリングという観点から国際関係における空間的次元を重層的に理解する必要性について論じた。

 最後に、内田智による報告「国境横断的な熟議デモクラシーの正統性と代表性」では、EUにおける「デモクラシーの欠損」をめぐる論争に注目し、国境横断的なデモクラシーにおける代表性の問題について、2009年に実施された討論型世論調査Europolisを事例としながら論じられた。内田報告では、近年のデモクラシー論における「熟議的転回」を受けて、多元的な統制システムを備えたEUという政体においていかにして民主的正統性を確保していくのか、とりわけいかにしてミクロレベルでの熟議空間をマクロな意思決定過程に接続させていくのか、という観点に着目する「熟議の制度化」構想が検証された。国境横断的なデモクラシーの可能性を、EUにおけるデモスの領域性と代表性とを絡めながら分析する視角は、欧州議会や補完性原則などのEUのガヴァナンス構造に関する再検証を促し、その制度化条件を探る上での必要な論点であることが示された。

 討論者は、宮脇昇教授(立命館大学)と前田幸男准教授(創価大学)が務め、3人の報告に対して有益なコメントや質問が投げかけられた。部会のメインテーマである国際秩序論をどのように各自の報告に引き付けて理解しているのか、領域性の変容が主権の決定にどのような影響を与えているのか、EUにおけるシチズンシップの境界をめぐる構成員資格の問題など多岐にわたる論点が提示された。また、土曜日の午前中にもかかわらず、約60名の参加者があったフロアからも多数のコメント・質問が寄せられた。今年度の学会では、国際秩序論に関する部会が複数設定され、古くて新しいテーマに不断に検証していくことの重要性を再認識した部会であった。

(文責: 川久保 文紀
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2015.11.06

地域研究コンソーシアム(JCAS)年次集会・シンポジウム参加記

地域研究コンソーシアム(JCAS)年次集会・シンポジウム参加記

 2015年11月1日(日)、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所(以下、AA研)にて、2015年度地域研究コンソーシアム(JCAS)年次集会が開催された。午前中は総会が行われ、1.加盟状況と運営体制、2.各活動分野の進捗状況と課題、3.来年度に向けての総括と展望などが報告された後、第5回地域研究コンソーシアム賞の授賞式が行われた。この中で、UBRJも加盟している境界地域研究ネットワークJAPAN(JIBSN)が実施する「境界地域を結ぶ『公・学・民』の研究・実務連携と社会貢献」が社会連携賞を受賞した。なお、授賞理由としては、第一に我が国のボーダースタディーズ(境界研究)を通じて教育・研究機関のみならず、自治体、公益法人、NPOなど多様な境界域のステークホルダーを包摂する活動であること、第二に地域研究の醍醐味であるフィールドワークや国際会議及びセミナーなどによる研究や「学び」とボーダーツーリズムなど地方活性化につながる社会実践とを見事に結び付けていること、第三に地域を超えた共通課題を共有しつつ、国際的にも開かれた活動によって我が国の地域研究の地域横断的、国際的展開を行っていることなどがあげられた。その上で、JIBSNの今後の持続的展開、新たな挑戦への期待が授賞理由に込められていることも表明された。これに対し、受賞者を代表して、根室市副市長の石垣雅敏さん(JIBSN代表幹事[根室市長]の長谷川俊輔さんの代理)がJCASからの授賞に対する謝意とともに今後の活動に対する抱負を述べられた。

 午後は一般公開シンポジウムが開催された。シンポジウムのタイトルは「境界領域への挑戦と『地域』」と題し、日本エネルギー経済研究所の保坂修司さんが「まっすぐな国境線―アラビアのロレンスとイスラム国」、AA研の錦田愛子さんが「見えない境界をめぐるパレスチナとイスラエルの攻防―国家承認、エルサレム、和平分割案」、東京大学の松里公孝さんが「ボーダーを堅牢化しない紛争―ウクライナほか環黒海地域の経験から」、JETROアジア経済研究所の武内進一さんが「アフリカの国境は紛争の主因か?」、AA研の床呂郁哉さんが「ボーダーの形成と越境のダイナミクス―東南アジア海域世界の事例から」と題する報告をされた。そしてこれら中東、ユーラシア、アフリカ、東南アジアの境界問題に関する報告を受けて、国際移住機関(IOM)駐日事務所の清谷典子さんと北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターの岩下明裕さんがコメントをされた。特に岩下さんの各報告者に対する「皆さんの研究地域において『国境』は必要なのでしょうか」という問いは日本国内におけるボーダースタディーズのグローバルな展開を考えさせるものであった。

 主催者によれば、今回のシンポジウムには例年以上の80余名が参加し、「境界」に関する関心の高さが窺えた。最後に、この年次集会の準備や当日の開催に奔走されたJCAS関係者に心から感謝を申し上げて本参加記を締めくくりたい。

(文責: 古川浩司

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JCAS社会連携賞授賞式(右端が石垣雅俊・根室市副市長)




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公開シンポジウムでの岩下明裕・UBRJユニットリーダー






2015.11.02

速報!JIBSNが地域研究コンソーシアム「社会連携賞」を受賞!

速報!JIBSNが地域研究コンソーシアム「社会連携賞」を受賞!

 2011年に国境自治体の実務者と研究者との交流・政策提言プラットフォームとして設立された境界地域研究ネットワークJAPAN(JIBSN)が、この度、地域研究コンソーシアム(JCAS)から「社会連携賞」を受賞しました。JCASとは、事務局を京都大学に置き、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターを含む99の機関が加盟する世界諸地域の研究に関わる研究・教育組織、学会、民間機関のわが国唯一のアンブレラ組織です。JIBSNからは代表幹事を務める根室市の石垣雅敏・副市長が出席、スピーチをしました。審査委員長からは、JIBSNの今後の活動への期待が示されました。

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