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境界地域研究ネットワークJAPAN一周年記念シンポジウム「日本の国境:課題と機会」

 2013年1月22日、東京永田町の全国町村会館にてJIBSN設立一周年記念シンポジウム「日本の国境:課題と機会」が開催されました。本シンポジウムは、2010年度から始まった笹川平和財団助成プロジェクトの成果報告の場として、北海道大学グローバルCOEプログラム「境界研究の拠点形成」及びスラブ研究センターとの共催により行われました。昨今、領土問題をめぐる議論が沸騰していることもあり、事前登録は140名に及び、当日も100名程度の参加がありました。なかでも後援の朝日新聞社の記者を始め、20名以上がメディア関係者であったことが眼を引きました。

 シンポジウムは、JIBSN代表の外間守吉・与那国町長の挨拶を皮切りに、副代表の岩下がボーダースタディーズ(境界研究)の分析手法の一つである「分断された空間(「生活圏」)」論をもとに、ベルリン、ベルファスト、エルサレム、モスタル、オキナワ(基地問題)などを比較する内外のプロジェクトの成果を参照しつつ、現場の視点(「生活圏の再構築」)から、根室と歯舞、隠岐の島と竹島、八重山・宮古と尖閣諸島の空間的つながりを考える視座を強調しました。

 次いで財部能成・対馬市長が、不安定な日本の境界地域のなかで最も安定している「福岡・対馬・釜山」海域の現況と取り組みについて紹介し、自治体に属する海域という観点から、日本を取り巻く海の利益を守る切り口をアピールしました。加えて国境離島振興へむけた取り組みの遅れを批判しつつも、今後の政府方針への期待感を表明しました。

 古川浩司・JIBSN事業部会長(中京大)は、対馬から日本全国の国境地域の活動へと議論を展開し、境界自治体のコンセプトをもとにJIBSNネットワークへの関係団体の結集を呼びかけ、近い将来の日本の国境政策づくりへ向けた提言を模索している旨を訴えました。

 これらの問題提起をうけ、若宮啓文氏(元朝日新聞主筆・フリージャーナリスト)は、これまで日本が歩んできた歴史を今一度、振り返り、そのマイナスを乗り越えるため、韓国や中国との関係において、日本から一歩踏み出すことが重要だとする趣旨からコメントを行い、北方領土問題、竹島を中心に解決のためのアイデアを示唆しました。

 質疑応答では、松田和久・隠岐の島町長を始め、五島市、小笠原村ら自治体関係者、パネリスト、参加者の間で激しくも刺激的な応酬が続きましたが、高い位置から抽象的に「領土」を議論する傾向の強い東京の論壇に向けて、現場からの視点や(中央が無関心な)生存の身体性を突きつけることを目指したシンポジウムの目標は十分に達成されたと思います。センセーショナルな事件にのみ眼を奪われることなく、地道に境界地域を考え続けるJIBSNの存在意義はまさにこれからが正念場を迎えることになるでしょう。

 なお本シンポジウムの記録は、JIBSNレポートとして後日、公刊される予定です。議論の模様もUstreamなどで一部配信されます。

(岩下明裕)

(2013.01.24 up)

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