スラブ研究センターニュース 季刊 2009 年冬号 No.116 index

編集室だより


スラブ・ユーラシア叢書第4 巻 『近代東北アジアの誕生:跨境史への試み』刊行

スラブ・ユーラシア叢書第4 巻『近代東北アジアの誕 生:跨境史への試み』(左近幸村編著)が12 月に刊行さ れました。2007 年3 月にスラブ研究センターで開催さ れた研究会「近代東北アジアにおける国際秩序と地域的 特性の形成」での報告がもとになっています。

スラブ・ユーラシア叢書第4 巻

執筆陣は、ロシア極東史の泰斗、原暉之氏を除き、い ずれも60・70 年代生まれの中堅若手から構成されてい ます。最年少は編著者で79 年生まれ、まだ博士後期課 程です。目次からも明らかですが、現在、各分野の第一 線で活躍している気鋭の研究者が多く含まれています。 また相互参照を徹底し、すべての論文が、本書所収の他 のいずれかの論文に言及しています。このことは当然、 論文集一般のあり方についての問題提起でもあります。

ロシア史を軸としつつも、領域的には大きくそこから飛び出した本書は、2008 年の初頭に 講談社から刊行された『講座スラブ・ユーラシア学』(編集代表家田修)の事実上の続編となっ ています。本書を手にとって、「ここに結集した野心的な歴史家たちの熱意」(川北稔氏によ る帯の推薦文より)を直に感じていただければ幸いです。

[左近]
序論
左近幸村
東北アジアから見える世界
1
第一部
ロシアとアジアのネットワーク
第一章
原暉之
近代東北アジア交易ネットワークの成立―環日本海圏を中心に―
25
第二章
麓慎一
国際的環境から見た日露間の航路形成
61
第三章
天野尚樹
サハリン石炭と東北アジア海域史
83
第四章
左近幸村
キャフタからウラジオストクへ―国境地帯における貿易構造の変化と関税政策―
111
第二部
変容する中国の内と外
第五章
岡本隆司
19世紀中国における自由貿易と保護関税―「裁釐加税」の形成過程―
141
第六章
矢後和彦
露亜銀行(1910~26年)覚書
163
第七章
浅田進史
利益独占と「門戸開放」―ドイツ山東鉄道事業をめぐる秩序形成―
179
第八章
荒武達朗
1900~1920年山東半島の移民と農村経済
211
第三部
東北アジアからの露清帝国再考
第九章
杉山清彦
大清帝国のマンチュリア統治と帝国統合の構造
237
第十章
塚瀬進
中国東北統治の変容―1860~1880年代の吉林を中心に―
269
第十一章
松里公孝
プリアムール総督府の導入とロシア極東の誕生
295
第十二章
オイドフ・バトバヤル
ロシア帝国の辺境統治と領域拡張―東部辺境の国境監督官制度―
333
補論
桃木至朗
海域史、地域研究と近代東北アジア
359

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