スラブ研究センターニュース 季刊 2010 年秋号 No.123 index

新学術領域研究


新学術領域研究の中間評価でA 評価

3 年目を迎えた新学術領域研究「ユーラシア地域大国の比較研究」は、文科省の定めに従い、 この8 ~ 9 月に専門家による中間評価を受けました。このほど、A 評価(研究領域の設定目 的に照らして、期待どおりの進展が認められる)を受けたという通知がありました。

中間評価は、「評価要綱」に則り、「科学研究費補助金における評価に関する委員会」のな かの「人文・社会系委員会」によっておこなわれました。ヒアリングは、9 月13 日に文科省 でおこなわれました。「中間評価に係る意見」は次のとおりでした。

本研究領域は、ロシア、中国、インドを現代の世界秩序に挑戦する「地域大国」と位置づけ、こ れらの国々の特殊性・固有性を探究するとともに、共通性を抽出し、さらにはそれを通じて世界シ ステムの理解の深化を目指すものである。

その調査方法の一環として、地域研究者が専門外の地域に相互乗り入れをおこなっていることは 注目に値する。これらの調査を通じて、学会誌レベルの論文も精力的に生産され、「帝国とその崩壊 プロセスの比較」「地域経済統合」「内政比較」などの大きなテーマをめぐって、着実に研究成果が 挙がっている。国内外の学会でセッションやラウンドテーブルを設置するなど、研究成果の公表に ついての積極的な姿勢も評価できる。公募研究も研究領域の特色を反映しており、計画研究と公募 研究の連携もよくできていることも高く評価できる。

今後の研究を通じて、「世界システム」「文明圏」「帝国」などの大概念についてのさらなる検討と、 個別の研究課題についての研究成果を統合する、より大きな議論や理論的枠組みの提示が期待され る。なお、この研究領域でおこなわれている、地域研究者の相互乗り入れについては、その方法を 通じて具体的にどのような新しい発見がおこなわれるのかということを、より方法論的・体系的に 明示してもらいたいという意見も出され、地域研究の方法論の再検討のための貢献も期待される。

また、大きな理論的枠組みの提示という課題に関しては、各研究グループを越えての大きな議論 の場があまりつくられていないという意見があり、そのような議論の場がより多く設けられ、より 大胆な理論化がなされることが期待される。

[田畑]

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