今年はメキシコ湾の海底油田事 故に続き、10 月初めに東欧のハン ガリーで赤泥と呼ばれるアルミニ ウム産業廃棄物の大規模な流出事 故が発生しました。前者はメディ アで継続的に取り上げられました が、後者は極めて扱いが小さく、 しかも第一報の後、全体として報 道が途絶え、何が起こったのか、 全く分からずじまいの状況が続い ています。
赤泥は私たちが日頃手にするア ルミ缶などの原料であるアルミナ の製造過程で生じ、アルミ一缶に つきその二倍もの赤泥が出ます。 再利用が難しく、世界全体で年間1億トンもが投棄されています。日本は海洋投棄していま したが、近年、環境に配慮してアルミナ生産をやめ、海外に生産拠点を移しています。その 意味で日本は世界の赤泥に責任もあり、他人事では済まされないといえます。
赤泥津波が破壊した塀や樹木(デヴェチェル市)
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今回の事故では、欧州10 ヵ国を貫流するドナウ川に汚染物質が流出するのは、食い止めら れましたが、広範な自然破壊が生じ、死者も出ました。現在も百万トンの赤泥が1000 ヘクター ルの農地に流出したまま、乾燥して飛沫化し、大気汚染を引き起こしています。現地政府は 健康被害防止のためマスク使用を促していますが、4 万人の地域住民にマスクを毎日一個、 数ヵ月にわたり確保することは、費用と品質、とりわけ数量面で不可能であり、マスク文化 をもつ日本に支援を求める声が現地から上がりました。
2 メートルに達した赤泥津波が残した痕跡
(デヴェチェル市)
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これに対し、事故現場の県と姉妹関係にある岐阜県のハンガリー友好協会がいち早く支援 の手を上げ、現地の新聞も「日本が支援」と報じ、被災者を勇気づけています。更に事故を知っ た大阪大学ハンガリー語学科の学 生も自ら街頭に出て、市民に呼び 掛け、義捐金を集め始めましたし、 ハンガリーに進出している日本企 業もマスク支援の後押しに乗り出 しています。昨今の日本外交に比 べ、実にさわやかな民間国際交流 の姿勢がそこにあります。
住民と赤泥除去作業隊
(最大の被災地デヴェチェル市街)
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ただ、岐阜の方では50 万個の マスクを確保したにもかかわら ず、マスク購入以上に多額の輸送 費がかかるため、第一陣として 9万個を送った時点で、せっかく 準備したマスクが送れないで困っ ています。欧州ではマスク文化が なく、日本から送るしか手があり ません。
石膏(白い粉)による赤泥中和と瓦礫撤去作業
(デヴェチェル市)
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ハンガリーはEU に加盟したと はいえ、ギリシャと同様、経済不 振と財政赤字で苦しんでいます。 また事故調査に来たEU 調査団は、 赤泥に関する極めて「甘い」EU 環境基準に影響されたのか、「大 気汚染は心配ない」と言っていま す。他方、赤泥について独自の厳 しい環境基準をもつハンガリーの 専門家は、繰り返し人体への影響 を警告しています。日本からの支 援にハンガリーの人々が勇気づけ られているのには、こうした背景 もあります。
マスク支援は乾燥する冬を前 に、時間との戦いです。この支援 に御関心のある方は家田までご連 絡下さい。