スラブ研究センターニュース 季刊 2011 年夏号No.126 index
2011年度のセンター教員・研究員が代表を務める文部省科研費補助金による研究プロジェクトは次の通りです。
基盤研究(A) | ||
望月 哲男 | ヴォルガ文化圏とその表象をめぐる総合的研究 ( 2009-11年度) | |
ウルフ ディビッド | 北東アジアの冷戦:新しい資料と展望( 2009-12年度) | |
基盤研究(B) | ||
松里 公孝 | ロシアにおける宗教復興:公共機能、ライフヒ ストリー、空間動態( 2009-11年度) | |
宇山 智彦 | 近代化とグローバル化の文脈における比較帝国 史( 2009-12年度) | |
松里 公孝 | 宗教、国家、マイノリティが織りなす環黒海跨 境政治(海外)(2009-11年度) | |
原 暉之 | 国境の植民地サハリン(樺太)島の近代史:戦 争・国家・地域( 2010-13年度) | |
基盤研究(C) | ||
木山 克彦 | 極東地域における靺まっかつ鞨に関する考古学 的研究( 2008-12年度) | |
長縄 宣博 | 帝国とメッカ巡礼:ロシアのムスリム地域の視 点から( 1865~ 1914)(2010-12年度) | |
兎内勇津流 | ロシア正教の教義確立とフィラレート( 2010-12年度) | |
若手研究(B) | ||
越野 剛 | ロシア・ウクライナ・ベラルーシにおける歴史 小説の比較研究( 2009-11年度) | |
後藤 正憲 | ロシア・チュヴァシにおけるト占の歴史人類学 的研究(2009-11年度) | |
野町 素己 | カシュブ語統語論の総合的研究(2010- 12年度) | |
井澗 裕 | 旧ソビエト周縁地域における都市空間の歴史的
変遷:極東・ウクライナ・中央 アジア(2010-11年度) |
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草野佳矢子 | 帝政ロシアの統治官僚と地方自治:第一次革命
前ロシア内務省の組織と活動 (2010-12年度) |
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小松 久恵 | 雑誌に見る「近代」:ヒンディー語女性雑誌に おけるインド近代表象(2010-13年度) | |
住家 正芳 | 社会進化論の影響を軸とした、近代中国と日本
におけるナショナリズムと宗教 の比較研究(2011-13年度) |
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井上 暁子 | ドイツ=ポーランド国境地帯の文学と移民文学 の比較研究(2011-14年度) | |
瀧口 順也 | 「コミュニスト」の創造:コミンテルン期にお ける共産主義者形成過程の国際史学的考察(2011-14年度) | |
平山 陽洋 | 第 1次インドシナ戦争期の北ベトナムでの総動員体制の構築と冷戦の影響をめぐる研究(2011-13年度) | |
学振特別研究員奨励 費 | ||
菊田 悠 | 中央アジア定住地帯の秩序の再編成プロセスに おけるイスラーム聖者と聖性の役割(2011-13年度) | |
安達 大輔 | 近代的読書メディアとしてのロシア・ロマン主 義文学研究:「社交界小説」を中心に(2009-11年度) | |
宮崎 悠 | 公共宗教と国民形成の政治力学:ポーランド・ ナショナリズムとカトリック教会(2010-12年度) | |
森下 嘉之 | 国民国家の形成期における地域社会の変容と住 民: 20世紀中東欧を事例に(2011-14年度) | |
学振外国人特別研究 員奨励費 | ||
ベアトリーチェ・ペ ナティ(研究代表者 宇山智彦) | ||
ウズベキスタンにおける土地水利改革:集団化 以前の農村社会のソヴィエト化(2009-11年度) |
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熱心に聞き入る受講 者の皆さん |
日程 | 講 義 題 目 | 講 師 | |
第1回 |
5/9 (月) |
ロシア人:歴史における拡張と統合 | 静岡県立大学国際関係学部
教授 西山克典
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第2回 |
5/13 (金) |
アルメニア人:文明の潮目で | 東京外国語大学 アジア・アフリカ言語文化研究所 研究員 吉村貴之
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第3回 | 5/16 (月) |
ドイツ人:二度の大戦に翻弄された人たち | 愛知県立大学外国語学部 講師 半谷史郎
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第4回 | 5/20 (金) |
ユダヤ人:共存と排除の 200年 | 立教大学文学部
特任教授 高尾千津子
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第5回 | 5/23 (月) |
タタール人:祖国とイスラーム世界の狭間で | 北海道大学スラブ研究センター 准教授 長縄宣博
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第6回 | 5/27 (金) |
中国人:脅威と共生の間で | 富山大学極東地域研究センター 教授 堀江典生
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第7回 |
5/30 (月) |
日本人:ロシア極東における戦争と水産業 | 新潟国際情報大学情報文化学部 准教授 神長英輔
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2012年度における外国人特任教授の審査がおこなわれ、 32人の応募者の中から、以下の 6
名の正候補者が、過日の協議員会で承認されました。
ベクス -ゴンチャロヴァ、ネリー(Bekus-Gonczarowa, Nelly) | |
所属・現職:ワルシャワ大学東スラブ学部助教授 研究テーマ:ベラルーシ における民族言語ナショナリズム対ロシア文明化イデオロギー: ベラルーシ発展の論理
を求めて
予定滞在期間:2012年 11月 1日~ 2013年 3月 31日(5ヵ月) |
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ブリュムバウム、ア ルカージ(Blyumbaum, Arkady) | |
所属・現職:ロシア科学アカデミーロシア芸術史研究所上級研究員 研究テーマ:アレクサンドル・ブローク :文学と政治(1905-1921) 予定滞在期間:2012年 11月 1日~ 2013年 3月 31日(5ヵ月) |
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パン、ドンメイ(庞 冬梅)(Pang, Dongmei) | |
所属・現職:黒龍江大学ロシア研究所准教授 研究テーマ:ロシア極東地域における中国人による犯罪への対処 予定滞在期間:2012年 11月 1日~ 2013年 3月 31日(5ヵ月) |
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ラウンド、ジョン (Round, John) | |
所属・現職:バーミンガム大学地理・地球・環境学部上級講師 研究テーマ:先の見えない生活に対応する:現代ロシアにおける日常生活 予定滞在期間:2012年 6月 1日~ 2012年 10月 31日(5ヵ月) |
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リャザンツェフ、セ ルゲイ(Ryazantsev, Sergey) | |
所属・現職:ロシア科学アカデミー社会政治研究所教授 研究テーマ:民族移住と国境隣接地域におけるディアスポラの形成: ロシアの国家安全保障を考えるうえ
で
予定滞在期間:2012年 6月 1日~ 2012年 10月 31日(5ヵ月)
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ウィークス、セオド ア(Weeks, Theodore) | |
所属・現職:南イリノイ大学歴史学部教授 研究テーマ:Vilna、Wilno、Vilnius:多文化都市の歴史(1795-2000) 予定滞在期間:2012年 6月 1日~ 2012年 10月 31日(5ヵ月) |
今年は 6名の応募があり、以下の 4名の方が採用されました。[野町]
採 用決定者・所属 | テー マ | 希 望滞在期間 | ホ スト教員 |
千葉美保子 関西大学大学院 |
近世ロシアにおける外国人居留者 とその居住空間について | 2011/9/1~21 | 長縄 |
机 文明 法政大学大学院 |
ソ連の外交史全体の中において対日外交がい かなる位置づけであったかの解明 | 2011/12/5~25 | 岩下 |
近藤 大介 一橋大学大学院 |
ゴーゴリ作品とブルガーリンを中心とした 1830年代のジャーナリズムに関する研究 | 2011/ 9/1~16 | 望月 |
高橋 知之 東京大学大学院 |
プーシキンやレールモントフ、ドストエフスキーの作品に おけるナポレオンの表象についての研究 | 2011/10/20~11/ 5 | 望月 |
2011年 6月 15日から 10ヵ月の予定で、ロシア科学アカデミー民族学・人類学研究所のエリザ =バイル・グチノヴァ(
Guchinova, El’za-Bair)さんが、国際交流基金・日本研究フェローシップによりセンターに滞在しています。グチノヴァさんは
2005年度にもセンター外国人研究員として来日し、ジェンダーの視点から見たカルムイク人強制移住について研究されました。その折に日本人抑留問題に関
心を持ち、今回は日本人抑留者の視覚的記憶をテーマとしておられます。既に抑留経験者とのインタビューや、彼らが描いた絵や漫画の分析をおこない、飢えや
排泄などの身近で切実な問題に抑留者がどう対処し、どのように記憶しているかについて研究を進めています。人類学者ならではの視点から抑留研究に貢献する
ことが期待されます。
昨年 4月から自国の奨学金でセンターに滞在していたリチャードソン氏が、日本学術振興会外国人特別研究員として新たに、 2011年 7月
22日から 2012年 7月
20日までの予定でセンターに滞在することになりました。氏の研究テーマは「北方領土の言説を越えて:日本の中央・地方間政治とナショナルアイデンティ
ティ」です。
2011年 7月 13日から 8月
12日までの予定で、カザフスタンのユーラシア国立大学政治学部博士課程院生のクラライ・マクスト(Maksut,
Kuralay)さんが、同大学の研修プログラムによりセンターに滞在しています。彼女の研究テーマは、「EU諸国(特にチェコ、スロヴァキア)と中央ア
ジア諸国の関係」です。中央ユーラシア研究者のみならず、中東欧研究関係者の皆様との交流を望んでいます。
ニュース前号以降、専任セミナーが以下のように開催されました。
5月
12日:松里公孝 “Faith or Tradition: The Armenian Apostolic Church and Community-building in Armenia and Nagorny Karabakh” センター外コメンテータ:吉村貴之(東
京外国語大学)
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今回の論文はこれまで松里氏が精力的に現地調査を継続
してきた「非承認国家」に関する研究の成果です。特に「宗教と政治」という切り口でアブハジア、オセチア、トランスニストリアを分析してきた成果の続編で
もあります。コメンテータからは、現地面接調査言語がロシア語であることから生じる齟齬、宗教と政治
の関係における国外アルメニア人やロシアのアルメニア人からの影響等にっいて質問が出され、他の研究員からはソ連期における宗教実践のあり方、農村におけ
る組合改革との係わりなどが疑問点として提出されました。 |
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5月 30日:岩下明裕 「グローバル・ユーラシア:新しい地政学の創造」 センター外コメンテータ:林忠行(京都
女子大学)
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GCOEプロジェクトで新しい国境地政学の創造を目指
す岩下氏が「ユー
ラシア」概念を縦横に使ってロシア、中国だけでなく、アメリカやインド、さらには海
国日本までも視野に入れた議論を提示しました。コメンテータは、昨年度までセンターに在籍していた(正確には北大副学長だった)林忠行氏が務め、ユーラシ
アの定義などをめぐって、新しい地政学の射程が問題とされました。討論全体としても、「ユーラシア」ないし「ユーラシア主義」などの分析概念の操作に関し
て様々な角度から議論がなされ、新しい学問と新しい分析概念を生むための有意義な示唆が数多く提示されました。 |
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7月 29日:宇山智彦 「カザフ知識人にとっての〈東〉と〈西〉:階層的国際秩序の認識と文化的精神性の希求」 センター外コメンテータ:守川知子(北
大文学研究科)
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今回の論文は東大出版会から刊行が予定されているシ リーズものの第一巻 に収録される予定の原稿でした。旧ソ連東欧という地理空間を論じる時には、とりわけ 総論的に論じる時には、「東と西」という対比は避けがたく、今回は宇山氏もオリエンタリズム論などを独自に深めるなどして、カザフ知識人の視点から、日本 も含めたオリジナルな東西論が提示されました。イランを専門とするコメンテータの守川氏からは、やはり東西を常に意識していたイランとの対比も含めて、非 アラブの視点からのイスラームとヨーロッパという極めて新鮮な問題が提起されました。比較大国研究と境界研究をてこに、いよいよ本格的にセンターはグロー バルなユーラシア研究に乗り出しました。 |
前号 125号の「共同研究員」の項の《 GCOE共同研究員》に佐藤圭史氏(任期: 2011年 4月 1日~ 2013年 3月
31日)が抜けていました。お詫びして追加いたします。
ニュース 125号以降の、センターでおこなわれた北海道スラブ研究会、センターセミナー、新学術領域研究会、
GCOE研究会、世界文学研究会、北海道中央ユーラシア研究会、及び昼食懇談会の活動は以下の通りです(前ページまでに記事のあるものは除く)。
4/28 | 平
賀雄(北大・院) 「バーベリ『騎兵隊』における登場人物」(世界文学研究会) |
5/19 | 奥
山史亮(日本学術振興会特別研究員) 「クリアーヌの文学作品と宗教学的営為:ルーマニア人亡命者の宗教学者による社会主義政権批判」(世界文学研 究会) |
5/25 | 地
田徹朗(センター) 「ソ連における水利開発とその理論的背景:カザフスタン・イリ川を中心に」(北海道スラブ研究会/ GCOE・SRC研究員セミナー) |
5/26 | 川
上淳(札幌大) 「近世後期の奥蝦夷地史と日露関係を考える」(GCOE・SRC特別セミナー) |
5/28 | 菊
池俊彦(北大名誉教授) 「サハリン古代史の研究:私とサハリンの関わり」; 倉田有佳(函館市役所) 「ビリチとサハリン島:元流刑囚漁業家にとっての日露戦争」(サハリン樺太史研究会) |
6/2 | I. コルホネン(フィンランド銀行) “Forecasting Economic Developments in Major Emerging Markets - Some Preliminary Results”(比較地域大国論セミナー) |
6/11 | 仙
石学(西南学院大) 「『中東欧・旧ソ連諸国の選挙データ』構築まで」(プロジェクト型共同研究成果報告) |
6/14 | 平
山陽洋(センター) 「ベトナムにおける『戦争文学』というメディア」(GCOE・SRC特別セミナー) |
6/16 | 土
田環(映画専門大学院大) 「東への道: 1950年代の西洋映画における『インド』」(GCOE・ SRC特別セミナー) |
6/20 | B.
ジョゼフ(オハイオ州立大、米国) “Phonological Borrowing and Language Borders in the Balkans”(GCOE・SRC特別セミナー) |
6/21 | W.
ブラウン(コーネル大、米国) “Burgenland Croatian: An Old Language on a Do-ityourself Border with a New Name”(GCOE・SRC特別セミナー) |
6/27
|
谷
古宇尚(北大文学研究科) 「境界と風景画:色丹グループの活動 1966-1991年」(第 14回ボーダースタディーズ・セミナー) |
6/30 |
野
町素己(センター) 「東欧に架かる虹:境界の詩人オンドラ・ウィソホルスキとその言葉」(世界文学研究会) |
7/ 9 | 新学術領域研究第
4班研究会「オスマン帝国史:比較の視点から」 秋
葉淳(千葉大)「19世紀オスマン帝国における領土的編制と領土的想像力」;
佐々木紳(東京大)「近代オ スマン帝国の知識人と帝国意識」 |
7/12
|
西
内修一(北海道立総合研究機構水産研究本部栽培水産試験場) 「オホーツク海における水産資源の持続的利用」(GCOE・SRC特別セミナー) |
7/13 |
渡
邊清美(北大・院) 「テオドール・フォンターネの社会批判」(世界文学研究会) |
7/15 |
家
永真幸(東京大・院) 「境界研究としての中国パンダ外交」GCOE・SRC特別セミナー) |
7/20 |
E. アスタフィエヴァ(SRC) “The Russian Presence in Palestine: Political, Religious, and Cultural Aspects (1847-1917)”(ロシア語)(センター・セミナー) |