スラブ研究センターニュース 季刊 2012 年春号No.129 index

編集室だより

スラブ・ユーラシア叢書第11 巻の刊行

このたび「スラブ・ユーラシア叢書」シリーズの第11 巻として、北海道大学出版会から田 畑伸一郎・江淵直人編『環オホーツク海地域の環境と経済』が刊行されました。本書は、オホー ツク海の環境を守ることが環オホーツク海地域だけでなく、太平洋をはじめとする地球規模 での環境保全にとっても重要であるというメカニズムを解説するものです。そして、オホー ツク海の環境保全のためには、アムール川流域を含む周辺地域全体の環境保全に向けた取り 組みが必要であることを説いています。また、環オホーツク海地域における社会・経済活動 の現状を描き出し、その活動の持続的発展の問題を考察しています。本書は、北海道大学の 低温科学研究所(研究代表者:江淵直人)とスラブ研究センター(研究代表者:田畑伸一郎)、 北見工業大学未利用エネルギー研究センター(研究代表者:庄子仁)が2007 年度からおこなっ てきた学際的共同研究「環オホーツク環境研究ネットワークの構築」の成果の1つとして刊 行されるものです。このプロジェクトでは、オホーツク海に関わる自然科学的な研究とロシ ア極東に関わる社会科学的な研究が、ロシアや中国などの研究者との国際的な連携のもとに 進められてきました。オホーツク海を取り囲む地域についてこのような学際的、国際的なプ ロジェクトがおこなわれたのはおそらく初めてのことであり、本書は、文理の研究者の連携 によって、その成果をまとめたものです。内容は以下のとおりです。
[田畑]
序 章: 田畑伸一郎・江淵直人
第1 部: オホーツク海のエコシステム
第1 章: 大島慶一郎/オホーツク海の海洋循環・海氷生成と温暖化の影響
第2章: 西岡純/オホーツク海域の豊かな生態系を生み出す鉄供給システム
第3章: 三寺史夫・中村知裕/数値モデルを用いた環オホーツク海地域 の環境研究:将来予測へ向けて
第4章: 庄子仁・南尚嗣・八久保晶弘/オホーツク海のメタンシープと メタンハイドレート
第5章: 白岩孝行/オホーツク海の命運を握るアムール川
第2部: 環オホーツク海地域の資源開発と経済
第6章: 田畑伸一郎/環オホーツク海地域の経済発展
第7章: 本村真澄/ロシア極東・東シベリアにおけるエネルギー開発
第8章: 西内修一/オホーツク海の水産資源と漁業
第9章: 封安全/環オホーツク海地域における木材の生産と貿易
第10章: 田畑朋子/ロシア極東の人口減少問題
終 章: 白岩孝行・庄子仁


編集室だより

◆スラブ・ユーラシア研究報告集No. 4◆
『文化空間としてのヴォルガ』の刊行

3 月末スラブ・ユーラシア研究報告集第4 号『文化空間としてのヴォルガ』(望月哲男、前 田しほ編)が発行されました。科学研究費研究基盤(A)「ヴォルガ文化圏とその表象に関す る総合的研究」(2009-11 年度)の成果をまとめたもの。ヴォルガがロシアの川となるまでの 歴史的経緯論に始まって、18-20 世紀の文芸におけるヴォルガ表象の特徴を巡る議論を詩、散 文、フォークロア、映画絵画などのジャンルにわたって論じています。またカルムイキア、 タタールスタンの非ロシア人ヴォルガ住民の文化史を巡る議論も掲載されています。 以下のサイトでも閲覧可能です。[望月]
三浦清美 「歴史的ヴォルガ:ヴォルガがロシアの川となるまで」
井上岳彦 「モラヴィア派入植地サレプタ:カルムイク人との交流と宣教師の記録」
鳥山祐介 「エカテリーナ期 – ナポレオン戦争期のロシア詩の中のヴォルガ:『ロシアの母なる川』が 誕生するまで」
望月哲男 「三つのヴォルガ像:1856 年の文人調査旅行から」
熊野谷葉子 「サラトフ小唄の流行と衰退に見るヴォルガ沿岸のロシア・フォークロア」
中村唯史 「ゴーリキーの自伝的作品におけるヴォルガの印象の薄さについて」
長谷川章 「『ヴォルガ・ヴォルガ』とヴォルガ表象」
鈴木正美 「ヴォルガの視覚表象:絵はがきと風景写真、映画『ヴォルガ、ヴォルガ』から現代アートへ」
櫻間瑛 「文明の交差点における歴史の現在:ボルガル遺跡とスヴィヤシスク島の『復興』プロジェクト」

編集室だより

ACTA SLAVICA IAPONICA

第32 号は、ほぼ内容が確定し6 月頃には刊行される予定です。[野町]

編集室だより

 『スラヴ研究』

『スラヴ研究』第59 号は、審査の結果、以下の原稿を掲載することになりました。早期に 出版できるように鋭意努力してまいります。 <論文>
乗松亨平 「後期ソヴィエトにおける『生の構築』:ユーリー・ロトマンの演劇的文化論の社会史的考察」
中村唯史 「1910-20 年代のエイヘンバウム:フォルマリズムとの接近と離反の過程」
左近幸村 「19 世紀後半から20 世紀初頭にかけてのロシアの茶貿易:汽船との関係を中心に」
森下嘉之 「チェコスロヴァキア第三共和国(1945-1948 年)期における社会政策の変容:住宅政策の 分析を中心に」
徳永昌弘 「戦後シベリアの社会主義工業化:アンガラ川流域開発を中心に」

<書評>
田畑理一 武田友加著『現代ロシアの貧困研究』(東京大学出版会、2011 年)

今回は、掲載数こそ少ないですが、多方面にわたる力作が揃いました。丁寧な査読をして くださったレフェリーの皆様に御礼を申し上げます。残念ながら不採用となった方も、次回 以降ぜひ再挑戦して下さい。次の第60 号の原稿締め切りは、2012 年8 月末の予定です。セ ンターのホームページに掲載されている投稿規程・執筆要領等を熟読のうえ、締切厳守でご 提出ください(事前申し込みは不要です)。
[長縄]

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