スラブ研究センターニュース 季刊 2004年 春号 No.97 index

新センター長から

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 本年4月1日付で国立大学が法人化されました。このような時期にセンター長の職を引き受けることとなりました。 法人化によって、北海道大学あるいはセンターがどのように変わっていくのか、私には分からないことだらけですが、 日本におけるスラブ・ユーラシア研究とセンターの発展に少しでも寄与することを目標に、2年間務めさせていただきます。 皆様方のご支援をよろしくお願いします。
 法人化された後も、センターにとっては、スラブ地域研究の全国共同利用センターであることが、 もっとも重要な存立の拠り所であると考えます。センターの使命は、日本で唯一のスラブ地域研究センターとして、 日本におけるこの地域研究の発展を促進し、さらには、外国におけるスラブ地域研究との連携を深め、 相互に刺激し合うなかでこうした研究の水準を高めていくことでしょう。
 昨年、センターが21世紀COEに選ばれたことは、法人化の荒波のなかで、 センターにとっては大きな追い風となりました。今年度を入れて4年間、センターにおける共同研究活動は、 このCOEプロジェクト「スラブ・ユーラシア学の構築:中域圏の形成と地球化」を軸に進められていくことになります。 このCOEには、センター以外の北海道大学の研究者が10名ほど入っており、また、 この拠点形成には北海道大学による大きな支援が期待されます。 センターには、こうした支援に応えられるよう努力していくことが求められています。
 21世紀COEは、研究だけでなく、教育の面での成果を求めるものです。センターにおける大学院教育は、 協力講座として文学研究科に加わってから、今年で5年目を迎えます。 センターが日本におけるスラブ地域研究の後継者養成にどれだけ貢献できるか、これからの4年間がまさに正念場です。 センターは、北海道大学の院生に対する教育だけでなく、鈴川基金やCOE研究員などの制度によって、 他大学の院生や若手研究者に対する教育にも関わってきましたが、21世紀COEのなかで、これらの制度の拡充をはかっています。
 地域研究企画交流センター、東南アジア研究所、 アジア・アフリカ言語文化研究所などと協力して準備を進めてきた地域研究コンソーシアムは、 4月末に正式に設立され、活動を開始します。上記の21世紀COEプロジェクトがまさにそのテーマとしていることですが、 この10数年間の体制転換とグローバル化のなかで、我々の研究対象地域の境界が流動化しています。 しかし、これは我々の対象地域だけでなく、実は、世界中で生じていることのようです。 異なる地域を対象とする地域研究者とのネットワーク作りは、スラブ地域研究者にも、大きな利益をもたらすと期待されます。
 さて、センターが日本や世界の研究者からここまで評価されるようになったことの重要な要因は、 センターの情報資料部の活動でしょう。センターの蔵書、様々な出版物、インターネットによる情報発信、 これらが大きな魅力となって、研究者を札幌に引き付けていると言えるでしょう。 法人化は予算面ではかなり厳しい制約を課すものとなる可能性がありますが、センターは、 これまでに蓄積された研究資源を一層充実化させることに、高い優先順位を与え続けていくことになると思います。

[田畑]


研究の最前線

◆2003年度冬期シンポジウム・若手研究者国際ワークショップ開かれる◆

 去る1月28日(水)から31日(土)にかけて、21世紀COEプログラム「スラブ・ユーラシア学の構築:中域圏の形成と地球化」 主催の最初の国際シンポジウム・若手研究者国際ワークショップ「旧社会主義諸国に出現しつつある中域圏:歴史は甦りつつあるのか、 それとも創作されているのか?」が開催されました。この二つの催しには、ロシア、ウクライナ、アメリカ、イギリス、エストニア、 ベラルーシ、リトアニア、ポーランド、アルメニアの9ヵ国およびアブハジア、 プリドニエストルという非承認2ヵ国から22人の研究者が招かれ、125人の日本人・日本在住研究者が参加しました。 ペーパーの総数は33本にのぼりました。報告、討論は主に英語でおこなわれ、英露間の同時通訳がなされました。

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 上記COEプログラムの中心的な概念である「中域圏」は、スラブ・ユーラシア研究のみならず、 他地域の研究にも適用可能なものとして提案されています。従って、シンポジウムには、日本各地から、ヨーロッパ、中国、 イスラム圏の専門家も招かれました。
 このシンポジウム・ワークショップの目的は、「中域圏」概念を練り上げること、 日本のスラブ研究をスラブ・ユーラシア研究へと飛躍させるきっかけを作ること、そしてそのために、バルト諸国、コーカサス、 モルドワ、ベラルーシなど、 日本でこれまできちんとした研究が存在していながらマージナルな位置に置かれてきた国々への関心を喚起することでした。 イスラム急進主義や非承認国家を扱うセッションを組織するにあたっては、問題のアクチュアリティーも考慮されました。
 若手研究者国際ワークショップには4人の外国人研究者が招かれました。日本人報告者は5名でしたが、 その選抜にあたっては公募競争の形がとられました。このような試みは、日本人研究者に、若いうちから国際的な場で、 英語で発表する経験を積ませると同時に、前途有望な外国人若手研究者を最初から知日派にしてしまうことを狙いとしていました。
 シンポに提出されたペーパーを基にした論文集は、年末発行を目指して編集中です。

[松里]




◆2004年度夏期国際シンポジウムの予告◆

 今年度の夏期国際シンポジウム「21世紀のシベリア・極東:『アジア共同体』のパートナー」は、 2004年7月14日(水)〜 17日(土)の4日間にわたっておこなわれます。各セッションのタイトルは以下のとおりです。


オープニング・セッション
「シベリア・極東の再定義」
第1セッション
「シベリア・極東の地域経済」
第2セッション
「アジアにおける安全保障の十字 路」
第3セッション
「北東アジアにおけるエネルギー 問題:協力か対立か」
第4セッション
「サハリン(樺太)とクリル(千 島)の歴史」
第5セッション
「チェーホフ・サハリン・日本」
第6セッション
「日ロ漁業関係:過去・現在・未 来」

 センターのホームページ掲載のプログラムは随時更新していきますのでご覧下さい。

[編集部]




◆公開講座《ロシアを見た日本人・日本を見たロシア人》の予告◆

 今年は日露戦争百年に当たります。来年・2005年はソ連の対日参戦60周年です。 「近くて遠い隣国」と呼ばれる日本とロシア。歴史の節目に日露関係を改めて考えたいと、 公開講座を企画しました。多くの皆様のご参加をお待ちしています。

[編集部]

第1回
5月10日(月)
国家のはざまに生きた人々:
北東アジア近現代史への一つの視点
原暉之(センター)
第2回
5月14日(金)
日本からロシアへ:
漂着民ゴンザとロシアの日本学
上村忠昌(鹿児島工業高等専門学校)
第3回
5月17日(月)
根室から見える日ロ関係史:
ラクスマン、ゴロヴニン、リコルド、高田屋嘉兵衛
川上淳(根室市教育委員会)
第4回
5月21日(金)
オハ捕虜収容所:
北樺太の日本人抑留者
松井憲明(釧路公立大)
西村巌 (樺太関係首長・議員協議会)
第5回
5月24日(月)
戦時下の日露漁業:
「国策」を担った漁船員たち
鈴木旭(北大名誉教授)
第6回
5月28日(金)
小野アンナの生涯:
ペトログラード、東京、スフミ
小野有五(北大院地球環境科学研究科)
第7回
5月31日(月)
「越境者」が教えてくれたこと:
ソ連に残った日本人とコリアン
荒井信雄(センター)




◆連続セミナー「ロシアの中のアジア/アジアの中のロシア」◆

 拠点形成プログラム「スラブ・ユーラシア学の構築:中域圏と地球化」は、 研究面のほかに若手研究者養成という教育の側面も持っており、 センターが担当する北海道大学大学院文学研究科スラブ社会文化論専修における教育の充実と、 大学の垣根を超えた若手研究者の育成と支援のために、 新規の事業や従来の制度を発展させた事業をおこなうことを謳っています。 そのような取り組みの一つとしてセンターでは、連続セミナー 「ロシアの中のアジア/アジアの中のロシア」をこれまで3回開催しました。 やや大型の研究会となったのは2日間にわたった第3回で、 全体を4つのセッションに分け、中堅の研究者にも報告をお願いしましたが、 通常の研究会運営は主として博士後期課程の在学者および修了者を中心とし、 全国に開かれた若手研究者の成果発表の場と位置づけています。各回の報告者、 報告テーマは次の通りです。

第1回研究会(2003年11月11日)
●上田 貴子(京都大学人文科学研究所・学術振興会特別研究員)
   「Харбин から哈爾濱へ:中国における国際都市の試み」
●桑島裕子(北海道大学文学研究科スラブ社会文化論専修・博士後期課程)
   「ダライラマ13世のウルガ滞在:ロシア外交文書館資料から」

第2回研究会(2004年1月20日)
●塚田 力(北海道大学文学研究科西洋言語文学専修・博士後期課程)
   「中国新疆ウイグル自治区におけるロシア人の宗教活動」
●神長英輔(東京大学総合文化研究科・博士後期課程)
   「『北洋』とは何か:再構築された漁業史と対露観」

第3回研究会(2004年3月26〜27日)
◇初期 の露清関係:外交と通商
●渋谷浩一(茨城大学人文学部)
   「18世紀前半の露清関係史における諸問題」
●森永貴子(一橋大学社会学研究科・博士後期課程)
   「イルクーツク商人とキャフタ国境貿易 1792ー1830年」

◇中国東北:国際関係の磁場における地域 
●永井リサ(九州大学比較社会文化研究科・博士後期課程)
   「満州における林業調査と林業開発 1895ー1930」
●中嶋毅(東京都立大学人文学部)
   「ハルビンのロシア人教育:高等教育を中心に」

◇「ロシアの中のアジア/アジアの中のロシア」研究の一視角
●西山克典(静岡県立大学国際関係学部)
   「クルバンガリー追尋:もう一つの『自治』を求めて」

◇大東亜共栄圏の崩壊とソ連接壌地帯 
●上田貴子(京都大学人文科学研究所、日本学術振興会特別研究員)
   「ハルビン1945年8月ー1946年9月」
●田淵陽子(大阪外国語大学大学院言語社会研究科修了・学術博士)
   「1945年東アジア国際関係と『内モンゴル人民共和国臨時政府』」


また、各回の報告要旨等を掲載する場として 『ロシアの中のアジア/アジアの中のロシア研究会通信』をこれまで3号発行しました (No.1, Dec. 2003; No.2, March 2004; No.3, April 2004)。 報告要旨のほか、No.1に「ペテルブルグとモスクワにある中東鉄道フォンドの目録瞥見」(原暉之)、 No.2に「中国刊行ロシア語出版物所蔵目録稿」(兎内勇津流)を掲載するなど、 アルヒーフ情報や特殊領域のビブリオグラフィーといった研究案内的な情報も随時収録することにしています。 これからも隔月に1回のペースで研究会を開催する予定ですが、とりあえず次回予告は次の通りです。

[原]
第4回「ロシアの中のアジア/アジアの中のロシア」研究会
日時:2004年5月24日(月)13:30〜16:30
会場:スラブ研究センター大会議室
●長縄 宣博(東京大学地域文化研究科・博士後期課程)
   「日露戦争期ロシア軍のなかのムスリム兵士」
●松本郁子(京都大学人間・環境学研究科・博士後期課程)
   「太田覚眠論:日露戦争とシベリア出兵をめぐって」



◆2004年度21世紀COE外国人研究員決定◆

 2004年4月から2005年3月にかけての21世紀COE「スラブ・ユーラシア学の構築」 短期外国人研究員の公募は3月10日をもって締め切られ、厳正な選抜の結果、 次の外国人が招聘されることになりました。

■ゴリゾントフ、レオニード・エフレモヴィチ(Gorizontov, Leonid Efremovich)

ロシア科 学アカデミースラブ学研究所研究員(ロシア)
■グリニョフ、アンドレイ・ヴァリテロヴィチ(Grinev, Andrei Val'terovich)

サンクト ペテルブルク労働組合人文大学歴史学講座教授(ロシア)
■ムハリャモフ、ナイル・ミトハトヴィチ(Mukhariamov, Nail' Midkhatovich)

カザニ・ エネルギー大学社会科学講座長・教授(ロシア)
■デ・グラフ、チェルド(DeGraaf, Tjeerd)

グロニン ゲン大学言語学部教授(オランダ)

 滞在時期は、ゴリゾントフ氏、グリニョフ氏、ムハリャモフ氏が2004年秋、 デ・グラフ氏が2005年2、3月を予定しています。
 ゴリゾントフ氏は、ロシア帝国への空間的アプローチを提唱する国際的にも有名な研究者であり、 昨年秋の来日時における八面六臂の活躍は、私たちの記憶に新しいところです。 また、秋に、ロシア帝国論をテーマとした院生向けセミナーをおこなうことを約束してくれています。
 グリニョフ氏は、18世紀から19世紀にかけてのロシア領アメリカおよび極東の専門家です。 境界地域研究が国際的にも、国内的にも活況を呈していることは、たとえば昨年 Ab Imperio が「境界」というテーマで特集号を組んだこと、 また21世紀COEの一環としておこなわれている連続セミナー 「ロシアの中のアジア/アジアの中のロシア」の盛況ぶりに示される通りです。 グリニョフ氏の日本滞在は、日本における境界地域研究を一層充実させるものになるでしょう。 2004年10月に札幌で開催されるロシア史研究会大会への貢献も、当然予定されています。
 ムハリャモフ氏は、タタルスタンを代表する政治学者で、 1990年代のロシア・リージョン政治研究の世界的なブームの立役者でもありました。 今回の滞在はわずか1ヵ月ですが、2004年10月に札幌で開催されるロシア・東欧学会への貢献や、 日本においてヴォルガ地域イスラム研究を定着させる役割が期待されています。
 デ・グラフ氏は、サハリンの少数民族研究、ピウスツキ研究などで日本にもなじみの深い研究者です。 シベリア・極東の民族研究において、これまで積み重ねてきた日本人研究者との協力をいっそう深化させると同時に、 井上教授退官後のスラブ研究センターにおける民族学研究を補強することも期待されています。

[松里]





◆2005年度外国人研究員公募(長期)締切る◆

 3月末に2005年度の長期外国人研究員の募集が締め切られました。応募総数は64件で昨年に比べ4件減少しました。 地域別・国別の内訳をみると、ロシアが26件と全体の4割を占めており、これは昨年とほぼ同じ割合です。 つづいて、中・東欧諸国(バルト諸国を含む)が16件、中央アジア・コーカサス諸国が7件、 北米・西欧が5件、ウクライナが5件、となっています。分野別でみると、文学・文化・言語が18件、 歴史が17件、政治・国際関係が15件、経済が10件、となっており、 昨年に比べ文学・文化・言語と政治・国際関係の両分野が増えています。
審査は2ヵ月以上にわたって慎重におこなわれ、7月までに候補者3名が決定される予定です。
なお、今年度の長期外国人研究員は、ニュース95号でもお伝えしました通り、 以下の三氏で、 現在受け入れの最終準備がおこなわれています。

[山村]

■I.ルコヤノフ(ロシア科学アカデミー・サンクトペ テルブルク歴史研究所)

滞在予 定期間:2004年6月1日〜2005年3月31日

研究 テーマ:1890年代〜1904年のロシア極東における政策選択
■V.シュニレルマン(ロシア科学アカデミー・民族学 考古学研究所)

滞在予 定期間: 2004年6月1日〜2005年2月28日

研究 テーマ:20世紀における北コーカサスにおける知識人と政治
■P.ワース(ネヴァダ大学・歴史学部)

滞在予 定期間: 2004年7月1日〜2005年3月31日

研究 テーマ: ロシア帝国における非正教徒の異教信仰と宗教的寛容政策、 1772−1914年




◆ブロディン氏、デ・グラフ氏の滞在◆

 スウェーデンのイェーテボリ大学経済・商法学研究科のアルフ・ブロディン(Alf Brodin)氏が、 日本学術振興会外国人特別研究員として、本年2月から11ヵ月間の予定でセンターに滞在しています。 専門は経済地理学で、日本での研究テーマは「ロシアの港湾とアジア隣国との貿易関係」です。 受入研究者はセンターの田畑です。本人とは、メールでも連絡できます (alfb@slav.hokudai.ac.jp)。

[田畑]

 オランダのグロニンゲン大学言語学部のデ・グラフ(DeGraaf, Tjeerd)氏が、 日本学術振興会外国人特別研究員として、本年3〜4月の約2ヵ月間センターに滞在しています。 専門はシベリア・極東の民族研究です。

[編集部]




◆専任研究員セミナー◆

 1月から3月にかけて専任研究員セミナーが4つ開催されました。

1月20日
望月哲男
"Shame and Idea: Dostoevsky's A Raw Youth"


外部コメンテーター:諫早勇一
2月12日
家田修
"Regional Identities and Meso-Mega Area Dynamics in Slavic Eurasia: Focused on Eastern Europe"


外部コメンテーター:山下範久
2月24日
林忠行
「チェコ共和国における欧州懐疑主義:市 民民主党とEU加盟問題」


外部コメンテーター:仙石学
2月26日
荒井信雄
「1990年代における日ロ水産貿易:そ のプラスとマイナス」


外部コメンテーター:鈴木旭
3月17日
山村理人
「ロシアの農業・食料複合体におけるイン テグレーションの展開」


外部コメンテーター:柴崎嘉之

 望月報告は、ドストエフスキーの代表的な長編小説の1つ「未成年」の作品分析を中心とした報告で、 未成年における「恥とイデア」の問題を論じたものです。
 家田報告は、1月のセンター冬期シンポジウムで基調報告となったペーパーで、 21世紀COEプログラムの中核となる「中域圏」概念を、東欧の事例を念頭に置きながら、 理論的に整理・深化させようとした意欲的な報告です。
 林報告では、チェコ政治における「欧州懐疑主義」の問題が扱われ、 特に市民民主党という党および党指導部、とりわけ党首のクラウス個人の理念、 思想などと結びつけられて論じられました。
 荒井報告は、1990年代の日ロ水産貿易の動態、および、 2003年にロシア政府が発表した「ロシア漁業発展のコンセプト」などの分析を通じて、 日ロ水産貿易の持続的発展の可能性について論じたものです。 
 山村報告は、1998年のロシア金融危機を転換点として新たな構造変動が起きつつあるロシア農業において最も中心的なテーマとなりつつあるインテグレー ションの問題を扱ったもので、 その複雑なプロセスの全体像を明らかにし理論的な意味を考察しようとしたものです。
 なお、2月27日には、センターで活動する若手研究員(21世紀COE研究員、非常勤研究員、 学術振興会特別研究員)による研究報告会が開催されました。 各自の報告テーマとコメンテーターは以下の通りです。外部コメンテーター制をとる専任研究員セミナーの場合と異なり、 センターの専任研究員もメインのコメンテーターとして加わっています。


飯尾唯紀
「近世ハンガリーにおける地域社会の秩序維持:裁判制度を手がかり にして」

コメンテーター:家田修
後藤正憲
「1930年代ソ連『工場史』編纂事業における『真 実』と『行為』」

コメンテーター:大津定美
大野成樹
「ロシアにおける証券市場の形成と発展」

コメンテーター:広田真人
越野剛
「悪魔憑き・マホメット・ドストエフスキー:ロシアに おける癲癇のイメージ」

コメンテーター:塚崎今日子
毛利公美
「カメラへの挑戦:ナボコフ『断頭台への招待』における映画、写 真」

コメンテーター:諫早勇一
阿部賢一
「『亡命』という選択肢:ニコライ・テルレツキーの 『履歴書』をめぐって」

コメンテーター:諫早勇一
藤森信吉
「ウクライナ・アメリカ関係再考」

コメンテーター:林忠行

 専任研究員セミナーでは出席者によるコメント・討論の時間が2時間近く設けられていますが、 若手研究員の報告ではそれが1時間足らずと短くなっています。 そのため、十分議論が出来なかったという問題点も指摘され、次回の報告会では、 それぞれの時間をより長くとることが決まっています。

[山村]





◆研究会活動◆

 ニュース96号以降の北海道スラブ研究会およびセンター研究会の活動は以下の通りです。[大須賀]

11月 11日
第1回「ロシアの中のアジア/アジアの中のロシア」研究会


上田貴子(学振特別研究員)「Харбин から哈爾濱へ:中国における国際都市の試み」


桑島裕子(北大・院)「ダライラマ13世のウルガ滞在:ロシア外交 文書館資料から」
1月20日
第2回「ロシア の中のアジア/アジアの中のロシア」研究会


塚田力(北大・院)「中国新疆ウイグル自治区における ロシア人の宗教活動」


神長英輔(東京大・院)「『北洋』とは何か:再構築さ れた漁業史と対露観」
1月 31日
E.チューリナ(ロシア経済文書館館長)「1920年代のソ連軍産複合体」(センター研究会)
2月1日
「ポスト冷戦時 代のロシア・中国関係とそのアジア諸地域への影響」研究会


D.クリフツォフ(北大・院)「ロシアの対イラク・北 朝鮮・イラン外交 」


S.タルノフスキー(慶應義塾大・院)「ポスト冷戦期 における中露間の相互イメージ・ギャップ」


岩下明裕(センター)「中央アジア:タジキスタン国境 地帯(パミール高原)とトルクメニスタン」
3月 13日
センター研究会「ロシア文芸の時空間」


久野康彦(放送大)「20世紀初頭における女性大衆小説」


貝澤哉(早稲田大)「最近のいくつかのジェンダー・セクシュアリ ティ研究から」


毛利公美(センター)「聖と俗、知と愚の狭間で:現代のスコモロー ヒ、プソイ・コロレンコ」


鈴木正美(稚内北星学園大)「エレーナ・ファナイローヴァについ て」


中村唯史(山形大)、岩本和久(稚内北星学園大)「ペレーヴィンの 文学について」


野中進(埼玉大)「プラトーノフの回想について」


亀山郁夫(東京外国語大)「ドストエフスキーのいくつかの側面につ いて」
3月16-18日
スラブ文学・文 化に関するスラブ研究セミナー「ウクライナ文芸の三つの顔」


T. フンドロワ(ウクライナ科学アカデミー文学研究所/センター21世紀COE外国人研究員)


「コトリャレフスキイ『エネイーダ』とウクライナ文芸 における国民的説話の形成」


「オリガ・コブィリャンスカヤと『高級』文化のフェミ ニズム概念」


「ウクライナ文芸のカーニヴァル化現象としてのポスト モダニズム」
3月 19日
井上紘一「ブロニスワフ・ピウスツキの足跡を尋ねて40年:就中、その極東滞在の究明」


(北海道スラブ研究会)
3月23日
E.ヴォラチェ ク(チェコ科学アカデミー歴史学研究所)


"Difficulties of Civil Society: Czech Republic, Russia, Germany and Japan" (SES-COEセミナー)
3月 26-27日
第3回「ロシアの中のアジア/アジアの中のロシア」研究会


渋谷浩一(茨城大)「18世紀前半の露清関係史における諸問題」


森永貴子(一橋大・院)「イルクーツク商人とキャフタ貿易」


永井リサ(九州大・院)「満州における林業調査と林業開発  1895−1930」


中嶋毅(東京都立大)「ハルビンのロシア人教育:高等教育を中心 に」


西山克典(静岡県立大)「クルバンガリー追尋:もう一つの『自治』 を求めて」


上田貴子(学振特別研究員)「1945年8月15日を軸としたハル ビン社会の変化」


田淵陽子「1945年東アジア国際関係と『内モンゴル人民共和国臨 時政府』」
4月4日
SEC-COE・科研「ポスト冷戦時代のロシア・中国関係とそのアジア諸地域への影響」連携特別研究会


岩下明裕(センター)「現地報告:モンゴルは上海協力 機構に加盟するか?」


荒井信雄(センター)、石井明(東京大)「パイプライ ンと北東アジアの国際関係」
4月12日
Yu.ノヴィク (カムチャッカ国立教育大、ロシア/センター21世紀COE外国人研究員)


「カムチャッカにおけるロシア正教の布教活動と原住民」

S.ラコバ(ア ブハジア国立大/センター21世紀COE外国人研究員)


「アブハジアとグルジアをめぐる情勢」


(北海道スラブ研究会)
4月13日
Z.セヴィチ(オールドロイヤル海軍大、英国)


"The Public Sector Reform in Montenegro" (SES-COEセミナー)

 なお、前号で、R.アリモフ氏の所属を(戦略・地域研究所、カザフスタン)とお伝えしましたが、 これは誤りで(ウズベキスタン大統領付属戦略・地域研究所)が正しい所属です。お詫びして訂正いたします。


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