北方海域技術研究会 講演会報告
サハリン大陸棚における石油・天然ガスの開発と環境

*以下は北海道技術士センター・北方海域技術研究会講演会の
内容を加筆したものである。(2000年6月1日現在)


3)その他のサハリンプロジェクトの状況

サハリン〜V

 サハリン〜Vプロジェクトはサハリン北東部大陸棚のサハリン〜TおよびUの鉱区を除いた地域にあり、4ブロックに分けられている。1993年3月1日、にロシア政府は国際入札を表明し、同年7月12日に米国デンバーにおいて入札説明会が開催された。同年12月に入札結果が発表され、エクソンが第1ブロックおよび第2ブロックを落札した。第1ブロックは東オドプト鉱区、第2ブロックはアイヤシ鉱区となっている。これら二つのブロックの予想可採埋蔵量(SMNG評価)は原油およびコンデンセート1億1,400万t、天然ガス5,130億m3と評価されている。2000年3月16日のロシア連邦下院のエネルギー・輸送・通信委員会の会議で、東オドプト鉱区とアイヤシ鉱区とを生産分与法による鉱区法案リストに載せ、下院の第一読会に持ち込むことが承認されている(『石油ガスコンプレクス』2000.3.18)。

 第3ブロックでは応札者はなかった。第4ブロックのキリンスキー鉱床は7,000km2の鉱区を有し、南キリンスキー鉱床を含んでいる。この鉱区を落札したモービルとテキサコの連合チームの評価によれば、南キリンスキー鉱区には主として石油が埋蔵されており、最も有望な可採埋蔵量は原油が4億5,000万t、ガスが7,200億m3とサハリン大陸棚で計画されている6つのプロジェクトのなかでは最も大きい。開発には135億ドルの投資が必要であり、50年間にわたって2,000億ドルの収入が見込めるとみられている(『コメルサント・デイリー』1999.5.6)。

 1996年1月11日、交渉が完了し、同年5月にはこのブロックに関する協定覚書が調印された。1997年にロシア側のロスネフチとサハリンモルネフチェガス(SMNG)がキリンスキー鉱区の開発に参加したい意向を示し、交渉の結果、1998年8月に参加が決まり、シェアはモービル33・1/3%、テキサコ33・1/3%、ロスネフチ16・2/3%、SMNG16・2/3%で合意された。生産分与法に基づくキリンスキー鉱区の開発は、1999年4月14日の下院採択、同年4月22日の上院承認を経て、同年5月1日にエリツィン大統領が署名したことによって実現できる運びとなった。

サハリン〜W

 サハリン〜Wプロジェクトの対象鉱区はサハリン北部のサハリン湾に位置するアストラハン鉱区とその北のシュミット鉱区である。対象となる鉱区の総面積は1万5,000km2以上。予想可採埋蔵量(SMNG評価)は原油・コンデンンセートが1億2,300万t、ガスが5,400億m3と見積もられている。ARCO(Atlantic Richfield Company)、ロスネフチ、SMNGがそれぞれ49%、25.5%、25.5%の出資比率で開発に着手することになった。1998年3月に協力協定が調印された。しかし、1998〜99年に世界の石油産業は厳しい経営状態に陥り、ARCOも例外ではなく、より効率的な経営が求められ、採算性の悪いプロジェクトから撤退せざるを得なくなった。ARCOがサハリン〜Wから正式に撤退を表明したのは2000年2月のことである(『サハリンスキー・ベドモスチ』2000.2.10)。実際の作業開始に当たって、ARCO側が生産分与協定を結ぶことが先決であると考えたのに対し、ロスネフチおよびSMNGはライセンスの有効期間中に掘削を行う必要があると主張し意見が分かれたことも原因となっている(『ソヴェツキー・サハリン』2000.3.2)。その結果、外国の企業は参加せず、ロシア側だけで開発することになり、この鉱床開発のために設立されたSMNGの100%子会社のアストラハン海洋会社(AMK)がオペレーターとなる。ライセンスの有効期間は2001年3月までであり、事実上2000年しか探鉱作業を実施できない。

サハリン〜X

 サハリン島北端大陸棚に位置する東シュミト鉱区を対象とするサハリン〜Xプロジェクトは約2万5,000km2の広大な領域を占める。原油・コンデンセートの予想可採埋蔵量は1億5,400万t、ガスのそれは4,500億m3と評価されている。1997年にSMNGと英国BPとは共同作業を行うことで覚書に調印している。

 しかし、今のところ具体的な進展はみられない。

サハリン〜Y

 サハリン島南東部のポグラニチヌイ鉱床を対象とするサハリン〜Yはまだほとんど進展がみられない。ただ、1999年3月にSMNGと米国VECO Corporationとの間に50対50の合弁企業Sakhalin Engineering-Construction Co.,Ltd.が設立されており、この企業が大陸棚の施設設計・建設にあたることになる。


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