6. 施設・設備
予算が比較的潤沢であるため、スラブ関係図書の収集が充実してきた。年間図書予算は5000万円前後である(参考文献4)。ただ重点領域研究の終
了により、1998年度の図書予算は約1000万円減少して、4633万円になっている。これでも文化系の1学部の図書予算に匹敵する金額と思われるが、
それをすべてスラブ関係の文献購入に当てることができるわけである。その内訳(1998年の場合)は公費からの支出2277万円、科学研究費からの支出
517万円、その他(COE予算や概算要求による基本図書整備計画の予算と思われる)1840万円であるが、センターの努力と実績で獲得したといえる後二
者が、図書予算全体の約半分を占めている。基本図書整備計画は、1981年度にその第1次が始まり、1999年には第4次(2003年度まで)がスタート
している(参考文献4)。1998年現在で、センターの総蔵書数は13万6000冊に上っている。センターは、イリノイ大学ソ連・東欧研究センター蔵書の
5分の1(11万冊)を目標としていたが、既にそれを達成している。イリノイ大学には依然として遠く及ばないとしても、スラブ研究センターの蔵書はわが国
におけるスラブ関係図書の最大のコレクションである。その中には、『18世紀ロシア出版物』、『ロシア革命期新聞コレクション』、帝政期以来のロシア・ソ
連の人口センサス、旧ソ連邦の20万分の1地勢図など、基本的かつ貴重な文献が含まれている。『ソビエト共産党・ソヴィエト国家機密文書集成』も購入が進
んでいる。また現代ロシアの新聞だけでも52紙が揃っている(参考文献4)。
これだけ貴重なスラブ関係図書を抱えながらも、従来その利用は必ずしも便利ではなかったようである。しかし、1999年5月の規定改正により、北
海道大学内部の利用者にたいしては全面貸出が行われるようになった。しかしセンターが全国共同利用施設であり、また事実上もわが国のスラブ研究の中核とな
るべき位置にあることを考えると、その豊富な文献が全国の研究者にとって有効に利用される条件を整えなければならない。アンケート調査の結果によると、回
答者の84%がセンターの図書を利用したことがあると答えているが、逆にセンターが中心となった研究プロジェクトに参加したことのない研究者の30%弱は
これまで所蔵図書を利用したことがない(参考文献6)。
なおセンターの図書情報は、学術情報センターのカタログやインターネットによる北大図書館蔵書検索サービスによって入手することができる。しかし
センターの立地条件からすれば、遠隔地研究者へのコピー・サービスの需要は大きいはずである。ヒヤリングによれば、年間約100件のコピー請求に応じてい
るようであるが、その豊富な蔵書量からすれば、これは意外に低い数字である。(注1)
図書については、つぎのような問題点がある。図書予算が豊富とはいえ、収集すべき図書は無限といってよいほど存在する。図書を充実させるために
は、海外からの直接購入の方法も考えるべきかもしれないし、また利用頻度の高い文献を揃えるために、全国のスラブ研究者の図書購入希望を反映させる方法を
考えることも必要であろう。アンケート調査の回答も指摘しているように、図書の地域的偏りの問題もあり、シベリア、コーカサス、バルカン方面の文献が乏し
いようである。
配置スペース不足のため、数年前よりセンター購入の図書が付属図書館でなくセンター棟に別置されている現状は、利用上大きな不便をもたらしてい
る。別置されている図書については、図書館間の相互貸借などのサービスが直接には及ばないからである。(注2
※ 関連資料: |
|
<注釈>
上の文章中で補足説明が要する点が2箇所ありましたので、外部点検評価委員の承諾のもと、以下の2点について補足の注釈
を掲載します。(スラブ研究センター点検評価委員会・報告書編集担当)
(注1)
「年間約100件」というのは、附属図書館へ外部から現物借出の申込みがあった図書のうち、スラブ研究センターに別置されているためセンターで措
置した件数である。センターの収集した資料に対する複写の年間処理件数、および現物貸出件数は、これより相当多いものと見込まれる。
(注2)
実際には、センター内に所在する資料も相互貸借の対象として、外部への貸出と複写物の提供が行われており、対外サービスでは従来からの水準が維持されてい
る。しかし、この別置によって、センターのコレクションが学内的に分断されている点、センターに所在する資料の書架に利用者がアクセスできない点で、大き
な不便をきたしている。