ITP International Training Program



プレゼンテーションにおける準備の重要性

桜間瑛

(北海道大学文学研究科博士後期課程)


 ロシアをフィールドに研究する者として、大学入学以降、専らロシア語の向上に取り組んできたが、英語、特にその会話などに関しては、集中して取り組む機会を持つことはなかった。そうした状況の中で、突然な企画だったこともあり、多少の不安を覚えながらのスタートであった。


 合宿中は、基本的に90分の授業が1日5つ、その他の時間も基本的には英語のみでコミュ ニケーションをとる。札幌の中心部からは隔絶された環境で、国内にいながらにして、語学留学にでも来たのか、と錯覚させるような環境が整えられた。3人の講師陣は、努めてフランクにわれわれに接してくれたことで、授業以外の場面でも英語に接する機会を多く得ることができた。もちろん、授業においても体系的かつ実践的なものが提供され、徐々にそのペースに慣れていくことができた。


 特に力が入れられたプレゼンテーションのおこない方に関する講義は、とても新鮮なものであった。普段は、とかく報告の内容に力を込めるものの、報告をおこなうこと自体の練習などはほとんど関心を払ってこなかった。しかし、ここではプレゼンテーション自体にも、周到な準備が必要なことが強調され、繰り返しそのポイントや練習がおこなわれてきた。英語に限らずここで教わった報告の構成やジェスチャー、アクセントの置き方などは、日本語の報告等にも十分応用できるものとして、貴重な経験であった。


 報告に関して、プレゼンテーション自体は確かに十分な訓練、準備をおこなうことができたものの、その後の議論の方法に関して十分な訓練を積むことができなかったことが悔やまれる。特に、ネイティヴからの「本格的」な質問があった場合の対応などを練習することができなかった点は、とても残念であった。それと関連する問題として、講師陣がスラブ・ユー ラシア地域に関する専門家ではなかった点がある。3名とも、純粋に語学能力の向上という点に関しては、非常にすばらしい授業を展開してくれたが、専門に関する文章の校正などを任すには不安が残った。シンポ・デモ初日の、ソ連史家アンドリュース氏の講演・コメントが非常に有益であった点から分かるように、1人でも専門と関わる講師が参加していただければ、より実践的なアドヴァイス等を直接得ることができ、また専門の報告等に対して、本番のシンポジウムさながらのコメントや質問をコンスタントに得ることができたのではないだろうか。



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