ITP International Training Program



札幌からハワイへ:英語合宿と学会報告の経験

麻田 雅文

(日本学術振興会特別研究員)


 2008年の英語合宿のあと、残念ながらロシアへの留学などで久しくキャンプ地・真駒内を訪ねることもなかった。その英語合宿が今年も開催されると聞いたのは、2月の末だった。日程的な余裕はなかったものの、3月6日から11日まで開催された同合宿に参加してきた。今回はすでにスラブ研究センターを卒業した身であるため、押しかけるような形であったが、それでも参加したことはやはり色々と勉強になった。


 英語合宿は前回に参加したような形式で進んだ。まず自己紹介から一般的なスピーチの手ほどき、そして自分の発表原稿をいかに20分間でアピールするか、という流れである。参加者7名のうち、再参加は桜間さんと私の二人だけで、フレッシュな面々と時間を共有することで、2008年に教えられていても、忘れていたいくつかのポイントを思い起こすことができた。問題提起(introduction)に始まり、議論(body)を展開し、結論(conclusion)に至る流れは、分かっていてはいても日本語の発表ではグタグタになりがちである。英語合宿では、その姿勢を再度矯正できた。中でも、基本的に発表時間の20分間は発表者の自由に使えるもので、研究内容も重要だが、発表のスタイルで聴衆をいかに魅了して印象付けるかが大事だという、グレッグ講師の教えは身にしみた。そのためには原稿の棒読みに陥らず、「リスクを取れ」という教えも最終日に頂いた。研究内容に参加者が精通していない大規模な学会の場合、こうした教えはとても有効だと思う。



 ただ、こうして臨んだハワイでのアジア学会での発表では、私はリスクを回避し、原稿を読むスタイルを変えなかった。合宿からハワイでの発表までに東日本大震災があって、スタイルを変えるどころではなかったというのはあるが、基本的に「失敗したくない」という守りの姿勢で臨んだといえる。結果、失敗はなかったものの、成果もそれほどあがらずに、私の参加した個人応募パネルは終了した。学会に出たことで海外の知人を増やし、大家と呼ばれる先生の知遇を得たことで、わざわざ出向いて発表してきたことには意味があった。しかし、唯一後悔されるのは、合宿で勧められたパワーポイントの使用を断念したことだろう。アジア学会では、ほぼ7割近くの報告者がパワーポイントを使って発表していた。もちろん、この学会は非ネイティブが見た所半分近くを占める学会であるという、固有の事情もある。しかし、聴衆の関心はパワーポイントを使用することで確実に増し、強い印象を与えていたことは争えない。地図や絵画、写真、音声、映像を駆使した報告は、それだけ準備に時間を要するが、それだけの見返りがある。というわけで、今後とも海外の学会で報告を継続する我々としては、パワーポイントの活用術が大きなキーになることを強調して、今回の報告の締めくくりとしたい。今後、英語合宿が開かれるなら、パワーポイントの使用を義務付けてもいいのではないか、とすら思う。少なくとも、一日はこのために時間を割くのは、どんなスタイルを持つ研究者にとっても有益であろう。




会場となったハワイコンヴェンションセンターにて

 最後に、今回の合宿参加を支援して下さった越野さんとスラブ研究センターのスタッフの皆様に、改めて御礼申し上げます。


[Update 11.04.15]

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