スラブ研究センターニュース 季刊 2010 年夏号 No.122 index

グローバルCOE


第三期展示開始~ GCOE、南西へ

「冬= 北」「夏= 南」、という訳 ではありませんが、北大GCOE プ ログラム「境界研究の拠点形成」 は、5 月14 日から北大総合博物館 展示「海疆ユーラシア-南西日本 の境界」を催しています。GCOE プログラムは、多くの地域の境界 事象を相対化することを特色の一 つとしていますが、実際に、日本 の南北の境界は多くの共通点を抱 えています。すなわち、19 世紀後 半、明治政府は「蝦夷地」を「北 海道」として北の国境線の画定を 進める一方で、琉球王国を日本に 統合して南の国境線の画定を試みていました。その後、日清・日露戦争、そして第二次世界 大戦とを経て、南北の国境線が20 世紀を通じて幾たびも変化します。度重なる国境線の移動 は、境界地域に生活する人々に深甚な影響を及ぼし、経済的につながっていた隣接地域が国 境線で断絶されることにより、地 域経済の崩壊や密漁、密貿易といっ た南北共通する現象が生じてきま した。境界研究ブースでは、これ ら地域と台湾とのつながりを示す パイナップル缶詰レプリカや一般 人のパスポート、沖縄が日本の国 境外だったことを示す渡航証明書 等を展示しております。

土曜市民セミナーで講演する松田氏
土曜市民セミナーで講演する松田氏

GCOE が主催する博物館土曜市 民セミナーも、「南の島 とうしょ 嶼」と題し て展示に合わせた講演シリーズを おこなっています。各演題および 講師は次の通りです。

5 月15 日(土)「八重山に息づく台湾:境域に暮らす」松田良孝(八重山毎日新聞記者)
6 月19 日(土)「八丈島の兄弟:小笠原諸島と開拓110 周年を迎えた南北大東島」山上博信(国 立民族学博物館共同研究員・日本島嶼学会理事)
7 月17 日(土)「無国籍を生きる」陳天璽(国立民族学博物館准教授)
9 月18 日(土)「海峡あれど国境なし:福岡・釜山フォーラムの事例を通じて」松原孝俊(九 州大学韓国センター長)

第三期展示の様子
第三期展示の様子

これまでの企画との相乗効果のおかげか、引き続き満席の聴衆を集めています。セミナー には、常連(道民カレッジ履修者)だけでなく、新たな客層、特に南西の島々に関心を持つ 若い層を取り込みつつあり、GCOE が掲げる目的の一つ「知見の社会還元」に適うものでも あります。参加者を通じて、人文系では接点がない理系の研究者達と知り合う等、タロイモ の地下茎のごとく、拠点ネットワークも着々と広がりつつあります。

なお、博物館展示やセミナー情報以外にも単発のセミナーも随時開催しております。最新 情報については、境界研究HP(http://www.borderstudies.jp) で逐次発信しておりますので、是 非アクセスしてみてください。

[藤森]

→続きを読む
スラブ研究センターニュース No.122 index