スラブ研究センターニュース 季刊 2013 年冬号No.132 index

エッセイ

札幌の印象

パン・ドンメイ(黒龍江大学ロシア研究所/センター2012 年度特任准教授)



著者
 今まで私は、日本に北海道という島があり、そこに札幌 という美しい街があるということを、テレビや、インター ネット、知人の話を通してしか知りませんでした。それに 私はこれまで日本へ来たことがなかったので、この町を訪 れるチャンスもなかったのです。ところが思いがけない運 命の巡りあわせで、私は札幌へやってくる機会に恵まれま した。こうして私は招聘研究者として丸5 ヵ月も北海道大 学スラブ研究センターで仕事をすることとなりました。札 幌へ来たのはたった半月前ですが、札幌もそこに住む人々 も私にとって深い印象を呼び起こしてくれました。

空港での出迎え

 2012 年10 月31 日私は札幌へやってきました。空港で私 を出迎えてくれたのは、北海道大学の大学院修士課程で学 んでいるという高良さんでした。彼がロシア語をほとんど話せず、私の方でも英語が上手ではない(そして もちろん日本語は話せない)にもかかわらず、そ れでも私たちは道すがら英語でやりとりをしまし た。高良さんについて私が知ったのは、彼が歴史 を研究していること、以前4 年間東京で勉強して いたこと、そして妹さんが2 人いることでした。 そのうちの一人は中国語を話すらしいのですが、 彼女は今違う町で働いているそうです。道中私た ちはあれこれ話したのですが、私はこの頭の良い 青年とおしゃべりするのがとても楽しかったので す。高良さんどうもありがとう!

北大の銀杏並木
 

スラブ研究センター

 北大スラブ研究センターの定例会議で私たち3 人の外国人研究員(私は中国から、ヴァジムさん はドイツから、アルカージーさんはロシアから) はセンターで働く皆さんに紹介されました。研究 員と事務職員の皆さんは外国人である私たちにと ても親切に接してくださるので、中国にいる時と 同じように感じています。豊富な蔵書を誇る図書室を備えたスラブ研究センターを私はすぐ 気に入りました。ここスラブ研究センターで私たちは間違いなく個々の研究分野で大きな成 果を挙げるものと確信しています。

第2 農場の紅葉
 

美しく趣深い北海道大学のキャンパス

 11 月初旬、北海道大学のキャンパスはとても美しいもの です。いたるところで木々の葉が様々に色を変え、緑の芝 生が広がっています。特に趣深く感じたのは銀杏並木と第2 農場です。毎日私は仕事へ向かうために第2 農場の横を通っ ています。第2 農場の建物は他の建物と違って全てが木造 です。年季の入った、飾り気のないこれらの木造建築からは、 さっぱりとして落ち着いた印象を受けます。銀杏並木のほ うは、その素晴らしさが何よりも気に入っています。道の 両側に居並ぶ、背が高く、手入れが行きとどいた銀杏は行 き交う人びとを見守っているかのようです。黄色く色づい た木の葉は、太陽に照らされて黄金のように輝き、人びと を楽しませてくれます。銀杏の葉は美しさで人びとの目を 見張らせるだけでなく、それを乾かせば咳止めや喘息の薬、 痛み止めにもなると言います。それに加えて、銀杏の実の ほうも健康によいものです。 自然の美しさのみならず、北海道大学のキャンパスは、私に心の安らぎを与えてくれますが、 それはキャンパスにある大学草創期に活躍したクラーク博士の記念碑によるものです。北海 道大学のモットーであるクラーク博士の «Be Ambitious» という言葉は前進し、困難を克服す るよう私を常に奮い立たせてくれます。北海道大学のキャンパスは何と美しく、変化に富ん でいるのでしょうか!

札幌の食事、温泉、雪まつり


クラーク博士の胸像
    明治時代の初め(1870 年代)に豊平川の畔 に建設された札幌は京都旧市街を模して計画さ れたとのことで、全ての通りが直角に交わる格子 状となっているようです。道に迷うことがないの で、私は几帳面に作られた札幌の都市計画に好感 を持っています。時間があれば、私はあるいは一 人で、あるいは友人たちとよく街を散歩します。 札幌には日本やヨーロッパ各地の料理を出すレ ストランやカフェが多いので、食事の心配はいり ません。歩き疲れたら、友人たちと連れ立って温 泉でのんびりと過ごします。 他にも、大通公園では毎年2 月に氷で作った 色々な彫刻を集めた雪まつりがあるのだと聞か されました。世界的に知られた雪の彫刻の祭典を この目で見たくて、私は2 月がやってくるのをも う待ちきれません。

温かい札幌の人びと

 スラブ研究センターでは、国内外のスラヴ語学者を迎えた研究会や講演会が充実しており、 まだ研究を始めたばかりの私にとっては難しいことも多くありますが、優れた研究者と直接 お話ができるなど、多くの学術的な刺激を日々受けて、国内の他大学ではありえない大変恵まれた環境です。 今後もこのような機会には、積極的に参加したいと思います。

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