スラブ研究センターニュース 季刊 2013年冬号No.132 index

大学院だより

◆麻田雅文さんの『中東鉄道経営史:ロシアと「満洲」1896-1935』◆出版される

   麻田雅文さんは、スラブ社会文化論専修に修士課程から在籍し、2010 年にご著書と同名の 博士論文を北海道大学に提出しました。 その博士論文は、2011 年8 月に第10 回アジア・太 平洋研究賞(井植記念賞)を受賞しています。 第10 回では、上野雅由樹さん(当時、東京 大学)とともに2 名の受賞でした。そして今年11 月に、本文、註、史料を合わせると479 頁、 参考文献が26 頁にわたる大著が、名古屋大学出版会より出版されました。以下は、その麻田 さんからの喜びの声と今後の抱負です。
[長縄]


 「修士、博士課程とお世話になったスラブ研究センターでの研究を、このたび一冊の本にまとめることができて、深い感慨を覚え ます。拙著を簡潔にまとめるなら、ロシア人たちが20 世紀前半の「満洲」(中国東北)で中東鉄道の経営を通じて何をしていたかの 地域史であり、さらに鉄道の敷設で興隆した地域経済の変容を扱った経済史でもあり、露中日米仏など各国も鉄道を手に入れようと 野心を抱いていたことで 繰り広げられていた国際関係史の研究でもある、という三つの側面があります。
 今でこそ「満洲」は遠くになりにけり、ですが、1945 年の敗戦までは日本の「生命線」と呼ばれた最重要地域でした。 その影響は遠く北海道にも響いており、書庫をのぞけば、当時の北海道帝国大学がいかに熱心に「満洲」について書籍を収集していたかが分かります。 また日本海を挟んで向かい合うこの両地域は、対ロシア(ソ連)の最前線として日本の国防の要であったと共に、 ロシア文化と日本人が触れ合う磁場としても共通性がありました。 中東鉄道に関する初の総合的な研究が北海道大学の一学徒だった自分の手で書かれたのも、 一抹の必然性があったのかもしれません。今後もロシアという隣国を東北アジアの歴史に接合すべく、新たなテーマで挑戦を続けていく所存です。」

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