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地域研究コンソーシアム

地域研究コンソーシアム設立10週年にあたり

 このたび地域研究コンソーシアム賞(JCAS賞)登竜賞が当センターに係わりの深い二人の若手研究者に贈られ、誠に喜ばしいことです。高橋美野梨、塩谷哲史両氏に心よりお祝いを申し上げます。昨年はセンターが牽引した「ユーラシア地域大国比較研究」(センター教授田畑伸一郎代表)がJCAS賞の研究企画賞を受賞しました。過去のJCAS賞においても中央アジア研究、シベリア研究、モンゴル研究など毎回スラブ・ユーラシア地域の研究が受賞しています。  

  本年は地域研究コンソーシアム設立10周年という節目の年にあたります(設立準備についてはhttp://www.jcas.jp/about/junbi2004.htmlを参照してください)。地域研究コンソーシアムの設立はここスラブ・ユーラシア研究センターから起りました。当時は国立大学法人化をはじめ、日本の研究と学問に大きな変化の潮流が起きていたのです。競争原理や大学間の差別化が図られ、これが大学の活性化に結びつくはずだと想定されていました。しかし現実には大学間の連携が難しくなり、個々の地域研究が孤立して相互協力が難しくなるという危機感が強まる状況が生まれていました。とりわけ日本の地域研究を担ってきた各研究機関が大学組織の中に吸収され埋没するのではないかという危惧があったのです。  

 こうした危機意識をバネとして、逆に大学を超えて全国的な協働ネットワークとしてのコンソーシアムを立ち上げようという志が、当センターから発せられ、主要な地域研究諸機関に呼びかけられたのです。同じ意志を持つ研究者達から、たちまち賛同が集まりました。さらに地域研究は広く社会と連携すべきであるとの考えから、NPO/NGOなどの社会団体にも参加を呼びかけました。こうして2004年に北海道から九州に至る各地から50ほどの組織が参加して地域研究コンソーシアムが結成され、今日では加盟組織も100近くに達しています。  

 当スラブ・ユーラシア研究センターはコンソーシアム設立を提言して以来、会長職や理事職を歴代のセンター長が務め、幹事組織として中心的な役割を担ってきました。ひとつの発想が日本の研究者に大きく育てられ互恵的に発展を続けています。次世代にはさらに、大学や専門地域の垣根を超えて協働し、新しい発想で地域研究コンソーシアムが展開されることを、心から期待しています。

 家田修

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