スラブ研究センターニュース 季刊 2008 年春号 No.113 index
スラブ研究センター(SRC)は、若手研究者インターナショナル・トレーニング・プログ
ラム(ITP)の2008 ~ 2012 年度実施組織として採択されました。4 月10 日を締切として、
第1 期ITP フェローの公募がおこなわれ、下表の4 名が採択されました。オックスフォード
大学については、例外的に、2 名のフェローを派遣することになりました。
派遣先 |
フェロー |
身分 |
オックスフォード大学 聖アントニー校ロシ
ア・ユーラシア研究センター |
乗松亨平 |
首都大学東京非常勤講師 |
平松潤奈 |
東京大学教養学部非常勤講師 |
|
ジョージワシントン大学 欧・露・ユーラシア研究所 |
杉浦史和 |
帝京大学経済学部助教 |
ハーヴァード大学 デイヴィス・センター |
半谷史郎 |
ITP の趣旨は、学術振興会によれば、「我が国の大学院学生(博士課程、 修士課程)、ポスドク、助教等の若手研究者が海外で活躍・研鑽する機 会の充実強化を目指」し、そのため「我が国の大学が、一つないし複 数の海外パートナー機関(大学、研究機関、企業等)と組織的に連携し、 若手研究者が海外において一定期間教育研究活動に専念する機会を提 供する」ものです。
当初よりSRC は、ハーヴァード大学デイヴィ ス・センター、オックスフォード大学聖アント ニー校ロシア・ユーラシア研究センターをパー トナーとする方針で、これらの同意を取り付け ていました。ワシントンDC エリアにおけるSRC の伝統的パートナー はケナン研究所ですが、この研究所はウッドロウ・ウィルソン・セン ターの一部であり、独立してフェローを受け入れる権限を持たないた め、ジョージワシントン大学の欧・露・ユーラシア研究所をパートナー とすることになりました。もちろん、ワシントンDC エリアに送られ る研究者がケナン研究所での活躍も期待されるのは変わりません。
漠然と見聞を広げることが課題だった従来の英語圏への留学とは異なり、ITP はあくまで 訓練のための派遣です。SRC が推進するITP においては、派遣期間中に有力国際学会での研 究発表、一流英文査読誌への投稿が義務付けられます。また個人業績を発表するだけではなく、 パートナー組織の助言を受けながら小シンポジウムなどを組織する資金が支給され、英語で 企画を組織する能力も身につけることができます。 また、10 ヵ月の派遣期間中だけではなく 5 年間の事業期間を通じて、国際的な共同研究と業績発表の先頭に 立つことが期待されます(逆に言えば、そのための財政的・技術的 な支援を受けることができます)。もちろん、年間2000 万円のITP 予算だけでこれら全てを推進することは無理ですから、SRC のITP 事業は、グローバルCOE と緊密に結びついて展開されます。ITP と GCOE の相乗効果で、今後5 年間に、Slavic Review のような英語圏 の一流査読雑誌にコンスタントに書く若手研究者のエリート中核を 形成することを目指しています。
このような重い責任を担うフェローには、博士号を取得している こと(「あるいはそれに準ずる業績」などという奇妙な但書きはなし)、 すでに外国語での業績発表経験があることが求められました。つま り普通の大学採用人事よりも厳しい要件が課せられたわけです。この厳しさゆえに、またすで に次年度の講義を持っている若手には応募不可能な突然の公募だったこともあって、応募数は 7 名と決して多くありませんでしたが、応募者の水準が高いだけに厳しい選考となりました。
第2 回フェローについては、非常勤講師職などとのスケジュール上の問題を惹起しないよ うに、今年末から来年初にかけて公募がおこなわれる予定です。博士論文を出しても、海外 での業績があっても就職が有利になるわけではないと諦観して、これらを追求してこなかっ た若手研究者が、ITP に応募するためにこれらに本気で取り組むようになったとも聞きます。 翌年の国際学会での報告を登録している者が優先的に採用されますので、この点でもいまか ら準備を進めることが望まれます。
すでにITP と趣旨を共有する企画として、ソウル大学での第1 回スラブ・ユーラシア研究 東アジア学会(2 月21 ~ 22 日)、東アジアスラブ学会長サミット(2 月22 日)、第1 回真駒 内英語キャンプ(3 月10 ~ 22 日)がおこなわれ(以下に関連記事)、5 月にはSlavic Review とEurope-Asia Studies の前・現編集長を招いての英語論文執筆講習会が北海道大学で開催さ れます。グローバルCOE を目前に控え、東アジアのスラブ・ユーラシア研究は大きく飛躍し ようとしています。