スラブ研究センターニュース 季刊 2009 年冬号 No.116 index
ニュース前号以降、次の専任研究員セミナーが開かれました。
このペーパーは、ムスリム社会と国家(帝国)の相互作用という長縄氏の一貫したテーマを、 メッカ巡礼という広域的・動態的なトピックに沿って展開したものです。巡礼が必ずしもム スリムの一体感を醸成するとは限らず、出身国・地域ごとの違いを意識させる機会でもあっ たこと、ロシア帝国が巡礼者を「汎イスラーム主義」の文脈で警戒しつつも管理・保護を図っ たことを明らかにし、検疫態勢や、ロシア・ムスリムのオスマン帝国観にも論及しています。 旅行記、テュルク語の新聞、文書館史料などを駆使した力作ですが、セミナー参加者からは、 論理構成や説明の分かりやすさに難があるという指摘もありました。コメンテータからは、 ガージャール朝イランの巡礼を専門とする立場から有益な論評をいただきました。