SRC Winter Symposium Socio-Cultural Dimensions of the Changes in the Slavic-Eurasian World ( English / Japanese )


ロシアとCIS諸国との貿易に関する統計分 析

田畑伸一郎(スラブ研究センター)

Copyright (c) 1996 by the Slavic Research Center( English / Japanese ) All rights reserved.


はじめに

本稿では、旧ソ連における企業間取引関係の実態を明らかにするという共通テーマの一環として、ロシアとCIS諸国との貿易に関する統計を分析する。とく に、1995年以降のロシアとCIS諸国との貿易(とりわけロシアの輸入)の著しい増加という新しい趨勢が検討の対象となる。すなわち、ソ連の崩壊後、絶 対的にも相対的にも(外国貿易と比べてという意味で)縮小したロシアとCIS諸国との貿易に見られるようになった新しい趨勢について、その原因を探るとい うのが本稿の主たる目的である。この新しい趨勢が旧ソ連の企業間取引の復活を意味するものなのか、それともソ連崩壊前とは異なる取引関係が生じつつあるの かについて検討する。

本稿では、この目的のためにロシアとCIS諸国との貿易に関する統計を利用する。これまで、この統計に関する十分な検討が行われていないので、まず それを次節で行う。

なお、本稿において、「CIS諸国」とは旧ソ連構成共和国からバルト三国を除いた12カ国を意味し、「外国」とはCIS諸国を除く国々を意味するも のとする。

I.貿易データ

本稿の分析には、ロシア統計国家委員会の貿易統計とロシア国家関税委員会の通関統計を用いる。この2つが現時点でロシアの貿易に関する基本資料であ る。

ロシアの貿易統計の作成は、事実上、1992年から始まった。1985〜1991年のデータも得られるが、1991年以前のデータは、ソ連全体の データに基づいて何らかの形で推計した仮設的データである(詳しくは、Belkindas & Ivanova, 1995, Kuboniwa, 1994, Tabata, 1994参照)。

1992〜1993年のロシアの貿易データとしては、ロシア統計国家委員会の貿易統計があるだけである。ロシアおよびソ連では、従来、企業からの報 告に基づいて貿易統計が作成され、通関統計は作成されていなかった。ロシア国家関税委員会によって通関統計の作成が始められたのは、1994年初めのこと である。そして、通関統計を掲載した『通関統計集』(Tamozhennaya statistika vneshney torgovli Rossiyskoy Federatsii)が四半期報として1994年第1四半期から発行されるようになった(Tabata, 1994, p. 448)。1994年以降、ロシア統計国家委員会の貿易統計もこの通関統計に基づくようになったが、後述するようないくつかの修正が通関統計に加えられて いる。なお、ロシアの貿易統計の商品分類は、1992年から「商品の名称および分類についての統一システム(Harmonized Commodity Description and Coding System)」に基づく分類に移行しており、通関統計もこの国際的な統一システムに基づいている(op. cit., pp. 442-446)。

通関統計の作成は、貿易データに関してもう1つの大きな改善をもたらした。それは、対外国貿易と対CIS貿易の統計が統合されたことである。ロシア 統計国家委員会の貿易統計は、1992年以降、外国との貿易はドル建て、CIS諸国との貿易はルーブル建てで作成・公表されていた。この2つの貿易は制度 的にも全く異なる形で行われていたから(決済、価格等々)、統計上の区別は実態を反映したものでもあった。結果として、外国とCIS諸国を含めた貿易総額 というデータは存在しなかった。他方、通関統計は、いずれの貿易についてもドル建てで作成された。そして、ロシア統計国家委員会の方も、 Rossiyskiy(1995, p. 429)のなかで初めて、CIS諸国との貿易について1992〜1994年のドル建てデータを公表したのである。このうち1994年のデータは、通関統計 に基づいているようであるが、1992〜1993年のドル建てデータは、ルーブル建てデータを公定レートで機械的に換算したもののようである。対CIS貿 易の決済、価格などの面での制度化が1992〜1993年にそれほど進展していなかったことを考慮すると、1992〜1993年の対CIS貿易データはか なり仮設的なものであると考えられる。分析に耐え得るような対CIS貿易データが整備されるのは、通関統計が作成されるようになった1994年以降である と言える。

Metodologicheskiye(1996, pp. 420-421)によれば、ロシア統計国家委員会の貿易統計においては、通関統計に対して次の6点の修正が加えられている。このうち、(1)〜(3)は通 関統計では部分的にしか捕捉されていない輸出だけに関わる修正であり、(4)〜(6)は通関統計で全く捕捉されていない輸出入に関する修正である。

(1)魚・水産物。この輸出の9割は、公海上あるいは外国の港で行われていると記されており、これらが通関統計で捕捉されていない。この点について は、『通関統計集』にも明記されている(Tamozhennaya, 1996c, pp. 3, 26)。

(2)原油。

(3)天然ガス。(2)と(3)についてはパイプライン輸送による輸出が通関統計で十分に捕捉されていないと記されている。『通関統計集』には天然 ガスの価格に関する注があるだけで*1、ロシア統計国家委員会 の貿易統計とそれほど変わらないデータが掲載されているが、ロシア統計国家委員会の方で追加修正を行っていることが、ロシア統計国家委員会発行の月別統計 集から推測できる*2

(4)関税同盟国との貿易。これは現時点ではベラルーシとの貿易のみに関係する。1995年7月以降、ベラルーシとの貿易について通関制度が廃止さ れたため、通関統計もなくなった*3。1995年第3四半期以 降の『通関統計集』では、対ベラルーシ輸出入総額についてはロシア統計国家委員会のデータ(企業報告に基づくデータ)が利用されるようになったが (Tamozhennaya, 1996a, pp. 3, 6)、対ベラルーシ貿易の商品別データは掲載されなくなった*4

(5)非組織化貿易(neorganizovannaya torgovlya)。これについては、非組織化輸入の定義が、Metodologicheskiye(1996, p. 419)に与えられている。それによると、非組織化輸入とは、ロシア国内市場での販売を目的とする個人(居住者および非居住者)による国内への合法的な商 品搬入である。非組織化輸入の推計は、特定国(担ぎ屋貿易の対象国)からの外国人の入国者数および特定国へのロシア人の出国者数に1人当たり商品持ち込み 免税限度額をかけて計算される*5。GDP統計作成に関する情 報(Goskomstat RF & WB, 1995a, pp. 110, 148, 1995b, pp. 78-79, 104)によれば、特定国とは、中国、トルコ、ベトナム、インド、ポーランドであり、免税限度額は2000ドルである*6。この定義から、非組織化貿易はあくまでも合法的な貿易であることが確認される。しかし、 CIS諸国からの非組織化輸入がどの程度把握されているのか、非組織化輸出がどのように推計されているのかについては説明がない。なお、『通関統計集』に は、非組織化貿易が含まれないと明記されている(Tamozhennaya, 1996a, p. 3)。

(6)燃料、食糧などについての外国の船舶・航空機・自動車への販売とロシアの船舶・航空機・自動車による外国での購入。これについては、『通関統 計集』にはとくに記載がない。

以上の6つの修正項目については、(5)を除いて、Metodologicheskiye(1996)には詳しい推計方法が記載されていない*7

ロシア統計国家委員会は、1993年以降、非組織化貿易を含むデータと含まないデータを公表している。第1表から、非組織化貿易額は1995年に輸入総額の4分の1近くに達し たことが分かる。また、非組織化貿易を含まない貿易額は、通関統計データにかなり近似し、輸入についてはほぼ一致していることも分かる。若干の違いは、上 記の(1)〜(3)、(6)(輸入については(6)のみ)を反映したものと考えられる。なお、輸出については、外国への非組織化輸出のデータは最近の統計 集では得られなくなっている。また、当然とも言えるが、非組織化貿易の国別あるいは商品別データは得られない。

以上述べたことから、現時点では、ロシアの貿易については通関統計がもっとも重要な資料であることが分かる。ロシア統計国家委員会の貿易統計もほぼ 全面的にこれに依拠しているのである。また、従来は、ロシア統計国家委員会が毎年『貿易統計集』を発行していたが(詳しくは、Tabata, 1994参照)、『通関統計集』が発行されるようになった1994年以降、『貿易統計集』は発行されていないようである*8。このため、年あるいは四半期を単位として国別商品別貿易データを用いた詳しい分析を行う場合 には、『通関統計集』を利用することになる。しかし、以下の3つの点に関しては、ロシア統計国家委員会の貿易統計を使わざるを得ない。第1に、月別に分析 する場合には、速報性という点からも、ロシア統計国家委員会発行の毎月の経済実績統計集(タイトルはSotsial'no- ekonomicheskoye polozheniye RossiiあるいはEkonomika Rossii)を使うことになる*9。第2に、1995年下半期以降、『通関統計集』からはベラルーシとの 貿易に関する情報が得られないので、これを分析する場合にもロシア統計国家委員会の貿易統計を使う必要がある。しかし、筆者の知る限り、ベラルーシとの貿 易に関して、通関統計に匹敵するような商品別データはロシア統計国家委員会によっても公表されていない。第3に、『通関統計集』からは非組織化貿易に関す る情報が全く得られない*10。もっとも、ロシア統計国家委 員会の貿易統計からも、第1表に示した以上の情報は得られない。

II.CIS諸国との貿易動向

コメコンの崩壊、国内経済の混乱、ソ連の崩壊などの影響により、ロシアの外国貿易は1991年に激減し、1992年にもさらに減少した。第1表から分かるように、輸出は1993年から増加に転じたが、輸入の方 は1993年もかなり大幅な減少を記録した*11。CIS諸 国との貿易については、既述のように、1993年以前は信頼しうるデータがないと言えるが、1991〜1992年にやはり大幅に減少したであろうことは、 個別品目のデータなどから推測できる(Tabata, 1994, pp. 449-452)。1994年以降のCIS諸国との貿易動向については、第1表のデータから次の3点が分かる。

(1)CIS諸国からの輸入は、1994年以降、外国からの輸入以上に大きく伸びるようになった*12

(2)CIS諸国への輸出は、1994〜1995年に外国への輸出が急増するなかで、伸び悩んだ。

(3)1996年になると、対CIS貿易は、輸出入ともに大きく増加し、伸び率では対外国貿易を大きく上回った。

以下では、1995年以降のCIS諸国からの輸入の増加、1996年以降のCIS諸国への輸出の増加の2点について、その原因を探ることにする。

第2表は、ロシアとCIS諸国との貿易を国別に示したものであ る*13。この表から、(1)1995年のロシアの輸入の増 加については、ウクライナとカザフスタンだけで92%まで説明できる*14、 (2)(2)1996年1〜9月のロシアの輸入の増加については、ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタン、モルドワの4カ国で100%説明できる、(3) 1996年1〜9月のロシアの輸出の増加については、ウクライナ、ベラルーシ、ウズベキスタンの3カ国で82%まで説明できる、の3点が分かる。

次に、『通関統計集』の国別商品別データを利用して、どのような商品が輸出入の増加に貢献したのかを検討しよう*15

まず、1995〜1996年の輸入については、食肉、酪農品、白砂糖、アルコール飲料などの食料品、無機化学品、鉄鋼・鉄鋼製品の寄与度が大きい。 1995年については、第3表から分かるように、ロシアの輸入増加の 半分は食品、農業原料によってもたらされている。そのなかで寄与率の大きいのは、飲料・アルコール類(商品分類22類)=4.6%、砂糖・砂糖菓子(17 類)=4.3%であり、その他の品目では、鉄鋼および鉄鋼製品(72および73類)=6.5%、無機化学品等(28類)=2.9%の寄与が大きい。そし て、これらの品目については、それぞれウクライナからの輸入増加が大きく貢献していることも同表から分かる。

1996年1〜9月については、穀物(10類)、鉄鋼(72類)、鉄鋼製品(7304〜7305項)、原油(2709項)などの寄与度がそれぞれ 2%を超えているが、増加が特定の品目に集中していないことが特徴となっている。この特徴は、ウクライナからの輸入増加(寄与度11.9%)についても同 様で、多くの商品によって輸入増大がもたらされている。他方、カザフスタンからの輸入増加(寄与度5.1%)は、化学品(2818項:人造コランダム・酸 化アルミニウム・水酸化アルミニウム)、原油(2709項)、穀物(10類)の3項目(寄与度はそれぞれ、2.6%、2.2%、1.8%)でほぼ説明でき る*16。ベラルーシについては、商品別データが全く得られ ない。

CIS諸国からの輸入増加については、価格が外国からの輸入品と比べて安価であるという要因があると考えがちである。しかし、1995〜1996年 について、CIS諸国と外国からの輸入品価格を比較したデータをみると、アルコール飲料を除く食料品に関しては、必ずしもCIS諸国からの輸入品が安くは なっていない*17。1996年については、食肉、酪農品、 白砂糖などに関して、軒並みCIS諸国からの輸入品価格が外国からの輸入品価格を上回っている。

輸入価格が同水準であったとしても、税制面での取り扱いの違いは考慮すべき点である。1993〜1996年においては、CIS諸国からの輸入につい て、輸入関税が適用されておらず*18、また、基本的に付加 価値税も適用されていない。これらは、1992年3月13日付で旧ソ連諸国の多くが調印した「関税政策の原則に関する協定」に基づくもので、これによっ て、輸入関税とそれと同等の税の非課税が決められたのである。付加価値税に関しては、CIS各国は外国への輸出については非課税、CIS諸国への輸出につ いては課税という扱いをしているため、逆に輸入に関しては外国について課税、CIS諸国について非課税となっている。要するに、CIS諸国との取引につい て国内取引と同様の扱いとなっているのである*19。以上の ような税制上の優遇措置、とくに輸入関税の非課税がCIS諸国からの輸入にとって有利に作用したことは間違いないが、1992〜1993年から導入されて いる措置であり、1995〜1996年の輸入急増の直接的な要因と考えることはできないように思われる。

次に、1996年1〜9月のロシアの輸出を検討する。この時期の輸出増加(増加率は15.2%)の3分の2はウクライナへの天然ガス輸出増大で説明 できる。すなわち、それだけでCIS諸国への輸出が対前年比9.1%増加したのである。第5表に示したように、天然ガスの輸出額(うち94%はウクライナ)は5割増加したが、数量は3%の減少となってお り、単価が5割以上の上昇となった。すなわち、対CIS輸出増加の半分は、天然ガス輸出価格の上昇によってもたらされたのである*20。同表から、1994〜1995年には外国と比べて2割程度安 かった対CIS輸出単価が、1996年からは外国を上回るようになったことが分かる*21。 このことは、ウクライナとの間での何らかの政策的な措置により、1996年初めから天然ガス輸出価格の引き上げが行われたことを示唆している。1996年 におけるロシアの対CIS輸出急増は、この政策的措置によるところが非常に大きいと言える*22

以上の検討から導き出される暫定的な結論は、(1)CIS諸国からの輸入については、食料品、化学品、鉄鋼品をはじめとする多くの品目で輸入増加が 生じており、しかも、少なくとも2年近くにわたってこれらの品目の輸入増加が継続している、(2)CIS諸国への輸出については、天然ガスの価格上昇とい う要因が大きく、輸出増加が継続的な傾向となるのか、現段階では判断できない、の2点である。

それでは、この(1)に述べたような輸入増加という趨勢は、旧来の企業間取引の復活を意味するものであろうか。筆者は、次の2つの理由により、この ような見方に対してはより慎重であるべきだと考える。

第1に、対CIS貿易の活性化の傾向が見えたとは言え、ソ連崩壊前のその大きさと比べると、まだ非常に大きな隔たりがある。既述のように、ソ連崩壊 前と後を比較し得るような貿易データは存在しないが、外国貿易の大きさと比べることは可能である。 第1表第6表から、CIS諸国の比重は、1994〜1996年においてはロシアの輸出で20%、輸入で30%程度である が、1987〜1990年においてはロシアの輸出で60〜65%、輸入で55〜57%であったことが分かる*23

第2に、ロシアとCIS諸国の貿易の現在の商品構成(第7表)を みると、ソ連崩壊前と比べて非常に大きな変化があることが分かる *24。まず、ロシアの輸入について1989〜1990年と 1994〜1995年を比較すると、(1)食料品の比重が10%から20〜30%に上昇した、(2)機械の比重が40%から18〜30%に低下した、の2 点がもっとも大きな変化である。輸出については、(1)電力・燃料の比重が30%から45〜50%に上昇した、(2)機械の比重が33%から17〜20% に低下した、の2点が大きな変化である。これらの変化は、脚注で述べたように、部分的には価格の変化を反映しているが、かなりの部分は実態の変化を反映し ていると思われる。とくに、機械の比重が輸出入ともに大きく低下したことは注目に値する。1996年1〜9月についても、機械(商品分類84〜90類)は 輸出入の増加にほとんど寄与していないのである*25。ソ連 においては、機械工業こそが共和国にまたがる企業間取引の核をなしていたのであり、その部分が極めて低水準になっている現状では、企業間取引の復活を言う ことはできないように思われる。

なお、以上の2点については、金額統計では価格の大きな変化の影響を受けるため、数量統計で裏付ける必要がある。石油・天然ガスの輸出に関する第5表のようなデータを集めなければならないが、貿易統計と通関統計とで は商品の定義が一致していないため、1993年以前と1994年以降のデータをうまく接続できないという大問題がある。

結びにかえて

本稿の分析は大半が貿易データに基づくものであるが、ロシアとCIS諸国との取引関係を考察するというような目的にとって、このような限定された方法によ る分析では不十分であることは言うまでもない。本稿は、貿易に関する統計を利用するだけでどこまで分かるのか、あるいは、どこまでしか分からないのかを明 らかにする結果になったのではないかと思われる。

マクロ的な観点から必須であるのは、モノの流れに対応するマネーの流れの分析である。ロシアとCIS諸国との取引においては未払問題が大きな問題と なっており、これが取引関係の動向にかなり大きな影響を及ぼしている(たとえば、Yakovleva, 1996, p. 1参照)。ロシアのCIS諸国への輸出が、輸入と比べて伸びない大きな原因も、CIS諸国の側からの未払問題があると考えられる。しかし、ロシアの統計に おいてこのようなマネーの流れをカバーする国際収支表はようやく作成・公表され始めた段階であり、それを用いて分析を行うのは未だ極めて困難な状況である (Uegaki, 1996参照)。このようなマネーの流れに関する分析は今後の課題の1つとしたい。



−注−

  1. この注によれば、旧ソ連・コメコン諸国に対する企業建設に関わる債務履行のための天然ガスの供 給は、旧コメコンの枠内で締結された協定のなかで設定された契約価格によって評価されている(Tamozhennaya, 1996a, p. 3)。
  2. この月別統計集の貿易データは、「通関統計データに基づき、非組織化貿易の追加補正とパイプライン 輸送輸出の修正を考慮したものである」と記されている(Ekonomika, 1996, p. 68)。そして、石油の輸出については「トランスネフチ」社、ガスの輸出については燃料・エネルギー省のデータが使われていることも明記されている (op. cit., p. 70)。
  3. ベラルーシとの間における通関の廃止は、ロシアとベラルーシとの関税同盟に関する1995年1月6 日付協定に基づくもので、同年5月25日付大統領令第525号により政府に対して廃止が指示され(Rossiyskaya gazeta, May 27, 1995, p. 3)、6月23日付政府決定第583号により7月15日までに最終的に廃止された(Sobraniye zakonodatel'stva Rossiyskoy Federatsii, No. 26, 1995, pp. 4754-4756)。
  4. 1995年のロシアの貿易全体の商品別データや対CIS貿易の商品別データについても、ベラルーシ のデータは総額には含められているが、商品別には分類されていない(Tamozhennaya, 1996a, pp. 9, 17)。この1995年の年報では、代わりに、ロシア統計国家委員会の対ベラルーシ主要商品別データが付録として付けられているが(op. cit., pp. 546-549)、1995年第3四半期以降の四半期報では、このような付録もない。
  5. 実際には、この値に国際収支表やGDPの計算を参考に修正が加えられると記されている。
  6. この文献によれば、国によっては2000ドルを超えていることも考慮され、上方に修正されるケース もあるという。1995年の旅行者数の統計(Rossiya, 1996a, pp. 446-452)をもとに検算すると、データの得られないベトナムを除く4カ国に関わる旅行者数は282万6000人で、2000ドルをかけて57億ドル となる。なお、この2000ドルという限度額は、1996年7月18日付政府決定第808号により、同年8月1日以降1000ドルに引き下げられ、 1000ドルを超える場合は30%の関税(最低でも1kg当たり4ECU)を支払うこととなった(Rossiyskaya gazeta, August 7, 1996, p. 5)。
  7. バーター取引が通関統計で捕捉されていることについては、たとえば、Belov(1996a, p. 2)参照。
  8. CIS統計委員会が加盟国統計国家委員会のデータに基づいて発行したものとして、 Vneshneekonomicheskaya(1994, 1995)などがある。
  9. ロシア統計国家委員会の月別貿易データは、Interfax Statistical Report、Interfax Foreign Trade Reportにも掲載されている。
  10. Tamozhennaya(1995, p. 3, 1996a, p. 3)には、1994年と1995年のロシア人担ぎ屋による輸入がそれぞれ35億ドル、42億ドルに達したとの推計値が記されているが、第1表のデータと比べて、これらの推計値はあまりにも小さすぎるように思 われる。
  11. 1993年の輸入については、非組織化輸入を含むか含まないかによって、かなり減少率が異なる。
  12. 1993年にも対CIS貿易は輸出入ともに著しく増加しているが、既述のように、1993年以前 の対CIS貿易データは信頼性が乏しく、かつ詳細なデータを現時点で入手していないので、本稿では1993年については検討の対象としない。
  13. ベラルーシ、モルドワ、ウクライナ、カザフスタン、ウズベキスタンの5カ国でロシアのCIS諸国 との貿易総額の95%までを占めており、残る6カ国の影響力は無視しうる大きさであることが同表から分かる。このうちモルドワは、国の経済規模としては、 グルジア、アゼルバイジャンを下回るが(PlanEcon Report, 1992, Nos. 11-13)、ロシアとの貿易はこれら2カ国を大幅に上回っている。
  14. 本稿において、「寄与度」とは、当該項目の増加が輸出または輸入総額の何%の増加をもたらしたか を示す。たとえば、5%の寄与度とは、当該項目の増加だけで、輸出または輸入総額の5%の増加が生じたことを意味する。1995年のロシアの輸入は 31.1%の増加、ウクライナの寄与度は21.4%、カザフスタンの寄与度は7.1%であるから、(21.4+7.1)÷31.1×100=92%とな り、ウクライナとカザフスタンだけで92%まで説明したことになる。
  15. 1995年下半期以降、『通関統計集』ではベラルーシに関する情報が得られないので、各商品の寄 与度を求める際にはベラルーシを除いて計算した。すなわち、1995年の輸入について分析する際には、1994年の商品別データからベラルーシの商品別 データを控除し、それと1995年の商品別データ(ベラルーシが除かれて公表されている)から寄与度を計算した。1996年1〜9月の輸出入についても同 様に、1995年1〜9月の商品別データからベラルーシを控除して寄与度を計算した。
  16. カザフスタンからの原油の輸入については、1995年にはそれにほぼ匹敵する額(数量では2分の 1)のロシアからの輸出があった。しかし、1996年1〜9月においては、ロシアの輸出は金額、数量ともに輸入の半分となっている。
  17. このデータは通関統計に基づくデータであり、Statisticheskiy byulleten'(No. 10, 1996, pp. 81-82, No. 16, 1996, p. 104)に掲載されている1995年と1996年第1四半期のデータは、『通関統計集』の金額データを数量データで除したものとほぼ同一である。1996 年1〜9月については、Interfax Foreign Trade Report(No. 46 and its correction, 1996)の1996年1〜9月貿易データから求められる。
  18. 輸入関税は、1992年1月15日付政府決定第32号により同日以降すべて廃止されたが、同年6 月14日付大統領令第630号により同年7月1日以降あらためて導入された(Rossiyskaya gazeta, January 22, 1992, p. 2, June 19, 1992, p. 5)。CIS諸国については、1992年12月14日付政府決定第973号に、CIS諸国(グルジアを除く)からの輸入に輸入関税を適用しないことが定め られている(Rossiyskaya gazeta, December 25, 1992, p. 5, Oreshkin, 1993, p. 17)。
  19. 輸入品についての付加価値税は、1992年12月22日付連邦法4178号により1993年2月 1日から適用されることとなった(Zakon, No. 3, 1996, pp. 50-57)。しかし、同年4月30日付最高会議決定4912号により、CIS諸国からの輸入について付加価値税を適用しないことが定められた (Ibid.)。1996年になってからの動きとして、ウクライナがCIS諸国への輸出品に対する付加価値税を免除するようになったため、ロシアは、同年 8月18日付大統領令第1216号により、ウクライナからの輸入品に対して付加価値税を課すこととした(Rossiyskaya gazeta, September 3, 1996, p. 6, Shto, 1996, p. 26, Tsibizova, 1996, p. 42)。なお、物品税については、付加価値税とは異なり、CIS諸国からの輸入についても適用されているとの記述が多くある(Ekonomika i zhizn', No. 13, 1993, p. 5, Nikonov, 1996, p. 40)。しかし、1996年1月18日付大統領令第64号により、ウクライナからの輸入品に対して付加価値税と同様の理由で物品税を適用すると定められて いる。
  20. この点は、Belov(1996c, p. 2)でも指摘されている。
  21. 同表に示したように、石油の対CIS輸出単価は、次第に引き上げられているものの、外国に比べて まだ低い。石油は、対CIS輸出数量の落ち込み方がもっと大きく、1995年の水準は1990年の2割の水準である。天然ガスの対CIS輸出数量は、 1995年は1992年の7割の水準となっている。
  22. この政策的措置の背景としては、ウクライナによるガス輸入代金の支払が滞っていることなどからロ シア側の立場が非常に強いことが指摘できる。
  23. 第6表の原 データの出所は、CIS統計委員会と記されており、Narkhoz SSSRやNarkhoz RSFSRにも一部のデータが公表されていた。既述のように、この時期の共和国別貿易データは仮設的なものであり、このデータは共和国別に作成された産業 連関表に基づいている。この文献では、共和国間貿易と外国貿易が国内価格と貿易価格の2つの価格で表示されているが、国内価格は世界市場価格と大きく乖離 していたので、1994〜1995年のデータと比較する場合には、世界市場価格の近似値として貿易価格建てデータの方を用いるのが適切である。しかし、コ メコン諸国や一部の発展途上国との貿易価格は政策的に大幅に引き下げられたものであったから、この貿易価格建てデータは決して世界市場価格建てデータとい うわけではない。さらに、共和国間貿易データにはバルト三国が含まれていたという違いもある。
  24. 第7表の データも、前注で述べたデータと同じく、産業連関表に基づくデータで、国内価格と貿易価格の2つの価格で表示されており、1994〜1995年のデータと の比較には貿易価格建てデータの方が適切である。さらに、このデータは産業連関表のデータであるため、産業分類が貿易統計の商品分類ときちんと対応してい ないという問題がある。したがって、この意味でも、1994〜1995年データとの比較は、大まかなものとならざるを得ない。さらに、1990年データは バルト三国を含むソ連構成共和国との貿易のデータ、1994〜1995年データのうち1995年データはベラルーシを含まないといった違いもある。
  25. 第3表第4表で1996年1〜9月の機械・設備の比重を1994〜1995年と 比較せよ。

参考文献

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