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2019年12月2日

中国社会科学院辺疆研究所で学術報告会議開催(11月26日)

 

 2019年11月26日、北京にある辺疆研究所で特別セミナーが開催されました。午前中はスラブ・ユーラシア研究センターにもなじみの深いビクトル・ラーリン氏(ロシア科学アカデミー会員)による「アジア太平洋のロシアにおける『中国』の存在:神話と現実」、午後は岩下による「今日のボーダースタディーズ」の報告がなされました。

 

 ラーリン氏は1990年代にロシア極東における中国人移民の現実と地域のパーセプションを題材に、モスクワの「中国脅威」言説を壊した仕事で有名ですが、今回の報告はその発展版ともいえ、いまだに根強く残るモスクワの対中国言説を地元の見方で正すと言う姿勢が一貫していました。 これは境界地域の現場から中央の見方に挑戦しようとするボーダースタディーズの姿勢と強く共鳴するものです。

 

 岩下は、冷戦期のハンガリー国境の「要塞」と「共存」の変遷をボーダースタディーズのタイムラインの理論で解析するとともに、メキシコ・グアテマラ国境とメキシコ・米国国境を比較し、これをボーダーの透過性で考えることの重要性をアピールしました。 北米や中欧など中国の学者にあまりなじみのない地域のケーススタディーと欧米の諸理論を手がかりにしたオリジナルな理論展開はかなり彼らの刺激になったようです。

 

 また同研究所が、グローバルCOE時代の教育研究上のパートナーであったこともあり、それぞれに成長したZhang Yongpan、Sun Hongnian、Chu Dongmeiといったサマースクール第1期の参加者との再会も果たせました。 とくにSun Hongnianはすでに副所長に昇任しており、日中の境界研究をめぐる交流の成果が目に見えるようになってきました。     

(岩下明裕)