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2016.03.02

UBRJセミナー「北海道・ロシア(サハリン州)の地方間交流の比較分析:根室と稚内」開催される(2/23)

UBRJセミナー「北海道・ロシア(サハリン州)の地方間交流の比較分析:根室と稚内」開催される(2/23)


 2016年2月23日、中京大学教授で境界地域研究ネットワークJAPAN(JIBSN)副代表代行の古川浩司氏をお招きしてUBRJセミナーが開催されました。古川氏は北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターの客員教授も兼任されており、センターの客員研究員セミナーも兼ねる形式で行われました。セミナータイトルは「北海道・ロシア(サハリン州)の地方間交流の比較分析:根室と稚内」。北方四島とのビザなし交流を1992年から、元島民及びその家族を対象とした自由訪問を1999年から続けている(それ以外にも墓参のための訪問もある)根室、サハリン島コルサコフとの定期航路を軸に経済交流を続けてきた稚内について、その交流の実態を踏まえた上で、理論的に総括することを主眼とした報告でした。国際政治学者カール・ドイッチュによる「交流主義(transactionism)」という概念と、境界研究者のエマニュエル・ブルネト=ジェイリーによる「境界地域研究理論」をまず提示し、根室と北方四島、稚内とサハリンの文化・経済交流の実態をこれら二つの理論に当てはめるという試みを行いました。根室=北方四島については、日本政府によるガバナンスが境界地域にまで完徹していることにより、ドイッチュが述べるところの市民レベルでの「モノ・カネ・ヒトの頻繁な往来」が進まず、ビザなし交流で相互理解は深まりつつあったけれども、結局は領土問題のせいでそれ以上のものにはならなかったということが指摘されました。稚内=サハリン島については、「ヒト・カネ・モノの交流」により、合弁企業の設立など相互理解と信頼醸成は深まったけれども、ここでも領土問題にみられる政府レベルでのガバナンスの論理が優越して交流が停滞してしまっている現状が示されました。つまり、ドイッチュのいうところの「安全保障共同体」は未だ形成されるに至っていないということです。これに対し、古川氏からは、地方間の国際経済交流を官だけではなく、官民連携で行う必要性について提言がなされました。

 平日夕方の時間帯にもかかわらずセミナーには22名もの参加があり、質疑応答も非常に盛り上がりました。フロアからは、国際私法の論理で動いてしまっている地方自治体間の交流をある種制度化する、つまり国際公法化する必要があるのではないか、むしろ中間の環でのガバナンスが不足しているのではないかとの指摘や、ドイッチュの議論は国家の中心からの視点でありブルネト=ジェイリーのものは境界の現場に即した議論であって向いている方向が違うのではないかという越境交流の理論的側面に関する質問も飛び交いました。また、学部1年生の参加者からポスト・プーチン時代の越境交流の変化についての予測やロシア側の交流についての見方などという、非常に重要な点を衝く質問も投げかけられたのが印象的でした。今後とも北海道・サハリン間の越境交流の実態を日本側・ロシア側の双方の立場からウォッチし続け、さらに理論的にブラッシュアップすることが期待されます。興味深いご報告をいただいた古川氏ならびにお越しいただいた参加者の皆様に感謝申し上げます。

(文責:地田 徹朗)
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