Eurasia Unit for Border Research (Japan)

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What's New Archives

2017.07.24

ボーダースタディーズ・サマースクール終了

 グローバルCOEプログラム「境界研究の拠点形成」以来の蓄積を誇るUBRJのサマースクールが2017年度も北大サマーインスティチュートの枠組みで開催されました(2017年7月18・19日、於スラブ・ユーラシア研究センター大会議室)。本スクールは公共政策院大学院とスラブ・ユーラシア研究センターのコラボで実施されており、UBRJのメンバーが中心となって学生の募集や講義などを運営しています。今年は北東アジア地域研究プロジェクト(NIHUの北大スラブ研拠点)との共催でもあり、北東アジア地域とボーダーに焦点をあてる講義も多く組み込まれました。

 池直美、デイヴィッド・ウルフ、岩下明裕(以上、UBRJ)、堀江典生(富山大・NIHUスラブ研拠点)、エドワード・ボイル(九州大CAFS)、ヤロスラフ・ヤンチェク(スラブ研客員教授)らに加え、ABS(Association for Borderlands Studies)会長を始めとし、メキシコシティ、ミュンヘンから来日した国際色豊かな教授陣が講義しました。世界各国から延べ(公共とスラブ研の双方)で30名を越える学生や若手研究者の参加もあり、熱心な議論が続きました。サマースクールにかかわってくださった皆さま全員に心よりお礼申し上げます。 

(岩下明裕)

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2017.07.10

ボーダーツーリズム推進協議会の設立総会が羽田空港で開催

かねてより本ユニットが推進してきたボーダーツーリズム(国境観光)ですが、観光業界が中心になって推進協議会が設立されました。

会長はANA総研の伊豆芳人氏、副会長は稚内・サハリンのボーダーツーリズムを仕掛けてこられた北都観光の米田正博専務、対馬・釜山、八重山・台湾などのツアーを造成されてきた九州経済調査協会の島田龍氏です。
理事としてはこれまでこの新しいツーリズムを盛り上げてきた方々が多数、加わっています。
総会には50名近い参加者があり、関連セミナーも盛況でした。

会議の後は、らしく東京湾クルーズ。
川崎工場群の夜景や飛行機の離着陸を海上から堪能しました。

羽田でレクチャーをやり、ここから海外の国境越えを楽しむツアーの造成も期待されます。
なおビジネスが中心となる協議会ですが、産学連携の観点から、本ユニットも推進協議会の正会員として先陣を切って入会する予定です。 

(岩下明裕)
ボーダーツーリズム推進協議会 https://www.border-tourism.com/ 

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2017.07.07

【エッセイ】阿寒湖畔に遊ぶ(視察報告2017年6月末)

早朝の阿寒湖水上。風を切りながら遊覧船は進む。右手に雄阿寒岳、左手に雌阿寒岳、その両方を同時に見られるのは阿寒湖を走る遊覧船からだけなのだと添乗の語り部が言った。この日はあいにくの曇り空で雌阿寒岳は雲に隠れていたが、雄阿寒岳は太陽を背負いながらその雄大な姿を見せた。行先は、阿寒湖にぽっかり浮かぶチュウルイ島。阿寒湖でまとまった数のマリモを見られるのは、この島にあるマリモ展示観察センターだけなのだ。

展示観察センターはけして大きな施設ではないが、いくつもの水槽が並んでいてマリモの成長過程を実物で見られるようになっている。岩に生えた苔のような状態から、まんまるい形へ、そして最後は内側から崩れていた。直径約30センチを超えると崩れ、ふたたび丸くなる過程に突入するそうだ。完璧な丸が一部崩れている様子は、予期していなかっただけにちょっとした衝撃だった。

もう半世紀以上前のことになるが、日本のバレエ学校に招聘されたソヴィエトのバレエ教師たちが、マリモにまつわる創作伝説を題材にしてバレエを創った。愛し合う2人のアイヌの悲恋物語だ。教師たちは阿寒湖畔と旭川を訪れて、古式舞踊を8ミリカメラに収めるなどして取材し、出来上がった作品には民俗舞踊がふんだんに利用されていた。

彼らが阿寒湖を訪れたのは1961年。ちょうど、水質汚染が原因で減少していたマリモ保護のため、チュウルイ湾への遊覧船乗り入れ自粛に伴い、島にマリモ観察施設ができた年だった。それまでは遊覧船に乗ったまま、湖の水中のマリモを観察できるようになっていたそうだ。ソヴィエトの教師たちがマリモを見たのが水中なのか、水槽だったのか、それはわからない。

ただ、水槽の中の動かないマリモを見ながら、私は思い出したことがあった。ソヴィエト教師たちの作ったバレエ『まりも』でヒロインのセトナを演じた鈴木光代さんに数年前にお話を伺ったときのことだ。鈴木さんが主宰するバレエ教室で、石井歓作曲の『まりも』の音源をかけさせていただいた。すると、鈴木さんは私の目の前で踊り始めたのだ。

ゆらゆらと美しく揺れる鈴木さんの腕は、水中のマリモはきっとこんなふうにゆらめくに違いないと思わせる説得力があった。音楽に心を寄り添わせて無心に踊る鈴木さんの姿の後ろに、阿寒湖の景色が広がっているかのような錯覚を覚えた。ソヴィエトの教師たちは波に揺れるマリモたちを見たのだろう、と今ではそう思われる。

斎藤慶子

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2017.07.04

「内なる境界(ボーダー)/外なる境界(ボーダー)」開催報告記

去る6月24日(土)、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター大会議室において、境界研究ニット(UBRJ)と科研費「ポスト冷戦期におけるユーラシアの資源問題と境界領域をめぐる新しい国際関係」との共催で、シンポジウム「内なる境界(ボーダー)/外なる境界(ボーダー)」が開催された。まず上原良子(フェリス女学院大学)より、本シンポジウムの趣旨説明があり、ボーダースタディーズを接点とした研究の相互交流を深めていきたいとの挨拶があった。

第一報告は、日臺健雄(和光大学経済経営学部)による「経済制裁によるボーダーの変化―ロシアの対外経済関係を中心に」と題する報告であった。本報告では,クリミア編入後のロシアに課された経済制裁によって生じたロシアの対外経済関係の変化を題材にとり,ボーダーの変化を経済面から考察した。ロシアは経済制裁に対抗して欧米からの農産物輸入を禁止し輸入代替化を図っているが、そこでは「経済的主権」の確立が意図されている。また、制裁を奇貨として農業だけでなく製造業の振興策が打ち出され、98年金融危機後のルーブル暴落に伴う輸入代替化の過程とは異なり,国家主導の積極的な産業政策が展開されている。上記の過程では,WTO加盟後にみられた経済面での「国境(ボーダー)の敷居の低下」に逆行する動きがみられるとした。

第二報告は、天野尚樹(山形大学人文社会科学部)による「ボーダーアイランドの比較史―樺太と沖縄、あるいは、ボーダーの不安をめぐって」であった。本報告は、帝国日本のボーダーに定位された島である樺太と沖縄は、法制上は本土並みの地位を得ていたが、ともに地上戦の舞台となり、敗戦の過程で本土から切り捨てられた。その理由として、第一に、江戸から明治初年の段階ですでに外圧を避けるために切り捨てられた経験があること、第二に、帝国日本の北進/南進への飛び石とされたこと、第三に、帝国広域経済において他の外地資源との比較劣位から経済的にも切り捨てられたこと、という両島共通の要因を指摘した。

最後に、上原良子(フェリス女学院大学)より「国民国家の辺境からEUのゲートウェイへ―リールとマルセイユ」と題する報告が行われた。この報告では、フランスの国境地帯に位置するリールとマルセイユの改革の比較考察が行われた。リールは脱工業化による苦境を脱するために、ロンドンおよびブリュッセルへとつながる高速鉄道の敷設と都市開発を進めた。脱植民地化と失業問題に悩むマルセイユは、「EU」と「地中海」をキーワードに、港湾の近代化と都市開発を連動させ、アジア・アフリカとの物流拠点を目指した。これらの改革により、二都市はフランスの辺境からヨーロッパの交通の要衝、ゲートウェイへと脱皮したと論じた。

報告に引き続いて、コメンテーターである川久保文紀(中央学院大学)より、各報告に対して問題提起がなされた。まず、シンポジウムのメインテーマである「境界」を捉える視角や方法について各報告者はどのように考えるのかという総論的なコメントの後に、異なる専門やフィールドからの報告ではあるが、各報告に共通する境界事象の抽出を行えば、日臺報告からは「国境の透過性」、天野報告からは「境界・国境の可変性と空間認識」、そして上原報告からは「境界領域と境界都市」という基本的枠組みが浮かび上がるのではないかと述べた。その上で、日臺報告に対しては、境界の変容をもたらす制裁の実施が国家主権にどのような影響を与えるのか、制裁を行う主体と制裁の形態などについての説明が冒頭にあった方がより分かりやすいのではないかというコメントがなされた。天野報告に対しては、境界研究におけるボーダーアイランドの意味、沖縄研究に比較した北海道移民史の研究の現況、本土の歴史と樺太や沖縄という周辺部の歴史をどのように接続すればよいのかなどについて質問がなされ、上原報告に対しては、境界戦略、境界領域、境界都市などに関する概念的交錯をどのように克服するのか、この報告では取り上げていないEUにおける「国境地域間協力」が、地域における新しい空間形成を論じるときに何らかの示唆を与えるのではないかという問題提起がなされた。

雨の降る土曜日にもかかわらず、多くの市民の方も含め、40名近い参加者があり、盛会裏に終了した。これは、ロシア、樺太、沖縄、そしてフランスと、地域の話題満載の魅力的な企画であったからであると思うが、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターの長年にわたる社会に開かれた研究力の確固たる蓄積を垣間見たシンポジウムでもあった。

(川久保文紀)

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2017.06.13

ボリショイ劇場バレエ団来日公演によせて

2017年4月27日、安倍首相との会談後の記者会見において、来年を日本とロシアのПерекрестные Года[交差する年]とすることに合意したとプーチン大統領は発表した。 つまり、2018年は「日本におけるロシア年」、「ロシアにおける日本年」として、政治、経済、文化を含むあらゆる領域における交流の促進が図られるということなのである。

 両国関係に変化が訪れることが期待されるその2018年に先駆けて、2017年6月4日から「Russian Seasons Japan 2017」が日本において幕開けした。Russian Seasonsとは、これからロシアが世界に向けて展開していくロシア文化喧伝の一連の企画のことを指す。筆頭に選ばれた日本では、全国の40か所以上、200を超えるイベントが予定されている。

 幕開けを飾ったのはボリショイ劇場バレエ団の公演だった。初日の公演『ジゼル』には安倍首相も訪れ、後日プリマ・バレリーナのスヴェトラーナ・ザハロワが首相官邸を表敬訪問した。

今年はボリショイ劇場バレエ団初来日60周年記念の年にもあたっており、日本とロシアの長年にわたる文化交流の実績を記念する意味でたいへん華々しいスタートを切ることができたといえるだろう。

ところで報告者は、6月7日に上野の東京文化会館で『白鳥の湖』(チャイコフスキー作曲、グリゴローヴィチ改訂振付版)を観劇する機会に恵まれた。ワガノワ・バレエ・アカデミーの学生時代から注目していたオリガ・スミルノワ、ノーブルな佇まいが魅力のセミョン・チュージンが主役を務めた舞台は、ロシア・バレエを愛し続けている報告者にとって、とてもひとことで感想を言い表すことはできない。ボリショイというブランドに改めて感服した次第である。

Russian Seasonsといえば、かつて20世紀初頭に世界を席巻したセルゲイ・ディアギレフが率いたバレエ団「セゾン・リュス(ロシア・シーズン)」が念頭におかれているものと思われる。しかし個人がオーガナイズしていたセゾン・リュスよりも、国家プロジェクトの様相を呈する今回の文化交流企画はむしろ1950~60年代の状況に似ている。日露の政治的な関係はつねに平穏だったとは言い難い時期にあったが、次々にやってきたソヴィエト・ロシアからの文化団体を日本の観客は喜んで迎え入れたのだ。

「芸術家は政治家や外交官ができないことも成し遂げられる」というのは、去年マリインスキー劇場で行われた日露バレエ交流を記念した展覧会での同劇場総裁ヴァレリー・ゲルギエフによる挨拶の言葉である。芸術が持つ力をよく知る人物の発言は重いものがある。

1950~60年代の文化交流においては、次々に文化団体を派遣してくるソヴィエトに対して、日本は単純に数の上で遅れをとっていた。しかし来年こそは、日本もさらに積極的に文化を発信していくことを期待してやまない。それが結果的に世界における日本の存在感を高める絶好の機会となりえるのではないだろうか。



斎藤慶子

2017.06.03

第59回 北大祭 研究所・センター合同一般公開

サイエンストーク市民講座
ボーダーツーリズムの魅力を写真で語る:稚内・サハリンからのメッセージ

岩下明裕 & 斉藤マサヨシ

2017年6月3日、スラブ・ユーラシア研究センターにおいて、岩下明裕教授と写真家の斉藤マサヨシ氏による「ボーダーツーリズムの魅力を写真で語る:稚内・サハリンからのメッセージ」が開催されました。岩下教授の質問に応じる形で、斉藤氏が10年以上にわたってサハリン全島をめぐり撮影した写真について語りました。日本が統治していた時代のサハリン(樺太)の歴史を説明しながら、現地に今も残されている日本人の足跡の写真を紹介しました。廃墟となった王子製紙の工場や、鳥居のみが立っている神社跡地などの写真は、「サハリン」というボーダーツーリズムの現場の魅力を伝えました。斉藤氏の説明のなかで印象的だったのは、ご本人の写真家としての信条を表すもので、ただ写真をとって帰るだけではなく、現地の人々と交流をすることにより、さらに意味がある写真を撮ることができるのだというお話でした。そのお話を聞いてから改めて工場跡地の写真を見ると、廃墟の中で子供がいかにも楽しそうに遊んでいる活き活きとした様子に気づくことができました。

今年中に、北海道大学出版から斉藤マサヨシ氏による写真集『サハリンに残る日本』

が発売される予定です。斉藤氏が写しとったサハリン(樺太)の写真の数々は、ボーダーツーリズムとサハリンのさらなる魅力を皆さんにお届けするものとなることでしょう。


2017.06.01

キックオフ・シンポジウム「グローバル世界と日本の現在と未来を考える」参加記

千葉大学が2017年4月に設立したグローバル関係融合研究センターによるキックオフ・シンポジウム「グローバル世界と日本の現在と未来を考える」が2017年6月1日、千葉大学で開催されました。基調講演に続くパネルディスカッション「グローバルな危機にどう対処するか:欧米、アジア、中東の視点から」では興味深い議論がなされました。

 ヨーロッパに関しては水島治郎氏(同センター教授)が「ポピュリズムの拡大、岐路に立つ先進デモクラシー」、アジアについては石戸光氏(同センター教授)が「トランプ政権とアメリカ・ファーストの影響」、そして中東については酒井啓子氏(同センター長)が「内戦、『イスラーム国』の果てにあるもの」というテーマでそれぞれご報告されました。全体を通底する枠組みとしては、言説や言葉が政治に果たす役割をどのようにみなすかという観点で論議がかみ合い、また要領のいい進行役(同副センター長の大石亜希子教授)の差配もあり、実り豊かな成果が得られました。

 世界の政治現象をどのように鳥瞰するかは、ボーダースタディーズの貢献できる分野でもあり、今後、同センターが主催する事業について、本ユニットも貢献する予定です。

(岩下明裕)

2017.05.29

【掲載】Abe's Diplomacy at a Crossroads: The Hidden Side of the Japanese-Russian Summit

【掲載】Abe's Diplomacy at a Crossroads: The Hidden Side of the Japanese-Russian Summit

岩下明裕教授による、日露首脳会談(2017年4月27日)についての記事がThe Diplomatのウェブ・サイトに掲載されました。

以下のリンクアドレスからご覧いただけます。

http://thediplomat.com/2017/05/abes-diplomacy-at-a-crossroads-the-hidden-side-of-the-japanese-russian-summit/

2017.05.12

Eurasia Border Review 7(1) 刊行

境界研究ユニット(UERJ)が刊行する英文学術誌であるEurasia Border ReviewのVol. 7, No. 1が刊行されました。日本、インド、アメリカで活動する研究者たちによる、論文3本、書評1本が収録されています。論文では、グルジアと南オセチア間の境界化、シリア市民戦争勃発後のトルコの国境警備体制の変化、ベーリング海域における米露関係の発展といったテーマが扱われています。そのほか、今回はボーダー・ジェンダー研究に関する特別コーナーが設けられています。すべての論考がこちらのウェブページからダウンロード可能です。

2017.04.27

UBRJセミナー「越境災害」開催される

UBRJセミナー「越境災害」開催される

 昨年度まで境界研究ユニットで助教として活躍されてこられた地田徹朗さん(名古屋外国語大学准教授)による、セミナー「越境災害:アラル海地域の復興はどうあるべきか」が開催されました。司会は地田さんの後任として4月から赴任したジョナサン・ブルさんが担当し、20人近い参加者がありました。

 地田さんはもともと歴史研究者として研鑽を積んでこられた方ですが、本ユニットでボーダースタディーズの事業とかかわることにより、地理学にも覚醒され、本報告でも中央アジアの境界地域における環境問題の越境的アスペクトを、自ら考案したモデルを使いながら分析するなど、環境地理学、あるいは政治地理学を彷彿させる内容となりました。また報告は巡検での成果やツーリズムの試みなど盛り込むなど、聴衆を飽きさせない展開で構成されていました。質疑応答もフロアから鋭いものが多く、アラル海の越境災害が(チェルノブイリがそうであったように)ソ連解体に与えた影響を問うものなど活発な論議がなされました。地田さんが名古屋の新しい職場においてボーダースタディーズの旗を立て、研究コミュニティの輪を一層広げてくださることが期待されます。

(岩下明裕)

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