生存戦略研究とは

Why Survival
Strategies?

生存戦略研究とは

Overview 概要

われわれが現在まで持続可能な発展の大前提としてきた世界秩序が未曾有の岐路に立っています。その起源は19世紀末に西欧の諸帝国が地表を覆った時代に遡ります。西欧諸帝国は、植民地支配など負の側面を持ちながらも、民主主義、人権、多文化主義、自由貿易、移動の自由、グローバリゼーションなど、リベラルな価値観や公共財を発達させ、世界の秩序維持に努めてきました。しかし今や、その中核を担ってきた(と自負してきた)欧米の住民が、それらの価値や制度はもはや自分たちの割に合わないと主張し、従来の世界秩序の周辺に位置してきた地域が自律化の傾向を強めています。この現象にスラブ・ユーラシア研究者は既視感があります。ロシアでは20世紀のうちにロシア帝国とソ連という二つの帝国が解体しました。よく知られているように、その時にもほかならぬロシア人が、帝国を維持することに不公平感を表明しました。ソ連解体から30年を迎えた現在、アメリカは唯一の超大国から自国第一主義に凋落し、現役大統領が選挙という民主主義の根幹を否定する事態にまで陥りました。多くの研究者はソ連解体で20世紀が終わったと論じてきました。しかし、西欧の諸帝国が世界秩序を維持した「長い20世紀」は、今まさに終わろうとしているのではないでしょうか。

about

スラブ・ユーラシアは20世紀の世界秩序の周辺にあったものの、欧米との相互作用は世界の動態に多大な影響を及ぼしてきました。こんにちもロシアは、2014年のクリミア併合、2015年のシリア介入、2016年のアメリカ大統領選への介入、そして2022年のウクライナ侵攻など、欧米中心の世界秩序を揺るがし、今後の世界秩序・無秩序を左右する存在になっています。また、かつてヨーロッパへの統合を切望していた中東欧諸国は、今やEUの秩序を内側から揺さぶる存在になっています。中央アジア諸国は、盟主でありたいロシア、台頭する中国、影響力を確保したい欧米・日韓の間で巧みに立ち回っています。翻って、これまで欧米に依存し20世紀的な経済発展で成功した日本は、欧米自身が従来の秩序を維持できない今、どのような立場を取るべきでしょうか。

このような認識に立ってセンターでは、国立大学の新しい中期計画が始まる2022年度から5年間、「生存戦略研究」というプロジェクトを立ち上げ、センターの研究活動の再定義を試みます。センターは日本で唯一、ロシアとその周辺というユーラシア大陸の広域秩序の変動を追跡してきた立場から、この空間の多様な人間集団の経験と教訓を参照軸としながら、現代世界の変動を観測し、情報発信していきたいと考えています。日本ではどうしても米中対立が前景化しますが、現代世界の危機が日本人の世界認識の裏側といえる地域でも生じていることを深刻に受け止めなければなりません。そのためにこのプロジェクトでは、ロシアと中東を柱の一つに据えることにしました。われわれの専門は、旧ソ連・東欧ですので、ヨーロッパとの関係は研究内容に織り込み済みです。また、NIHUの北東アジア研究で拠点になったように、ロシアと東アジアとの関係は従来から強みをもっていました。しかし、現代世界における戦争と平和を左右しているともいえる、ロシアと中東を同時に捉えるような視座は、日本では依然欠けています。「生存戦略研究」では、このような全方位の視座からスラブ・ユーラシア研究の意味を問い直し、日本のスラブ・ユーラシア研究のなしうる独自の貢献を模索したいと考えています。これは、われわれの専門領域自体の生き残りにも関わっていますので、関連の研究会や教育プログラムへの皆様の積極的なご参加とご助力に大いに期待するところであります。

Organization chart 組織図

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生存戦略研究ユニット代表

・長縄 宣博 北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター・教授/東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授との併任

〒060-0809
北海道札幌市北区北9条西7丁目
TEL.011-706-2388
FAX.011-706-4952

COPYRIGHT(C) 北海道大学スラブ・ユーラシア
研究センター 国際的な生存戦略研究
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