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修了者の声 麻田雅文(2010年度博士課程修了)

北大辞去

麻田 雅文(日本学術振興会特別研究員/首都大学東京)

 スラブ社会文化論専修に入学したのは、イラク戦争もたけなわの2003年4月であった。札幌でバグダッド陥落のニュースを見たのを、つい先日のように思い出す。それから7年かけて私は博士課程を終え、博士論文の執筆のために無理を言って居させてもらい、ようやく2011年2月に札幌を後にした。世界や日本の状況はその間にすっかり様変わりしたが、スラブ研究センターの院生室には、常に研究を価値あるものと信じる若人がやって来ては去って行った。私もその一人である。

 こうして書きつけてみれば長い年月のようでもあり、思い返してみれば短い年月のようにも感じる。どちらも感じ方の問題であることからしてみれば、また年月を経た時には、また違う感じ方をするのだろうと思う。それでもあえていま、北大時代とは何だったのか振り返ってみれば、ひたすら学問に打ち込んだ時代と言えるだろう。ここに来なければ、中東鉄道というテーマで博士論文を仕上げることはまず不可能だった。指導教官として未熟な私を導いてくださった原暉之教授、デヴィッド・ウルフ教授には感謝するばかりである。また副指導教官として、様々なチャンスを与えて下さった松里公孝先生には、その信頼に応えていたか不安はあるものの、学者としての跳躍台を用意して頂いたことにお礼の言葉もない。その他にも、私の院生生活を様々な形で支えて下さった図書室や事務室の皆様へ心より御礼申し上げたい。北大で頂いた博士号や修士号は学問、そして人生の一里塚に過ぎない。この先、北大で打ち込んだ学問を花開かせるよう、怠らずに研鑽に努めたい。

 ところで、当のスラブ研究センターではグローバルCOEや新学術領域などの大型プロジェクトも終わりに近付いている。国外にアピールする力も大切だが、余裕のなくなりつつある国民の税金で支えられていることを思えば、国内に向けて発信する力と説得力もますます求められるだろう。古巣の「スラ研」は様々な意味で岐路に立っているが、後に続く院生の皆さんにはそうした状況に翻弄されずに、入学当初の初心に立ち、しっかりと学問をしてもらいたい。そのために十分な環境は整えられ、欲する者には様々な便宜が図られるのだから。一方で、そうした贅沢な環境に安住しがちなのも知っている私としては、積極的に院生室の外へ飛び出し、学会や社会で広く活躍して欲しいと願うのが、私の辞去の挨拶である。


2015年4月から岩手大学人文社会科学部特任准教授

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